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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇五 返却日は空欄

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報告書① 照会

一通目は、市立██図書館の司書からの申し立てである。

担当者が聞き取り、書き起こした。


以下、原文のまま記す。


――――――――――――――――


私は、市立██図書館で、司書をしています。

勤めて、十四年になります。


蔵書点検のときでした。

年に一度、休館して、全部の本を、一冊ずつ確認する作業です。


先に、お断りしておきます。

郷土資料の棚は、この四、五年、改修工事で、点検から外れていました。


今年、元に戻したんです。


二人一組でやります。

片方が棚から抜いて、もう片方が、機械でバーコードを読む。


その日は、私が読む側でした。


郷土資料の棚に、記録にない本が、一冊ありました。


読ませたら、画面に、除籍済み、と出ました。


除籍というのは、蔵書から外すことです。

傷んだものや、何年も借りられていないものを、順番に整理します。


外したあとは、廃棄するか、希望者に譲るかします。


その本は、廃棄した記録が残っていました。


なのに、棚にありました。


それだけなら、手続きの間違いだと思ったはずです。

よくあることではありませんが、絶対にないとは言えません。


その場で、資料コードを引きました。


貸出の記録が、ずっと続いていました。

除籍したあとも、途切れずに。


返却の記録は、一件もありませんでした。


全部、貸出のままです。

返却日の欄が、空欄で。


――でも、本は、棚にあるんです。


――――――――――――――――


証言は、ここで終わっている。


借りられたまま返っていない本が、棚にある。


貸出の記録だけがあり、返却の記録がない。

それでいて、現物は、あるべき場所に戻っている。


――二通目は、その貸出記録を、抽出したものである。

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