報告書② 運行記録
二通目は、保全された記録の照会結果である。
担当者の覚書を付す。
――――――――――――――――
対象期間は八か月。
運行記録計に残る未明の運行は、計二十九回である。
発生は不定期で、月に一回から五回。
月を追うごとに、回数は増えている。
起点の発車は、いずれも四時四十分。
廃止前の時刻表に、この便は存在しない。
当該系統の始発は五時三十分であり、四時四十分発の便は、一度も運行されたことがない。
走行距離は、二十九回とも六・八キロ。
廃止された系統の、起点から終点までの営業距離と一致する。
所要は、いずれも二十分前後。
廃止前の平均所要と、ほぼ一致する。
速度の記録には、減速と停止の波形が、規則的に残っている。
波形の位置は、廃止前の停留所の位置と、合っている。
精算機の履歴は、乗車タップ二十九件。
うち二十八件は、記名式のICカード十枚によるものである。
同じカードが、複数回使われている。
十枚は、いずれも実在の利用者に正規発行されたものである。
氏名、生年月日、すべて登録されている。
残る一件のカード番号は、判読できない。
読める桁と、読めない桁がある。
読める桁の並びは、十枚のいずれとも一致しない。
降車タップは、二十八件。
すべて、十枚のカードと突合できた。
判読できない一枚に、降車の記録はない。
降車停留所は、二十八件すべて「██台」。
当該系統の終点であり、六年前、路線の廃止と同時に停留所ごと廃止されている。
標識柱も、撤去済みである。
――――――――――――――――
乗車が二十九、降車が二十八。
運賃は、一円も動いていない。
一件だけが、まだ降りていない。
――三通目は、十枚のカードの持ち主に当たった、聞き取りの記録である。




