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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇八 置いておいてください

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記録室より

ファイルは、今朝、机の上に、置かれていた。

表紙に、事案番号〇〇八。


前のファイルは、先週、書庫へ回した。

処理票には、経過観察と書いてある。


保留、とは違う。

判断がつかない、と書いたのではない。


終わっていない、と書いた。

書庫は、終わったものを置く場所である。


そういう紙を、私は、そこへ置いてきた。


今度の舞台は、市立██総合文化センターである。

ホールと、会議室と、展示室を持つ、市の施設だ。


開館して、二十六年になる。


申し立てを起こしたのは、そのセンターの管理課で、庶務を担当している職員だった。


表紙の次の頁に、記録の種類が書いてある。


忘れ物の、受付簿と、処分簿である。


忘れ物という言葉は、書類の上では、拾得物という。

落とした側から見れば忘れ物、拾った側から見れば拾得物である。


どちらの語も、持ち主がいることを前提にしている。

持ち主のいない物を、この様式は、呼ぶ言葉を持っていない。


この課へ来る書類は、いつも、出来事の影だった。

誰かが架けたから、履歴が残る。


車両が走ったから、記録計が数字を積む。

影だけが残って、本体が見つからない。


そういう紙ばかりを、私は読んできた。


忘れ物の帳面は、順序が逆である。


物が、先にある。

帳面は、その物がいま棚にあるということを、後から書き写しているだけだ。


書き写しが合わないなら、疑うべきは、帳面の方だろう。

数え間違い。


書き落とし。

二重の計上。


どれも、よくあることだ。


十四回続けて起きるようなことでは、ない。


私は、一枚目をめくった。

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