報告書② 調査員B
二通目。
調査員Aの失踪から、九日後の日付。
後任として送られた、調査員Bの報告である。
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調査員Aと連絡が取れなくなって、九日が過ぎた。
後任として、私が同じトンネルに入る。
言っておくが、私は幽霊の類を信じない。
Aは何か別の事情で失踪しただけだ――入口をくぐるまでは、そう思っていた。
異変には、すぐ気づいた。
長さだ。
資料では全長百二十メートル。
だが、歩けども歩けども、出口の光が見えてこない。
時計を見て、ぞっとした。
入口をくぐってから、もう一時間が過ぎている。
歩数計は、とうに数キロを刻んでいた。
同じトンネルのはずが、あり得ない距離に、伸びていた。
壁に、落書きがあった。
ライトを当てて、私は動けなくなった。
筆跡も、書いた道具もばらばらの、無数の走り書き。
だが、書いてある言葉は、どれも同じだった。
――帰れない。
帰れない。
帰れない。
奥から、青白い光が差していた。
出口ではない。
そんな方向に出口はない。
光は、壁でも天井でもない、どこでもない一点から、滲んでいた。
そのとき、聞こえた。
「おい」
Aの声だった。
間違いない。
九日前に消えた、あいつの声だ。
ずっと奥、光の滲むあたりから、私を呼んでいる。
私は理解した。
ここは、トンネルではない。
どこかへ〈繋がる〉場所だ。
会いたい者の姿を見せ、一歩ずつ奥へ誘い、そして――向こう側へ、連れていく。
Aは、もう、その先にいる。
私は踵を返し、走った。
背後で、私を呼ぶ声が、いくつにも増えていくのを聞きながら。
所見。
当該隧道は即時封鎖を要する。
これは事故ではない。
〈迎え〉は、まだ続いている。
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私はこの二通を並べて、一つの奇妙な点に気づいた。
トンネルの長さだ。
百二十メートルの隧道を、Bは一時間かけても抜けられず、歩いた距離は数キロに及んでいる。
測り間違い――で、片づけてしまいたかった。
だが、Bもまた、戻っていない。
そして私は、ある確認のために、課の職員名簿を開いた。
その結果が、三通目に書かれている。
書いたのは、調査員Cだ。




