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第22話 戦争の準備を…ちっ、邪魔が入りました

久々の投稿です、大変お待たせいたしました。

次回も不明ですが、更新はコツコツしていきます。

総合評価が700Pt超えました、ありがとうございます。

今後も『異世界ウツ』をよろしくお願いします。

 



 戦争に必要なものは多岐に渡る。


 何よりも必要なのは兵士だ、それも相当数。


 別に孫子だの諸葛何たらのように頭を振り絞って陣形だの何たらの計だのするのは別に出来なくはない、ていうか普通に出来るだろう。


 が、俺は出来てもただの兵士が一朝一夕で出来る訳がなく、出来たとしてもお粗末な出来にしかならないのも予想出来るのだ。


 だからこそ、一定数の軍団を揃えなければならないのだ。


 優秀な司令官は必要なんだが、俺はまぁ半分以上お飾りな面が強いから除くとする。


 優秀な現場指揮官、優秀な参謀、優秀な上官。


 そして優秀な兵士。


 近衛騎士団や宮廷魔導師団、そして通常の軍団を統括する王国軍にも一定数いるんだが、全ての組織を統合して行動する訳には行かない為、これに関しては刷り合わせがかなり面倒だった。


 まぁ、今回に限っては問題は最初から存在していないんだけどな。


 が、ここで思わぬ横槍が入った。


 骨休めの為にグリューシア孤児院で優雅に紅茶を飲んでいた所、入り口が騒がしくなったのだ。


『―――たのもおおおぅっ!!

 こちらはギルド総本部よりユーリ・フォン・ミツミネ卿に用があって参った【剣聖】フォロカルと申す者だ。

 ミツミネ卿に面会を希望する!!」


 自称剣聖とやらが現れた。


 フォロカル…あれ、確かギルド総本部に所属している世界に7人しかいないランク9の1人じゃなかったっけ?


 冒険者ギルド…なんか本気で面倒くさくなってきたな。


 この状況下で俺に会いに来るとか…マジで空気読めなさ過ぎ。


 ……いや、ここは一つ利用させてもらうとするか。


 都合のいい、役に立つ駒はいくらあっても困らないからな。


 ここらで戦力強化も図ってみよう。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




 グリューシア孤児院は孤児たちの家であって、ユーリの別宅という訳では決してない。


 いくら孤児院の院長であろうと、その職分を侵してまで面倒を起こす気など更々ない。


 だが、世間ではユーリが普段からいるのがこの孤児院であると知られている以上、そうした認識でユーリに会いに来る者たちが一定数いるのである。


 年長組の纏め役であるシドは冒険者の頂点に位置しているフォロカルを院長室まで案内できて内心で弾んでいたが、院長室を空けた途端、その気持ちは遥か彼方へ飛び立った。


「……えっと、院長?

 その、お、お客さんを連れてきたんだけど…い、今大丈夫か?」

「……何さシド、俺がせっかくの休みの日を満喫していたのに予定のない仕事増やすとかどういうつもりなのさ。

 シバくよ?」


 休みの日だというのに孤児院にまできているのは最近孤児院の子供たちに構っていなかった事を思い出したユーリが今日一日食事を作ったり子供たちと遊んだり勉強を教えたりと思って事であり、それ以外の面倒は一切許容しないスタンスでいたのだ。


 予定を一時変更してこうした態度をとっていたが、本来はこのような茶番すらしたくないのが正直なところであった。


 そしてシドたちがこの院長室に来るまでの間に非番中のアキラも引っ張り出して2人して不機嫌な態度でシドやフォロカル一行を出迎えたのである。


【剣聖】フォロカルは狼の獣人であり、獣人族で唯一のランク9の冒険者にして、世界でも屈指の実力者である。


 そんな彼には同じく苦楽を共にするパーティーや弟子たちと常に行動しており、今回はユーリをギルド総本部からの手紙を直接渡すという簡単過ぎる依頼の為に行動していたのだ。


 ソラージュ王国が内戦を控えているという事もあり、手紙の内容を事前にギルドの幹部から伝えられていて把握しているフォロカルとしてはタイミングが悪すぎるということもあり、間違いなく手紙の内容を読み終えた後は叩き返される事を予想していた。


 そしてその予想以上にユーリは不機嫌な状態で待ち構えていたのである。


 その覇気だけでシドは震え上がりユーリの脅しに驚いてフォロカルたちを置いて逃げてしまう始末だ。


 フォロカルはその覇気に驚かされた程度で済んだが、パーティメンバーの一部や弟子はユーリの覇気に圧倒され一瞬にして全身から汗を噴出した。


 自分よりも遥か格上の魔獣と相対したような気持ちに錯覚したのか、震えているパーティーメンバーや弟子たちの面々に気付くとユーリはその覇気を抑えた。


「あぁ失敬。

 何だか面倒事を持ってきたおバカに説教をしていたら余波を受けたみたいだね。

 …って、そういえば君ら自体が面倒事じゃん!!

 悪いんだけどさぁ、今俺せっかくの休日をのんびり楽しく過ごしたい訳よ。

 強面(コワモテ)のオニイサンオネエサンたちとお話しする気なんてこれぽっちもないから、帰ってくれないかな?

 できれば1年くらいその顔を見たくないなぁ…なんなら一生見たくもないんだけど、それくらい先なら時間にも余裕が出来ていると思うんだ。

 どうかな、この提案。

 受けてくれるよね?」


 ワザとらしく場違いにも明るい声をかけたユーリはフォロカルたち一行に二次成長を未だ迎えない可愛らしい笑顔で対応して見せた。


 しかし、一瞬だけ見せた目が明らかに語っているのは『内戦前に顔出してんじゃねえよ空気読め』である。


 この1年という期間は内乱終結、そして帝国との戦争を短期で終結させ、更にはその戦後処理を含めたものなのだ。


 強大な軍事力を誇る帝国に対してユーリが、そして王国がどれだけの戦力を有しているのかフォロカルは把握していないが、ユーリの余裕振りからしてそれが自棄によるものではなく、安心感から来るものなのだろうと感じ取った。


 一瞬だが諦観めいたものを見て取ったのだが、気のせいだと思うことにしたフォロカルは先のユーリの発言から棘を隠す事無く晒しているあたり、機嫌が現在進行形で下降しているのは間違いないとフォロカルは察したのだった。


 しかし、この案件を任されているフォロカルは最低限の仕事はしなければと思い懐から手紙をユーリに差し出した。


「まぁ、この忙しい時期のつかの間の急速に横槍を入れてしまったことに関しては遺憾に思う。

 が、こちらも断りにくい仕事だった為仕方なく請けたものなのだ。

 返事は既に受け取ってはいて面倒だとは思うがこの手紙を読んで出来れば返事を一言でもいいから書いてほしいとの事だ」


 狼の獣人とあってフォロカルの苦笑いは凶悪さが見えていて普通の者ならば引き攣ってしまうだろう代物だったが、フォロカルの発言を鼻で笑ったユーリは掠め取るように手紙を手に取った。


 行儀が悪いと言わんばかりの目でアキラがジト目で睨むが、お構いなしにユーリは魔法による厳重な封がされた手紙を強引に破壊した。


 通常ならば1週間掛けて慎重に解呪する筈の封はいとも簡単に破壊されたのだ。


 これは冒険者ギルドが遠まわしにユーリが冒険者ギルド本部に来ない為に一部の幹部が起こした嫌がらせなのだが、ユーリにとってそのような小細工はまったく意味を成さなかった。


 ガラスを引き千切った様な音が院長室に響き、続けて紙を捲る小さな音が聞こえてくる。


 それを当たり前のようにして見せたユーリに驚いたフォロカルたちは手紙の内容を不快そうに読み進めるユーリをまるで沙汰を待つ被告人の厳しい顔つきになっていく。


「………話にならない」


 ユーリが口にした感想は呆れや失望が子供でも分かる様な声音であり、締め括りにその手紙を影で粉々にしたユーリはフォロカルたちを睨んだ。


 それはもう殆ど殺意にも等しい感情が多分に含まれていて、フォロカルを含めた全員が驚きと緊張に身を固めた。


「俺が冒険者ギルドの総本部に行っている間、俺の代わりにお前ら程度(・・)がエルライドの護衛をするだと?

 …どうやら連中の目は粗悪なガラス球のようだな。

 ランク9だからといって俺がはいそうですかと頷くと思っているのか?

 バカじゃないの、この程度の殺気に一瞬でも動けなくなったザコがエルライドの護衛?

 期待外れもいい所、有象無象から見れば【剣聖】なんて呼ばれて調子に乗っているみたいだけど、格の違う相手に対して隙を見せるようなザコなんてお断りだね!!」


 罵倒しながら引き出しから羊皮紙と封書を取り出したユーリはデカデカと羽ペンで『誰が行くかバーカ』と書き殴ると、封書に限界以上の魔力を込めて封を掛けた。


 ギルド総本部がユーリに宛てた手紙に掛けた封よりも遥かに多く、滅茶苦茶な術式による封はおそらく隣にいるアキラでも苦戦しそうなほどの代物で、ちゃちな封しかしてこなかったギルド総本部の魔法使いに解呪出来るのか怪しい出来栄えになっていく。


 そして出来上ったのは、おどろおどろしい呪いの品と見間違えてしまいそうな手紙である。


『不幸の手紙』なんて冗談めかしてユーリは笑っているが、不幸を通り越して封を開ければ災厄でも飛び出し撒き散らしかねないほどの魔法による罠がないか不安に駆られたフォロカルは、念を押すかのように、慎重にユーリに声をかける。


「…その、ミツミネ卿?

 その手紙を私が持っていかなくてはいけないのだろうか?

 もう少し周囲に配慮してくれるような魔法をしてほしいのだが…」


 悪影響を免れない代物を持つのはパーティーのリーダーであり、依頼を受けたフォロカルである。


 魔法においても知識の収集を怠らないフォロカルが見ても、ユーリの行った非常識な魔法は命懸けの戦闘でもないのに手にじっとりと汗が出るほどで、どうにか調整をして貰いたくなったのだ。


「…なんで?」

「何でって…」


 本気で意味がわかっていないのか、首を傾げたユーリは呪いの手紙をすっとフォロカルの目の前に差し出した。


「―――うっ!?」


 後ろで魔法使いの女性が濃密な魔力に当てられ口元を押さえ気絶し、それに続いて弟子の数人が意識を飛ばして倒れ込んだ。


「…ナニあれ、いきなり倒れるなんて病気なの?

 突然倒れるとか…やめてよね、俺の知らない病気で空気感染するようなのだったら、孤児院に罹患者が大量発生するじゃない!!

 どうしてくれるのさ、俺は余裕で平気だけどガキ共にもしもの事があったらお前責任取れるの!?」


 どことなく自分賛歌が混じりながらも孤児たちに配慮を向ける辺り、孤児院の孤児たちを大切にしているのだとフォロカルは察したが、抑えていた魔力を再び発言させて一身に受けるフォロカルは、原因であるユーリに対して何一つ言おうとはしない。


 否、出来ないのだ。


 ユーリの発する魔力に当てられて気を保つのに必死で、口を開けばそこから魔力が体内に侵入して駆け巡り、倒れてしまうのではないかと錯覚してしまうくらいに、彼は必死だった。


「いやユーリ、これはお前の仕業だから。

 お前の魔力に当てられて耐えられなくなって倒れただけだ」


 ここで呆れた声を出したのはアキラである。


 ユーリの放っている魔力は院長室全体に蔓延しており、その原因であるユーリの隣にいるアキラは漏れなく有効射程、それも最も身近な場にいるのだが、全身に魔力を纏う事でその悪影響を防いでいたのだ。


 その防御力はランク4に見合わないほどの高等技術であり、根本にある【勇者】という称号に有るとおり相応しい力である。


「んん…そうなの?

 ちょっとイラついていたから注意散漫になっていたのかな。

 っていうか、最初の予定(・・・・・)から大分ずれちゃったよ、どうしよっか?」

「…グダグダ過ぎるだろったく、見ていて恥ずかしかったわ。

 お前はもういいから魔力抑えて茶飲んで菓子食って昼寝でもしてろ。

 あとは俺がする」

「ハイハーイ、あとよろしくぅ!!」


 嘆息するアキラは任せて置けないとばかりにユーリに対して選手交代を命じた。


 それに対してユーリはむしろ願ったり叶ったりだったのか、手を叩いて魔力を押さえ込むとお茶請けのパウンドケーキと紅茶を行儀悪く食べるのだった。


 フォロカルはユーリとアキラの気安い関係に2人が形だけの主従であり、アキラの方がまだ常識であった事に安堵した。


「…フォロカル殿、現在我々王国は危機に…いえ、面倒事に巻き込まれています。

 ()第一王子アボリスと100を越える貴族の大規模叛乱。

 そして、それを裏で協力し王国にもその魔の手を伸ばそうとしているガスターク帝国軍。

 幸いこちらにはここにいるユーリや優秀な騎士団や軍団のおかげでどうにかなりますが、それでもやはり被害というものは少なからず出てしまうでしょう。

 そこで、ちょうど居合わせた貴方方に御助力を願いたい。

 ユーリや自分には劣るものの(・・・・・)、貴方の【剣聖】の名声と実力ならば、必ずや役に立つでしょう。

 無論、十分な報酬をお約束しますし、この内乱と戦争が終わり次第ユーリをギルド総本部に送り届けるのに国を挙げて協力いたします」


 フォロカルはユーリやアキラが自分よりも強者である事を察してはいた。


【剣聖】という二つ名が自分には過分だと思った事が幾度となくあった。


 そして、剣士としての勘が警鐘を鳴らしている。


 目の前の剣士―――アキラには打ち込む隙のない、遥か格上の剣士なのだと思い知ってしまったのだ。


 隣で菓子を頬張っているユーリに関しては隙だらけだが、打ち込もうと殺意を向けた瞬間に魔法以前に魔力だけで昏倒させられてしまうほどの格差があることも自覚した。


 この孤児院の院長室が魔窟なのだと自覚した時には全てが手遅れだったのだと、フォロカルは思うと嘆息してしまった。


「断った場合…どうなるのだ?」


 既に冒険者ギルド本部から依頼を受けているフォロカルとしては、これ以上面倒な依頼を受けたいとは思っておらず、かといって格上の相手からの命令に素直に従わない場合どんな目に遭わされるのか、内心では戦々恐々としていた。


 しかし、アキラはそんなフォロカルの思惑をよそにただ一言、『何も』と告げる。


「特にこれといった事は致しません。

 公的な立場としては貴方は冒険者ギルド最高位のランク9の冒険者。

 例え一国の王の依頼でも断ろうと思えば断れる貴方に対して何かしようものなら、方々から批判が来ますから。

 ですので、恐らくですがこのソラージュ王国も貴方に対してこの依頼を断られたとしても何もしません」


 高ランクの冒険者となれば、指名依頼をされる際にそれなりの地位の者たちからの依頼を受けるようになるだろう。


 だが、世界的に知られている冒険者ギルドの最高位、ランク9となれば例え一国の王といえどおいそれと機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。


 だからこそ、アキラはただ当たり前の事をフォロカルに告げる。


「そして…個人的な報復も一切予定していません。

 正直断られても元々の計画に支障がある訳でなし、ただ偶然貴方の様な最高位の冒険者が来たのでちょっと誘ってみた、それだけです」


 気の無いアキラの様子に、フォロカルはどうしたものかと考えた。


 それはつまり、当初ユーリの言っていた期間―――1年近くもの間ユーリを冒険者ギルド本部に連れて行く事が出来なくなるという意味に取ったフォロカルは顔を(しか)めたのだった。


 ユーリの方へとちらりと視線を向けるフォロカルだが、報復云々についてユーリが何の反応も見せなかったことから『優秀な駒は欲しいけどダメならそれでいっか』と考えているのだろう。


 暢気にパウンドケーキを片付けた後はどこから取り出したのか、生クリームと旬のフルーツでデコレートされたケーキを1ホール食べている途中であった。


 フォロカルの事を完全に忘れているかのように振舞っているあたり、ケーキに夢中なのだろうと思ったフォロカルはどうするかを思案した。


 このまま依頼を受けなかった場合、目の前にいるアキラは間違いなく先の言葉を実行するだろう。


 つまり、冒険者ギルド本部の呼び出しを無視し続け、更には1年近くもの間ソラージュ王国から出て行く事はない。


 フォロカルとしてはそれだけは阻止しなければならなかった。


 ギルド総本部がユーリを呼び出して行おうとしている依頼は、フォロカルにも直接ではないが関係している事なのだ。


 そして、1年後では間に合わない(・・・・・・)と分かっているからこそ、フォロカルはこの依頼を受ける事にした。


 観念した表情を見せたフォロカルは小さくため息をつくと、恨めしげな視線をアキラへと向ける。


 アキラはしてやったりといった表情をしていてフォロカルがこの依頼を絶対に受けるものだと確信しているかのようで、先程の気の無い様子は演技だったのだと気付くと余計にフォロカルの内心は荒んでいくのだった。


「…だが、条件がある」

「度を越していなければ、どうぞ仰ってください」

「俺と決闘をして欲しい」

「…ちなみに、誰とですか?」

「貴方だ、アキラ・ミドウ殿。

 …さすがに、ミツミネ卿とは勘弁してもらいたい。

 あれはもう規格外すぎて、たとえランク9全員が掛かった所で勝てるか怪しい存在だろう。

 人の形をした超常現象としか見えない」

「呼んだー?」

「呼んでないから、食べながら喋るな」


 フォロカルの混じり気無い本音にアキラは内心で同意した。


 人の形をした超常現象、という言葉に思わずなんて的をいた表現かと感心してしまったアキラは今度からユーリを内心で呼ぶ時は『超常現象』にする事を密かに決めた。


 そして呼んでもいないのに突然返事をしたユーリを会話から叩き出すと、数瞬考えを廻らせた後『分かりました』と肯いた。


「力量差は歴然ですが、最近実戦から遠退き始めていると思っていた所ですのでちょうどよかった。

 本気を出せるかは貴方次第ですが、よろしくお願いします」

「嫌味で聞こえるようでいて、真実だからため息以外つけられないなこれは。

 弟子たちが気絶していてよかった、こんな状況を見られたら、間違いなく噴火していただろう」


 遥か下のランクにいるアキラに大して既に力量差を見せ付けられていて、負けると分かっていてもなお決闘を挑んだフォロカルの思いをアキラは何となくだが察していた。


 理由は数あれど、最も正解に近いのは『自分よりも強い剣士と戦いたい』というものではないかと考えたのだ。


 フォロカルが【剣聖】と呼ばれて既に10年近く経過していて、呼ばれ始めた当初はフォロカルに匹敵する剣士は少ないが確かにいた。


 そして、その全てを打倒した時、フォロカルに待っていたのは『孤独』だった。


 剣士として頂点に立ってしまった彼と同様に、他のランク9の冒険者たちも似たようなものらしい。


 だが、依頼の場ではあったが好機(チャンス)が到来した。


 同じ剣士としての、自分よりも遥か高みにいる剣士と出会えたのだ。


 ユーリは違う、既に人としての枠を超えていて災害扱いされている。


 そんな彼に力量差を見せ付けられても、『災害だから当然』と思われるのだ。


 そして打って変わって、人の枠でフォロカルよりも高みにいるアキラに白羽の矢が立ったという訳である。


 含みがあり過ぎてなんとも言えない気持ちにさせられたアキラだったが、否定しようの無い事実にただ笑うしかない。


「明日の明朝に王宮へと来てください、王太子殿下に紹介がてら演習場で戦いましょう」

「了解した、万全の状態で挑ませてもらおう。

 …はは、不謹慎ではあるが、この巡り合わせを神に感謝したいくらいだ」


 そういい残すと、フォロカルは気絶した弟子やパーティーメンバーを強引に担ぐ。


 アキラは手伝うといって2人ほど両脇に抱えてユーリに簡単に伝えると院長室を出て行った。


「…やっぱアッキーは頼りになるねぇ、俺とは大違いだ。

 …なーんか、こういう交渉事ってダメなんだよな俺、いつもどこかで失敗してるし。

 まぁ嬉しい誤算もあった事だし、明日が楽しみ楽しみ」


 院長室に楽しそうな笑い声が響き、それに気付いたシドが恐る恐る院長室を覗くと楽しそうに鼻歌交じりに書類に筆を走らせているユーリを目撃し、嵐が過ぎ去るまで大人しく孤児たちの面倒を見ていようと決めたのだった。



読んで頂き、ありがとうございました。

感想やポイントなど、お待ちしています。

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