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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一〇 次の方へ

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報告書⑥ 経過

六通目は、経過の記録である。


――――――――――――――――


申立人は、三月末をもって班長の任期を終えた。

第四班の順により、次の班長は隣家の者である。


申立人は、十二冊目の申し送り帳の最終頁に、次のように書いた。


「抜かないでください。抜いたら、自治会館へ届けてください。」


四月に入ってからの回覧は三回である。

うち二回に、訃報の混入が確認された。


新しい班長は、いずれも当日中に自治会館へ届けている。


二枚とも、旧様式である。

裏の受領欄は、十二戸ぶんすべてが埋まっている。


照会期間の後、二月および三月の回についても確認した。

混入は無い。


当課に届いたのは、取り下げの届ではない。

申立人の欄だけを書き換えた、同じ申立書である。


申立人が替わったため、当課の収受簿には新たな受付番号が付されている。


――――――――――――――――


処理票を出した。

分類の欄に、異常なし。


処理の欄に、事案終了。

判を押した。


記録に無く、遺族も回らなかったと言い、住民は見ていない。

印は合うが、押した者がいない。


出てきたのは、それだけ。

異常なし、と書く以外に、書きようが無い。


閉じられるのは、この番号までである。


同じ紙が、別の番号で、もう受け付けられている。

班長は替わり、中身は一字も変わっていない。


私は、それをまた読むことになる。


表紙に、一行を足した。


「ご覧のうえ、次の方へお回しください」


十九枚の表に刷ってあるのと、同じ一文である。

書き写した。


九名のうち三名がそうしたのと、同じことをした。


ファイルを、受渡しの棚へ置いた。


棚は、記録室の出口の脇にある。

置いて、席に戻れば、もう見えない。


回した先でそれがどうなるのかを、私は知らないままでいる。

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