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第23話 勇者VS剣聖

活動報告どおり、『異世界ウツ』の最新話を投稿しました。

戦闘回です、短いですが数回に分けて投稿の予定です。

そしてご報告、『おーっほっほっほ、完・全・勝・利で、す、わぁっ!! 』という短編がおそらく作者初のランキング入り、しかも50位以内という快挙を上げました。

よろしければ、こちらもどうぞ…という宣伝です。

それでは、どうぞ。

 



 次の日、フォロカルたち一行は王宮へとやってきた。


 何と今になって知ったのだが、王宮への挨拶をすっ飛ばして俺のいた孤児院に来ていたらしい、べつに国の要人でもないんだから本来はしなくてもいいんだが、『私がこの国に来たのは』云々を普通はこの国の人間は知りたいだろうからその辺の考慮を入れてほしかった。


 まぁ、こっちから招待すればいい話なんだけどね。


 王であるガイネス、そして王太子となったエルライドがフォロカルたち一行を歓迎して、その余興として演習場で模擬戦という形で使用を許可された王宮の一角は、朝早くというのに暇人が多いのか観客であふれている。


 普段は近衛騎士たちの訓練場でもあるその場所は冒険者ギルドの演習場以上の強度を誇る。


 ガイネスは執務があるからと同席しなかったが、エルライドはアッキーとフォロカルの2人に興味があるのか、テーブルとイスをメイドや侍従たちに命じて持ってこさせて紅茶を飲みながら観戦気分を楽しんでいた。


 ちなみに、お茶請けは俺の手作りである、プレーンタイプのクッキーだ。


 風魔法で埃と砂が舞わないように俺とエルライドの周りにはこっそりと風魔法を使っている、完璧である。


 隻眼はいつものように直立不動で気配をなるべく消しているが、時たま俺を睨んでくるので鬱陶しい。


「それでユーリ、あの2人ってどっちが強いのかな?

 正直、あの領域にまで到達している2人の強さなんて測れないんだけど」

「普通にアッキーじゃね?

 魔法使わない戦闘だったら、アッキーは俺との摸擬戦に勝ち越してるからな。

 こと剣術に限れば、アッキーは【剣聖(フォロカル)】以上だろ」


 演習場の中心部でアッキーとフォロカルが向かい合う。


 アッキーの剣は諸刃のオリハルコン製の剣、刃渡り約70センチの長剣。


 対するフォロカルの剣は前世で言うところの『(カタナ)』、いや、刃渡りが確実に1メートルはありそうだから『大太刀』と呼ぶべきか、材質は…たぶんアダマンダイト製だろうな、重くて柔軟性にもある程度融通が利いている獣人にとっては一番持ち味を発揮できるだろう。


「…まぁ、内側に入り込めれば勝機はあるっていうのが単純なところだけど、フォロカルにその隙があるかなぁ?

 隻眼ならどうするんだ、あんな長い刃物に対して?」


 昨日会った時とは違って、演習場に入った時から臨戦態勢だったフォロカルに隙は見当たらない。


 あの大太刀は間違いなく名工の手による一品だろう、アッキーの長剣に負けず劣らずといったところか。


「…最初は様子見だな、フォロカル殿の武器はとにかく長い。

 加えてその技量は達人とされる剣豪すらも易々と圧倒すると聞く。

 懐に入り込めたとしても、対策くらいは講じていよう。

 手の内や戦闘の法則を見極めてから仕掛けても遅くはないはずだ…と思う」

「へぇ、さすが剣士の頂点にいるとされている【剣聖】だね。

 フィリップがそこまで慎重な作戦を取るなんて」

「まぁ隻眼じゃフォロカルやアッキーにも勝てないからな、強いとは言っても達人級だし。

 それでもあと何年かしたらフォロカルと正面から打ち合える剣士になるんじゃねえの?」


 近くでフォロカルの弟子たちがものすごい目で睨んでくるのだが、何で睨んでくるのかよくわからないので無視しておく。


 3人で話しているうちに、2人が動き出す。


勇者(アッキー)】と【剣聖(フォロカル)】の戦いが、始まる。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




 すごいな、とアキラは感嘆の声を上げた。


 刃渡りに差があるとはいえ、アキラは先手を確かに取りフォロカルに切りかかった。


 最初から全力で打ち込まなかったのが原因なのだろう、フォロカルは易々とアキラの剣を大太刀で切り払う。


 全力ではないとはいえ、大型魔獣を容易く切り伏せるだけの速度があった剣をフォロカルは簡単に防いだ。


 久々の難敵に口元がにやけてしまいながらも、お返しとばかりに繰り出されるフォロカルの一撃をアキラも易々と切り払って見せた。


 フォロカルの剣速はアキラの剣よりも早く、しかも正確にアキラの首を狙った必殺の一撃だ。


 防げなかった場合、間違いなくアキラの首と胴は断たれ演習場に不出来な赤い絨毯が出来上がる。


「すごい、すごいな【剣聖】!!」


 楽しそうに声を上げて、更に剣速を上げるアキラ。


 今度は更に力を込めた一撃だ、振るだけで突風が舞い上がるほどの剣速は観客の一部が悲鳴を上げてしまうほどである。


「やはり、これほどの腕とは…っ!?」


 驚愕に溢れた声を上げるフォロカルだが、反面その顔は酷く楽しそうな表情を張り付かせていた。


 笑ってはいるがアキラの一撃には何の奇も衒っていない、直線的な一撃だ。


 だが、それだけ力を注力しやすく、そしてその一撃は―――、


「―――おおっ!?」


 大太刀を両手でしっかりと握ると、アキラの一撃を叩き落す。


 今まで感じたことのない衝撃がフォロカルの両手首に負荷となって襲いかかる。


 返す刀で下段からの逆袈裟を放つフォロカルの一撃はもはや常人の目では追いつかないほどの速度に達していた。


 鬼気迫るその剣閃はアキラの胴を断つだけでなく、その踏み込みによって演習場の地面が窪むほどの力を込めている。


 さすがに危険と判断したのか、即座に回避したアキラはフォロカルと距離をとった。


 その瞬間、剣が地面に触れていないのにもかかわらず避けたのを見ると、アキラがまた楽しそうに笑う。


「…やっぱいいな、こういうのは。

 ユーリが本気で戦うとなれば魔法重視の戦いが主流だからな。

 近接戦闘はそこそこ出来るとはいえ、俺と本気で打ち合えない。

 近衛騎士団のみんなも強いが、やはり物足りなく感じていた。

 そこにくると、あんたは最高だよ【剣聖】。

 ちょっと打ち合っただけで理解した、アンタの実力は本物だ。

 身体能力、間合いの取り方、体の動かし方、剣の読み、力の加減、速さ、巧さ、どれをとってもその二つ名に相応しい」


 アキラは口元の笑みを更に深めながら、剣をフォロカルに向け賛美を贈る。


 開始5分と経たずに、お互いの技量がその全てを理解してしまったのだろう。


 常人には理解出来ない超感覚に、聴覚を強化していたユーリですら意味不明とぼやいている。


「そういう貴殿も、その若さで我が領域に達していると思うとその才に驚くばかりだ。

 …いや、少し違うな、こんな上から目線では逆に失礼か。

 その若さで俺よりも遥か高みにいる剣士と出会えるとは、今日は良い日だ、実に良い日だ。

 対外的には貴殿が俺に挑んでくると思われているかもしれないが、実質はその逆。

 本気で挑ませてもらうぞアキラ殿、我が全身全霊を受け取ってほしい」


 フォロカルもアキラを賞賛し大太刀を構える。


 好きのなかった構えに更に気迫が加味され、空気が震えている。


「…いいぜ、受けてやるよ。

 だが、楽しませてくれよ?

 ―――じゃないと」


 その刹那、アキラの姿がフォロカルから消える。


「―――その命、零れ落ちるぜ?」

「―――っ!?」


 背後から感じた殺気に反応したフォロカルは大太刀を振るった。


 大太刀に衝撃が走り、フォロカルが大きく弾き飛ばされる。


 フォロカルの目に信じられないものが映っている。


 消えていたアキラが目の前にいたのだ。


「ははっ、避けたか!!

 じゃあ次はこれだぁっ!!」


 アキラが剣を振るうと、その斬撃がフォロカルに目掛けて襲い掛かる。


 斬撃を飛ばすという技術はある程度の領域に達した剣士ならば可能だろう。


 フォロカルも当然だが斬撃を飛ばすくらい難しい事ではない。


 だが、アキラの斬撃は桁が違った。


 大小合わせて20を超える斬撃の嵐ともいえる斬撃群となって襲い掛かったのだ。


 しかもその威力はそのどれもが必殺級の一撃で構成されていて、触れた途端フォロカルの身体は吹き飛ぶだろう。


 それはすなわち、斬撃全てを完璧に避け切るか、または迎撃するしかフォロカルに残された道はない。


 目を見張るフォロカルだが、対応もまた早い。


「斬撃を、しかも複数も飛ばすか!!

 ならばこちらもっ!!」


 目に映る全ての斬撃の嵐をフォロカルは迎撃する。


「おおおおおおおおおおおっ!!」


 斬撃を飛ばし、斬撃を飛ばし、斬撃を飛ばし…そして全ての斬撃を迎撃してみせる。


 しかし、完全に動きを止めてしまったフォロカルはいくら隙がなかろうと、後手に回ってしまった。


「懐入ったぜ【剣聖】ぃいいいいいいっ!!」


 斬撃を飛ばした直後そのまま突進してきたのだろう、アキラがフォロカルの懐に入り、既に攻撃動作に入っていたのだ。


 大太刀の特性は槍と同じく、一度懐に入れば絶対的に不利になるところだ。


 だが、フォロカルに焦りはなく、むしろ待っていたといわんばかりの会心の笑みが決まっていた。


「なんのっ!!」


 大太刀と剣がぶつかり合い、鍔迫り合いで火花が生じる。


 獣人の中でもトップクラスの身体能力を誇る狼の獣人であるフォロカルだが、対するハイヒューマンのアキラは競り負ける事無く押し合っている。


 お互いが機を窺っている中、先に動いたのはフォロカルだった。


「はぁっ!!」


 一瞬フォロカルが鍔迫り合いで勝っていた瞬間、フォロカルは踵落とし(・・・・)を自らの持つ大太刀目掛けて叩き込んだのである。


 アダマンダイト製の大太刀の強度だから出来る荒業に、アキラの表情が喜色と驚愕で満ちていた。


「―――マジかよオイっ!?」


 両腕の力に踵落しが加算され、鍔迫り合いに耐え切れなくなった堪らずアキラは強引に払ってフォロカルの背後に回ることで追撃をかわそうとした。


 そのまま下がってしまえば、すぐさまフォロカルに追撃の手が来ると感じていたからだ。


 あのままでいれば、いずれ自分の剣で体に深々と傷を負っていたのは間違いない。


「あれずるくない!?

 剣の勝負なのになんで足とか使うんだよ!?」

「ほらほらユーリ、落ち着いて?」


 観客席からアキラの良く知る声がブーイングを発しているのだが、説明している暇もないのでユーリに向けて手を『しっし』と煙たそうな表情をして払う様子にユーリは不貞腐れたのか、むすっとしてイスに座ってクッキーを頬張った。


 予想外の手に驚いたアキラはフォロカルの『足技(・・)』に警戒しながらも、楽しそうに笑う。


 フォロカルも反転して獰猛な笑みを浮かべてると、何度か深呼吸して足踏みした。


 足の感覚を確かめているようで、剣の他にも足にも警戒しないといけないと思いつつ、アキラは剣を構えた。


「…楽しいな【剣聖】?」

「…ああ、楽しいなアキラ殿。

 もっと楽しもう、もっと試合おう!!

 互いが燃え尽きるまで、ずっと!!」


 笑い合う2人の剣士の笑みは物騒で、歪んでいた。


 その凄みに当てられてか、観客の一部からは失神者が出始めていて、医療質に連れて行かれる観客が増え始めた時、待ったをかけた者がいた。


「―――いや、ずっとは困るからね?」


 アキラとフォロカルを挟んだ中央に、影が生まれた。


 アキラは見慣れた光景に先程までの笑みがすっかり鳴りを潜め、初めて見たフォロカルはその光景に警戒しアキラよりも影に大太刀を向けた。


 影が段々と形を作っていき、ハルバードを持ったユーリが現れる。


 先程まで観客席でエルライドと観戦していたり、野次を飛ばしていたりしたユーリが現れたのに不審がったフォロカルは次の瞬間その理由に気付いた。


 違ったのだ、服装が。


 イスに座っていたユーリが着ていたのはハロルドのプレゼントされていた一張羅で、戦闘には適さない服だったが、今ユーリが着ているのはまるで違う。


 全身を黒い服装で身を包み、通常ではありえない魔力をダダ漏れにした状態で、場違いな笑みを浮かべたユーリ。


「見てるだけだとヒマだから、来ちゃった♪

 参加させてもらうよ?」


 楽しそうに笑いながらも、獲物(ハルバード)を片手に完全装備で現れたユーリは2人と対峙する。


勇者(アキラ)】と【剣聖(フォロカル)】の2人の戦いの匂いに誘われて【魔王(ユーリ)】が現れたのだ。


遠目から【騎士(フィリップ)】も鋭い視線を向けながら、拳を握り締めていた。





内戦を前に戦力拡充を図ろうとしたユーリ、そしてその意を渋々ながらも受けたアキラは剣聖フォロカルとの戦いに楽しみを見出しながらも闘争を続けようとしていた。

しかし、その戦いに誘われ、魔王ユーリが現れた。

そして、それを遠くから強い視線を演習場に向ける近衛騎士フィリップ。

それぞれの思惑が交差して、演習場は混沌とし始めた。

次回、【魔王】VS【勇者】+【剣聖】+【騎士】です。

…久々に次回予告してみました。

読んで頂き、ありがとうございました。

感想やポイントなど、お待ちしています。

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