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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇三 まだ映っている

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報告書① 証言

一通目は、映像ではない。ある女性から寄せられた、相談の記録である。担当者が、書き起こした。以下、原文のまま記す。


――――――――――――――――


夫が、家に帰ってきません。もう、三か月になります。


いえ、警察には、届けていません。届ける必要が、ないんです。だって、帰ってきているので。


うちは、玄関に、カメラを付けています。防犯用の、安いやつです。スマホで、いつでも見られる。


毎晩、十一時過ぎに、夫が映ります。門を入って、鍵を開けて、中に入っていく。傘を差している日もあります。雨の日は、ちゃんと、濡れています。


でも、私は、三か月、夫に、会っていません。


映像では、確かに、家に入ってくるんです。それなのに、リビングにも、寝室にも、来ない。朝になると、洗面所のタオルだけが、使ったあとの形に、崩れています。私が畳んでも、また、崩れています。


先週、思いきって、玄関で、待ってみました。十一時に、カメラに、夫が映りました。門を、入ってきました。


私が、鍵を、開けました。開けて、しまいました。


誰も、入ってきませんでした。


でも、スマホの映像では、私の横を通って、廊下を歩いていくんです。私は、そこに、立っていたのに。


――――――――――――――――


証言は、ここで終わっている。付記によれば、この女性は、聞き取りの四日後から、連絡が取れない。


担当者が自宅を訪ねたが、応答は、なかった。


ただし、玄関のカメラには、その時刻、女性が在宅している姿が、映っていたという。


――同種の相談は、この一件だけでは、なかった。二通目は、同じことを訴えた、他の家族の記録である。

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