報告書⑥ 経過
六通目は、経過の記録である。
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先月の運行を最後に、未明の運行は、記録されていない。
今月は、一件もない。
ゲートの記録、燃料の量、車両の状態、いずれにも変化はない。
何かが変わった形跡は、確認できない。
再開発の工事は、予定どおりに進んでいる。
旧██台地区の建物は、すべて取り壊しが済み、更地になった。
造成は、これからである。
バス会社は、当該車両の運用を当面見合わせ、運行記録計を取り外して保管した。
精算機の履歴は、写しを本課で保全している。
十名の元住民については、その後、転居も傷病も届け出られていない。
暮らしは、続いている。
判読できない一枚についても、進展はない。
照会は、継続している。
止んだ理由は、特定できていない。
帰る先が更地になったから、と書けば、説明の形にはなる。
だが、運行が始まったとき、██台は、まだ更地ではなかった。
家々は建ったまま、無人になっていただけである。
説明は、時系列に合わない。
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止んだ。
この事案で、一番説明のつかない記録が、これである。
願った者が、願うのをやめたのか。
帰る先が更地になり、記録の中からも消えたのか。
どちらとも、書かない。
書けば、推測になる。
一つだけ、確かなことを書く。
二十九から二十八を引くと、一が残る。
判読できない一枚は、降りた記録がないまま、便の記録だけが止まった。
乗ったままで、便が、無くなったのである。
私は、処理票に、経過観察、と書いた。
判を、押した。
押しながら、考えていた。
無くなった便に乗ったままの一人は、いま、どの記録に載っているのだろう。
それとも、載る記録を、探しているのだろうか。




