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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇四 六時のチャイム

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報告書③ 調査員の報告

三通目は、事務的な筆致で始まる。██町はずれの廃寺について、現地確認を行った調査員の報告である。


――――――――――――――――


██町北西、旧道の終端に位置する廃寺。寺号は、判読できず。


無住となって、半世紀以上と推定される。参道は藪に埋もれ、山門は倒壊。だが、本堂へ至る石段だけは、下草が踏み分けられていた。


継続的に、人が、上っている。


本堂は、雨戸が外れ、内部が露出していた。畳は腐り、天井は落ちている。仏像、位牌、その他の什物は、いずれも残存せず。


――以下、所見。


本堂の、上がり框の前に、履物が並べられていた。


子ども用の靴、およびサンダル。計十一足。


いずれも、揃えて置かれている。爪先を、外に向けて。上がるときに、脱いだ形である。


風雨に晒された跡があり、製造年代には、明らかな幅がある。古いものは、素材の劣化から、五十年以上を経ていると見られる。新しいものでも、十年近くを経ている。


並び順は、古いものから、新しいものへ。左から右へ、順に。


不揃いなものは、一足もない。ばらけたものも、投げ出されたものも、ない。


すべて、揃えて置かれている。


――所見は以上である。なお、現地滞在中、十八時に、チャイムは聞こえなかった。当該地点は、町のスピーカーからは、距離がある。


――――――――――――――――


町の記録に残る行方不明の子どもは、七名である。


履物は、十一足あった。


四足分の子どもについては、記録が、存在しない。記録の保存されていない年代の子か、あるいは、届が出されなかった子か。私には、判断がつかない。


一つ、合わないことがある。


声をかけられて止まった子は、靴を履いていなかった。家を出るときに、履かずに出ている。四件とも、そうであった。


では、石段の上に揃えられた十一足は、いつ、どうやって、そこへ着いたのか。


履いていない子どもが、脱ぐことは、できない。


――それでも、履物は、揃えて置かれていた。投げ出された形ではない。上がる前に、そうするものだと、教わった通りの形で。行儀よく。


連れ込まれた跡は、どこにもない。


四通目は、私自身の、覚書である。

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