報告書③ 調査員C
三通目は、事務的な筆致で始まる。
調査員C。
前の二通とは、明らかに温度が違う。
――――――――――――――――
報告書①および②の内容を受け、現地確認を行った。
以下、所見を記す。
全長、百二十メートル。
実測値、資料と相違なし。
照明設備は全て撤去済み。
内部に人影、音声、その他異常存在の痕跡――いずれも確認されず。
壁面に落書きはあるが、経年の悪戯の範囲を出ない。
「帰れない」等の記述は、発見できなかった。
録音機を二十四時間設置。
回収し全編を確認したが、風音と滴下音のみ。
人影も、人を呼ぶ声も、報告書①②に記載のごとき現象は、一切、記録されなかった。
所見。
当該隧道に、異常は認められない。
――ただし、一点、付記する。
報告書①②の照合のため、当課の職員名簿を確認した。
調査員A、調査員B。
両名とも、当課には在籍していない。
過去の在籍記録にも、業務委託の記録にも、その氏名は、存在しない。
では、あの二通の報告書は、誰が書いたのか。
筆跡鑑定に回した。
結果を待っている。
――結果が出るまで、この件は保留とする。
正直に書いておく。
私はこの数日、帰宅すると、玄関の外に、誰かの足音を聞く。
ドアを開けると、誰もいない。
気のせいだ。
そう思いたい。
所見、変更なし。
異常は、なかった。
――――――――――――――――
名簿に、調査員Aも、調査員Bも、存在しない。
これはCの発見であると同時に、私自身が確認した事実でもある。
私はこの二人に、調査を発注していない。
発注の記録も、決裁の判も、どこにもない。
ではこの三通は、誰が書き、誰が私の机に積んだのか。
その答えらしきものが、四通目にある。
ただし、それを「報告書」と呼んでいいのかは、私にもわからない。




