報告書③ 解析
三通目は、事務的な筆致で始まる。██市内の映像記録から、該当者を抽出した、解析担当の所見である。
――――――――――――――――
██市内および周辺の、公共・民間カメラ、計四百十二台。過去一年分の記録を、対象とした。
抽出条件は、二つ。
一、映像に、継続的に記録されていること。
二、直近三か月間、対面での接触が、一件も確認できないこと。
該当者、百八十七名。
数字を、二度、確認した。誤りでは、ない。
内訳を記す。うち百五十名について、失踪届は、出ていない。家族も、職場も、その人物が「いる」と認識している。理由は、いずれも、同じだった。
「毎日、見ているから」。カメラで。画面で。通話中の、画面越しに。
我々は、この百八十七名を、失踪者として扱うべきなのか。判断が、つかない。
そこで、逆の抽出を、行った。直近三か月間に、対面での接触が、確実に、複数回、確認できる人物。つまり、まだ、こちら側にいると、言い切れる人物である。
そちらのリストの方が、短かった。
なお、対象は██市内および周辺に限った。他市への照会は、行っていない。行うべきかどうかも、判断がつかない。
また、該当者のうち四十一名については、記録に保存期間の切れた区間があり、通期の照合ができなかった。この四十一名が、どちら側なのかは、わからない。
――――――――――――――――
私は、この所見を、三度、読み返した。
そして、当課の職員名簿を、開いた。
「まだ、こちら側にいると言い切れる人物」の中に、当課の職員が、何名、含まれているか。
四通目は、その一覧を、当課の職員に対して引き当てた、私自身の記録である。




