報告書② 映像記録
二通目は、文章ではない。当課が██市内から収集した、映像記録の一覧と、これを扱った担当者の、短い覚書である。
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同種の相談、十九件。すべて、同じ構造だった。
「家族が帰ってこない。だが、映像には、映っている」。
十九件の映像を、すべて確認した。所見を記す。
映っている人物の挙動に、不自然な点は、認められない。歩行、開錠、荷物の持ち替え。いずれも、失踪前の、本人の癖と一致する。天候にも、正しく反応している。雨の日は濡れ、風の強い日は、髪が乱れる。
編集の痕跡、合成の痕跡、いずれも、検出されず。
問題は、次の点である。
十九件のうち、十四件で、失踪者の映像は、複数のカメラに、同時刻に、記録されていた。自宅の玄関と、二駅離れたコンビニエンスストアと、市役所の玄関に。同じ人物が、同じ時刻に、三か所を、歩いている。
さらに確認したところ、この十四名は、いずれも、住民票が、抹消されていない。国民健康保険の、利用記録もある。歯科医院。内科。いずれも、来院の記録が、残っている。
――ただし、どの医院にも、その患者を診た記憶のある者は、一人も、いなかった。
※本記録の照合作業は、当課の記録係が担当した。同人からの申し送りは、以下の一行のみである。「照合は、済んでいます。何度も」――記録係
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記録は、残る。記憶だけが、残らない。
私は、この一行を書き写しながら、手を止めた。
では、我々が「あの人は、まだ生きている」と判断するとき、その根拠は、いったい、何だったろうか。
三通目は、その問いを、██市内の映像に対して、機械的に投げた、解析の記録である。




