報告書⑤ 分析官の記録
五通目は、私が行った照会と、その結果の記録である。
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前の入居者について照会した。
三〇四号室に居住していたのは、女性一名である。
入居は十八年前、退去は四年前。
十四年、住んでいる。
退去の届け出は本人の筆で、転出先の記載がある。
当該市に照会したが、その住所に転入の記録は無い。
管理人によれば、この人は雨の日に出歩かなかった。
買い物も、降っていれば翌日にしたという。
傘を持っていないわけではない。
降っている間は出ない、と言っていたそうだ。
降っている間は出ない、というのは、降ったあとに出る、ということである。
この人にとって雨は、いつも一日、遅れて来るものだった。
浴室の増設と撤去は、いずれもこの人の申し出による。
費用も本人が負担している。
撤去の理由の欄は、空欄である。
受付簿の写しは、報告書②の照会の際に原本ごと提出されている。
当課で綴じ直すとき、二十三枚目だけ紙の厚みが違うことに気づいた。
写しには、音についての申し出が、二十三件ある。
二十二件は報告書②のとおりである。
残る一件は、日付の欄が空である。
部屋番号の欄には、三〇四とある。
申し出た者の欄も、空である。
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申し出とは、聞いた者が出すものだ。
聞いた者の名が無い一件が、三〇四号室から出されている。
管理人は、この一件に覚えが無いと述べた。
管理会社にも、受け付けた者の記録は残っていない。
退去届に転出先を書いた人が、その住所に着いていない。
私は、録音を三件とも聞いた。
仕事だから聞いた。
四分十二秒、五分二十秒、四分五十秒。
三度、雨の音を、最後まで聞いた。
――六通目は、その後の経過である。




