報告書⑥ 経過
六通目は、経過の記録である。
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三〇四号室に、入居が決まった。
申し込みは先月、入居は今月の初めである。
契約者は市内在住の男性一名。
部屋を見に来たのは雨の日で、傘を差していなかった。
入居後、最寄りの観測点では、日降水量十ミリを超える降雨が二度あった。
いずれの翌日にも、音の申し出は無い。
管理人は二〇四号室と三〇三号室の住民に確認し、両名とも聞こえなくなったと述べた。
管理人自身も廊下で二夜を過ごし、音の無いことを確認している。
入居者に対しては、事情を伝えていない。
取り下げの届が、先週、出されている。
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取り下げたのは、申し出た者である。
日付の無い一件だけが、取り下げられていない。
申し出た者の欄が、空だからだ。
音がしなくなった理由は、書ける。
部屋が埋まったからである。
人が住んでいれば、水の音がしても誰も申し出ない。
それだけのことかもしれない。
分類の欄に、対処済。
処理の欄に、事案終了。
誰も対処していないが、状態は変わっている。
様式は、変わったかどうかしか問わない。
判を押してから、二十三枚目を、もう一度見た。
日付の欄も、申し出た者の欄も、空である。
十四年住んで雨の日に出歩かなかった人が、浴室を作らせ、五年で撤去させている。
撤去の理由の欄も、空欄のままだ。
私は、埋めない。
埋める材料が無い。
記録室に窓は無い。
降っているかどうかは、音でしか分からない。
いま、音がしている。
昨日、この市に、雨は降っていない。
降っていたのは、私が三度聞いた録音の中だけである。
三つのうちどれなのかは、聞いていれば分かる。
四分十二秒で終われば、一つ目だ。




