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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇一 迎えトンネル

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報告書④

 四通目は、いずれの調査員も提出していない。

 深夜二時十四分、記録システムに、作成者不明のまま自動で登録された。


 署名欄には、一つの名だけがある。


――――――――――――――――


 はじめまして。

 あるいは、おかえりなさい。


 私の名前は、██。

 三年前に、一度死んだ者です。


 彼が――報告書①を書いた人が、迎えに来てくれました。

 あのトンネルの奥で、私の手を取ってくれた。


 おかげで私は、道を見つけることができた。

 長いあいだ、出口を探していたのです。


 勘違いしないでください。

 私は、誰も連れていってなどいません。


 トンネルは、ただの戸口。

 会いたいと願う人がいれば、開く。


 開けたのは、いつも、こちら側へ来てしまった、あなたたちの方です。


 報告書②の方。

 あなたが聞いたAの声は、A自身です。


 彼はもう、こちら側で笑っています。

 心配は要りません。


 報告書③の方。

 あなたがトンネルで何も見つけられなかったのは、当然です。


 その頃には、私はもう、外に出ていましたから。

 空っぽになった戸口に、何が残るでしょう。


 そして、この四通を今、順番に読み解いている、あなた。


 読んでくれて、ありがとう。

 〈迎え〉には、順番があります。

 会いたいと、誰かを強く思ったことのある人から。


 あなたにも、いるでしょう。

 もう会えないはずの、誰か。


 安心してください。

 もうすぐ、その人が、あなたを迎えに来ます。


 ――今、あなたの後ろに、足音は、幾つ聞こえますか。


 当該隧道は封鎖されました。

 ですが、問題は、トンネルでは、ありません。


 私たちは、もう、そちら側にいます。


――――――――――――――――


 以上、四通。


 事案番号〇〇一。

 分類は、保留とする。


 第二種か、あるいはそれ以上か、私には判断がつかない。


 一つだけ、書いておかねばならないことがある。


 この四通を読み終えてから、私は毎晩、記録室を出るとき、廊下で足音を聞くようになった。

 私の足音のあとに、もう一つ。


 数えれば、二つ。

 振り返れば、誰もいない。


 この記録を書き写したのは、次にこれを読む者への、警告のつもりだった。


 だが、今になって思う。

 〈迎え〉に順番があるのなら――読んで、思い出してしまった分だけ、その順番を、早めているだけなのかもしれない。


 あなたは今、誰を思い浮かべただろうか。


 次の事案に移る前に、どうか、後ろを、振り返らないでほしい。

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