追記
以下は、事案〇〇三の末尾に、後日、書き加えたものである。
――事案〇〇三は、終わった。
七月三十一日、午前四時十二分。██市内の、四百十二台のカメラから、該当者百八十七名の姿が、いっせいに、消えた。以後、一件も、記録されていない。
現象は、止んだ。理由は、わからない。始まった理由が、わからなかったのと、同じように。
帰ってきた者は、一人も、いない。
助けられたわけでも、見逃されたわけでもない。ただ、通り過ぎたのだ。台風が去ったあとに、流された人だけが、戻らないのと、同じように。
家族には、その日から映らなくなった、とだけ、伝えられた。ある家では、それが、失踪の始まりとして、届け出られた。三か月遅れの、失踪届である。
それから、いつのことかは、わからないが。
私の携帯電話の、通話が、切れていた。
切ろうとしたわけでは、ない。いつ終わったのかも、わからない。ある日、画面を見たら、終わっていた。通話時間は、表示されていなかった。最初から、何も、なかったように。
切り方は、最後まで、わからなかった。
私は、この事案を、書庫へ送る。分類は、第二種。加害者なし。動機なし。被害者、百八十七名。そう書いた。
書きながら、一つだけ、確かめたいことがあった。
庁舎のカメラを、開いた。記録室。今日の、この時刻。
私は、ちゃんと、映っていた。




