記録室より
私は、特異事象調査課の記録分析官である。
現場には出ない。
各地から集められた報告書を読み、照合し、分類して、一つの事案にまとめる。
それだけが、私の仕事だ。
前のファイルは、書庫へ送った。
送る前に、最後の頁を、もう一度だけ見た。
あれについては、ここには書かない。
これは、事案〇〇七の記録である。
ファイルは、今朝、机の上に、置かれていた。
表紙に、事案番号〇〇七。
今度の舞台は、██市である。
市の南側を走っていた、路線バス。
申し立てを起こしたのは、バス会社の██営業所に勤める、運行管理者だった。
表紙の次の頁に、記録の種類が書いてある。
今度のそれを見て、頁をめくる手が、一度止まった。
運行記録である。
車両がいつ動き、どこを、何キロ走ったか。
運行記録計が機械として順に積んでいく数字と、乗客のICカードが精算機に触れた履歴。
これまで扱ってきた記録は、どれも、止まっているものだった。
場所は動かない。
機械は据え付けられている。
電波も、票も、届いた先で止まる。
今度の記録は、走る。
道があり、車両があり、運転する者がいて、はじめて数字が積まれる。
どれか一つが欠けても、運行記録は残らない。
残っていた。
両端に人の要る記録なら、前にも来た。
あのときは、何も辿れなかった。
今度のは、人だけではない。
車両という、鉄の塊が要る。
――ただし、その路線は、六年前に廃止されている。
私は、一枚目をめくった。




