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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇三 まだ映っている

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報告書④ 分析官の記録

四通目は、報告書ではない。私自身の、覚書だ。


――――――――――――――――


照合の結果を、書く。


当課の職員のうち、直近三か月に、対面接触が確認できた者は、二名だった。


私は、その二名に、含まれていなかった。


落ち着いて、考えた。私は毎日、出勤している。廊下ですれ違う。書類を受け取る。会議にも、出ている。だが、それを、どうやって、証明するのか。


私は、庁舎のカメラ映像を、開いた。


映っていた。私は、ちゃんと、映っていた。朝、玄関を入り、階段を上り、記録室の扉を開ける。昨日も、一昨日も。


安心した。私は、こちら側にいる。


安心して、それから、気づいた。


私は今、自分がここにいることを、映像で、確認した。


――――――――――――――――


記憶を、たどってみた。最後に、誰かと、同じ部屋で、言葉を交わしたのは、いつか。


思い出せない。


会議は、画面越しだ。書類は、朝には、もう机に積まれている。誰が置いたのかは、見ていない。前任者に会ったことは、一度もない。私が着任したとき、彼は、もう、いなかった。


この二十日間、私が、直接、その手で触れた人間は、一人も、いない。


――だが、私のポケットの中では、まだ、通話が、続いている。


誰かが、ずっと、私の話を、聞いている。


私は、それを、人だと、思っていた。

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