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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一〇 次の方へ

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報告書③ 十九枚

三通目は、自治会が保管していた十九枚の照会結果である。


――――――――――――――――


十九枚は、いずれも同一の様式である。

当該自治会が十二年前まで用いていた訃報の様式で、現行の様式とは、枠の段数と、喪主を記す欄の表記が異なる。


現行は「喪主」、旧様式は「施主」である。


表面の末尾に、一行が印刷されている。

「ご覧のうえ、次の方へお回しください」。

現行の様式にこの一行は無い。


裏面には、十二戸ぶんの受領欄が刷られている。

訃報は他の配布物と別に、単独で回す扱いだったためである。


十九枚とも、十二戸ぶんの欄がすべて埋まっている。

空欄は一つも無い。


押されているのは判で、日付が併記されている。

日付は、いずれも記載された故人の死亡直後にあたる。


印刷の状態を確認した。

十九枚とも、同じ位置に同じ幅の版のずれがある。


自治会館に据えられていた印刷機と一致する。

当該機は十年前に廃棄され、以後、印刷は外部に委託されている。


記載されている氏名は十九名、重複は無い。

全員が██町の住民として実在し、除票で死亡が確認された。


没年は十一年前から本年にわたる。


自治会の回覧発送記録に、十九名いずれの訃報も記載が無い。


遺族と連絡がついたのは十三名である。

記載された日付、式場、時刻は、いずれも一致した。


十三名の全員が、当時、訃報の回覧は回らなかったと述べている。


――――――――――――――――


様式は十二年前に廃れ、刷った機械は十年前に無くなっている。

十九名のうちには、それより後に亡くなった者がいる。


無い機械で刷られた紙に、その名がある。


回覧発送記録に無い。

遺族も、回らなかったと言う。


裏の欄だけが、回り終えたことになっている。


――四通目は、回した側への聞き取りである。

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