報告書④ 録音
四通目は、管理人が携帯電話で記録した音声と、その解析の報告である。
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音声は三件、提供された。
いずれも三〇四号室の玄関前で録音されている。
長さは四分十二秒、五分二十秒、四分五十秒。
解析の結果、いずれにも、シャワーに特有の性質が認められなかった。
シャワーの水音は、細い水流が硬い面に当たる音であり、中高域に定常的な成分が立つ。
給湯器の作動音、配管の共鳴、水栓を開閉する際の急な立ち上がりと立ち下がりも伴う。
提供された音声には、そのいずれも無い。
始まりも終わりも、緩やかである。
三件の周波数分布は、屋外で記録された降雨音と一致する。
粒の大きさに由来する低域、地面や庇に当たる中域の広がり、いずれも降雨のものである。
録音には、廊下側の環境音も記録されている。
車の走行音、風、遠くの生活音。
雨の音だけが、それらと違って、室内の残響を伴っている。
さらに、音圧の時間変化を、██市観測点の十分ごとの降水量と照合した。
三件とも、前日の降り方と一致した。
ただし時刻ではない。
前日に雨が降っていた時間は、いずれも八時間を超えている。
四分十二秒の記録に、その八時間が畳まれている。
時間の軸を縮めて重ねると、強くなった順、弱まった順、一度やんで再び降り出した位置が、すべて同じ比で並ぶ。
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シャワーの音ではない。
雨の音だ。
前の日に降った雨が、次の日に、あの部屋で降っている。
同じ強さで、同じ順に、同じだけ。
水道が動かないのは、当然だ。
水は、使われていない。
浴室が無いことも、関係がない。
降るのに、設備は要らない。
――五通目は、私自身の記録である。




