報告書⑤ 分析官の記録
五通目は、報告書ではない。
私自身の、覚書だ。
――――――――――――――――
照会先が特定できなかった、その一名の利用者番号を、三度、照合した。
見覚えのある並びだった。
前の事案で、私が現地へ行かせた、あの調査員の番号である。
当課は、公務での利用のために、市立図書館へ団体登録をしている。
当課が保管しているその控えに、同じ番号があった。
貸出日を見た。
連絡が取れなくなった日より、後である。
借りているのは、他の十六名と同じ、あの歌集だった。
その調査員が、あの歌集の著者と面識があったという記録は、どこにもない。
会葬者名簿にも、名前はない。
他の十六名は、著者を知っていた。
読みたいと願う理由が、あった者もいる。
この一名には、知り合う機会すら、なかった。
――念のため、私自身の番号も引いた。
控えには、私の番号があった。
ただし、その番号で借りられた本は、一冊もない。
私は、毎日、何かを読んでいる。
読むために、借りたことは、一度もなかった。
――――――――――――――――
この一件を、どう扱うべきか、しばらく考えた。
前の事案で、私は、写真を数えたことを書かなかった。
書けば、確認のために、誰かを行かせることになる。
そう考えたからである。
その結果、どうなったか。
行かせた者は、戻っていない。
そして、その者の番号が、今度の記録に、現れている。
私が書かなかったことで、止まったものは、何一つ、なかった。
――だから、今度は、書く。
書いた場合に何が起きるかは、わかっている。
わかっているが、書かなかった場合に何が止まるのかも、私は、もう知っている。
何も、止まらない。
――六通目は、当課の事案処理票である。




