報告書③ 調査員の報告
三通目は、事務的な筆致で始まる。██町はずれの廃寺について、現地確認を行った調査員の報告である。
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██町北西、旧道の終端に位置する廃寺。寺号は、判読できず。
無住となって、半世紀以上と推定される。参道は藪に埋もれ、山門は倒壊。だが、本堂へ至る石段だけは、下草が踏み分けられていた。
継続的に、人が、上っている。
本堂は、雨戸が外れ、内部が露出していた。畳は腐り、天井は落ちている。仏像、位牌、その他の什物は、いずれも残存せず。
――以下、所見。
本堂の、上がり框の前に、履物が並べられていた。
子ども用の靴、およびサンダル。計十一足。
いずれも、揃えて置かれている。爪先を、外に向けて。上がるときに、脱いだ形である。
風雨に晒された跡があり、製造年代には、明らかな幅がある。古いものは、素材の劣化から、五十年以上を経ていると見られる。新しいものでも、十年近くを経ている。
並び順は、古いものから、新しいものへ。左から右へ、順に。
不揃いなものは、一足もない。ばらけたものも、投げ出されたものも、ない。
すべて、揃えて置かれている。
――所見は以上である。なお、現地滞在中、十八時に、チャイムは聞こえなかった。当該地点は、町のスピーカーからは、距離がある。
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町の記録に残る行方不明の子どもは、七名である。
履物は、十一足あった。
四足分の子どもについては、記録が、存在しない。記録の保存されていない年代の子か、あるいは、届が出されなかった子か。私には、判断がつかない。
一つ、合わないことがある。
声をかけられて止まった子は、靴を履いていなかった。家を出るときに、履かずに出ている。四件とも、そうであった。
では、石段の上に揃えられた十一足は、いつ、どうやって、そこへ着いたのか。
履いていない子どもが、脱ぐことは、できない。
――それでも、履物は、揃えて置かれていた。投げ出された形ではない。上がる前に、そうするものだと、教わった通りの形で。行儀よく。
連れ込まれた跡は、どこにもない。
四通目は、私自身の、覚書である。




