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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇九 きのうの雨

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報告書⑤ 分析官の記録

五通目は、私が行った照会と、その結果の記録である。


――――――――――――――――


前の入居者について照会した。

三〇四号室に居住していたのは、女性一名である。


入居は十八年前、退去は四年前。

十四年、住んでいる。


退去の届け出は本人の筆で、転出先の記載がある。

当該市に照会したが、その住所に転入の記録は無い。


管理人によれば、この人は雨の日に出歩かなかった。

買い物も、降っていれば翌日にしたという。


傘を持っていないわけではない。

降っている間は出ない、と言っていたそうだ。


降っている間は出ない、というのは、降ったあとに出る、ということである。

この人にとって雨は、いつも一日、遅れて来るものだった。


浴室の増設と撤去は、いずれもこの人の申し出による。

費用も本人が負担している。


撤去の理由の欄は、空欄である。


受付簿の写しは、報告書②の照会の際に原本ごと提出されている。

当課で綴じ直すとき、二十三枚目だけ紙の厚みが違うことに気づいた。


写しには、音についての申し出が、二十三件ある。

二十二件は報告書②のとおりである。


残る一件は、日付の欄が空である。

部屋番号の欄には、三〇四とある。


申し出た者の欄も、空である。


――――――――――――――――


申し出とは、聞いた者が出すものだ。


聞いた者の名が無い一件が、三〇四号室から出されている。


管理人は、この一件に覚えが無いと述べた。

管理会社にも、受け付けた者の記録は残っていない。


退去届に転出先を書いた人が、その住所に着いていない。


私は、録音を三件とも聞いた。

仕事だから聞いた。


四分十二秒、五分二十秒、四分五十秒。

三度、雨の音を、最後まで聞いた。


――六通目は、その後の経過である。

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