報告書④ 資料
四通目は、当該資料の特定に関する報告である。
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当該資料は、私家版の歌集である。
著者は、市内に住んでいた女性。
九年前に病没している。
歌集は、生前に自費出版されたもので、発行部数は八十部。
市販はされていない。
著者の没後、遺族が図書館へ一冊を寄贈し、郷土資料として受け入れられた。
除籍時の整理簿によれば、受け入れから除籍までの五年間、貸出実績はゼロである。
除籍は、この利用実績にもとづく定期整理によるものであり、手続きに不備は認められない。
著者の作品については、生前、市の広報紙に数首が掲載されている。
内容は、いずれも日常を詠んだものである。
死、別れ、再会を主題としたものは、確認された範囲では、含まれていない。
――以下、所見。
貸出記録に残る十七名について、著者との関係を照会した。
うち十六名について、著者との面識が確認された。
内訳は、親族が三名、かつての同僚が五名、同じ歌会に所属していた者が六名、近隣住民が二名である。
いずれも、葬儀の会葬者名簿に、記帳がある。
残る一名については、照会先が特定できず、確認に至っていない。
十六名のうち、面会できた九名は、いずれも、聞き取りに対して、同趣旨の発言をしている。
要約すると、次のとおりである。
「もう一度、あの人の歌を読みたいと思った」
なお、そう述べた九名は、いずれも、当該歌集を借りた覚えはない、と述べている。
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読みたいと願った者から、順に、借りている。
手続きは、していない。
――五通目は、私自身の、覚書である。




