記録室より
私が後任として、この席に着いてから、二十日が過ぎた。
先に、報告しておくことがある。私の携帯電話は、まだ、通話中だ。
充電が切れれば終わると思った。切れなかった。電源を落とした。画面は消えたが、翌朝、通話時間は、消えていた時間の分だけ、増えていた。機種を変えた。番号も変えた。新しい端末の、新しい番号で、通話は、続いていた。
もう、諦めている。ポケットの中で、誰かが、ずっと、私の話を聞いている。それだけのことだ。仕事は、できる。
前任者のファイルは、書庫の奥へ送った。事案〇〇二、分類は、保留のまま。
そして今朝、机の上に、次のファイルが、積まれていた。誰が置いたのかは、もう、訊かない。
表紙に、事案番号〇〇三。
今度のファイルには、報告書が、ほとんど入っていなかった。代わりに綴じられていたのは、映像記録の、一覧である。██市内各所の、防犯カメラ。コンビニエンスストアの、店内カメラ。駐車場の、ナンバー読み取り装置。市役所の、玄関。
私は、映像を見る仕事ではない。だが、これを綴じたのが誰であれ、私に読ませるつもりで、置いていったのだろう。
――先に、書いておく。このファイルを読み解いたとき、私は、自分が、まだ、こちら側にいるのかどうかを、確かめる方法を、失うことになる。




