報告書① 証言
一通目は、██町に住む男性からの、聞き取りである。担当者が書き起こした。以下、原文のまま記す。
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去年の十月です。夕方、畑から戻る途中でした。
チャイムが鳴りました。「夕焼小焼」の。うちの町は、五時に鳴るんです。子どもに、帰る時間を知らせるやつ。
でも、その日は、六時でした。おかしいな、とは思いました。思っただけで、気にはしなかった。
そうしたら、向こうから、下の孫が歩いてきて。
いや、歩いてきたんじゃない。私の横を、通り過ぎたんです。
まっすぐ、前を見て。急ぐでもなく、遊ぶでもなく。ただ、歩いていく。町はずれの方へ。あっちには、もう、何もありません。廃寺が一つ、あるだけで。
「どこ行くんだ」って、声をかけました。
止まりました。振り返って、きょとんとして。「じいちゃん、なんで、ここにいるの」って。
その子は、自分がなぜそこにいるのか、わからないようでした。家にいたはずだ、と言うんです。
家内に聞いたら、確かに、家にいたと。テレビを見ていたと。いつの間に出ていったのか、わからないと言うんです。
――ただ、一つだけ。
その子、靴を、履いていませんでした。
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証言は、ここで終わっている。
同種の証言が、他に三通、綴じられていた。いずれも、六時のチャイムのあとに、子どもが一人、町はずれへ向かって歩いていた、というものである。
四件とも、大人が声をかけ、子どもは止まっている。
――では、声をかける者が、いなかったときは、どうなるのか。二通目は、町の記録を、そのまま写したものである。




