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第06話 真夜中の騒音は迷惑です

今回はちょっと暗くて面倒なお話です。

そして、試験的に次話から『スマートフォン投稿』なる物をしていこうと考えています。

タッチタイピング…?の速さがどうなのかは正直不明ですが、遅ければ連続投稿が途切れる可能性が出てくるやも知れません。

その場合、活動報告にこちらもスマートフォンでお知らせいたします。

それでは、どうぞ。

 





 俺は今回の依頼を通じて改めて実感したことがある。


 力を隠した状態で人に関わると苦労が増える、ということだ。


 確かに普段使っている闇魔法、影を操る魔法は非常に万能で大抵の事には対処出来る。


 水魔法による回復魔法も俺の魔力なら魔力任せと誤魔化して大怪我を負った者への救助も出来ていい。


 が、それは裏を返せばそれ以外出来ない『枷』を作り出してしまっているのと同義なのだと気付いたのは、俺のご主人様であるエルライドからの言葉だった。


『ユーリはそんな窮屈な設定(・・)でよかったの?

 いつか後悔するよ?』


 後悔してますとも、現在進行形で。


 影から影への転移というのは知られてはいるが緊急時とエルライド関連以外では使っていけないことが俺には義務付けられている。


 当然だ、この世界に影のない場所なんて存在しない、たとえ砂漠のような一見影のないと思える場所であっても高く積み上がっていたり、穴を掘ってしまえば影が出来てしまうのだ。


 つまり、俺は影があればどこにでもいけるような存在と見られているのだ、極々一部だが、そんな危険な魔法を操る俺を一時期排斥しようとしていた貴族団がいたりした。


 エルライドのおかげで事無きを得たが、あの時は本当に大変だった。


 まぁ怖いよな、その気になればいつでも暗殺(・・)出来る人間がいると分かれば、排除したくなるのも無理はない。


 たとえ何もしていない者でも、俺という存在が脅威に写るのはままある事だ。


 …話が逸れたな。


 現在俺が何をしているのかというと、久々の依頼を終え、人質も無事救出して帰ろうとしているところだ。


 徒歩で。


 もう一度、正確に言おう。


 人質を全員救出し、捕縛対象である盗賊団26人(・・・・・・)を引き摺って、徒歩で(・・・)帰っているところなのだ。


 呻き声なんて聞こえてこない、全員の口は塞いでいるからな。


 いやはや、こういう時に空間魔法とか風魔法が使えれば王都までひとっ飛びなんだが、冒頭の通り俺は力を隠しているためそれが出来ないのだ、忌々しいことこの上ない。


 まぁ、俺は盗賊団を引き摺っているだけで、人質は同じく捕まっていた獣人の女冒険者、エイーダ&エイーラが背負ってくれている。


 背負っている人質…といっても、奴隷4人だが、一週間ほど盗賊団に酷い目に遭わされていて、男の俺には近付きたくないそうだ。


 感謝の言葉は別に求めてもいなかったが、男だからという理由で殺意を向けないで欲しい、あんなゴミクズと同列に扱われるとか不愉快過ぎる。


 力持ちな獣人姉妹のおかげで事無きは得ている、とはいえ奴隷娘4人の体の安否もあるので少し急ぎで歩を進めているが、いかんせん陽は完全に落ちてこの世界特有の2つの月が夜を密やかに照らしている。


「……ようやく王都の外壁が見えてきたな。

 この距離と速度だとあと…30分ほどか、俺1人だったらとっくに孤児院に帰れていたのに」


「悪いねこんな事になって、まさかここまで遠い場所に盗賊のアジトがあるなんて思わなくてねぇ」


「す、すいませんミツミネ様!!」


 大して悪くも思っていない獣人姉妹の姉エイーダと申し訳なさそうにしている妹エイーラ、そしてぐったりしながらも相変わらず俺に対して恨みがましい殺意を向けてくる女奴隷たち。


 こいつらの恨みが俺に向くのは一時的な事を祈ろう、何しろつい最近までゴミクズに嬲られていたのだ、今は我慢だな。


 なんというか、不完全燃焼である。


 次の休みがいつか分からないが、なるべく早く取って、ハロルドさんには無理を言って魔獣殲滅系の依頼をやらせてもらうことにしよう。


 それから俺は獣人姉妹と話しながら王都に向かっていった。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




 徒歩で王都へ帰ってきてまずしたことは城門の開門許可である。


 当然だが王都という大都会に憧れて来訪する者は数多くいるが、それでも常時開門状態ではない。


 定時になると閉門して、事情がない限りはそれ以降次の日の陽が明けるまで開門する事はない。


 まぁ、今回は俺が名誉貴族であるという理由と犯罪者の引渡しということで何とか開門してもらった、門番の諸君ご苦労、迷惑をおかけしました。


 細々とした書類にサインして犯罪者、被害を出していたゴミクズ共―――盗賊団の引渡しと照会をした。


 かろうじて生き残っていた者たちからの供述から、かなりの精度で俺がとっ捕まえた盗賊団が依頼書にあった盗賊団であることが確認された。


 この間約1時間、もうすぐ日が変わる手前である。


 その後は全員を奴隷落ちにしたことを確認して、常駐している奴隷商人から全員の、26人分の代金を受け取った、その額金貨125枚。


 その殆どはやはり元ランク4の冒険者だ、犯罪奴隷としてもそれなりの需要があるからか、そこそこ高額なのだろう。


 そして次に略奪品の返還、これはまた後日になった。


 何しろ俺がこいつらから回収した略奪品はかなりの量で、1日では片付きそうにない。


 俺は門番とその責任者に略奪品の全てを渡し、くすねたりしたらどうなるのかという事を何度も何度も繰り返して説明した。


 これはもう恒例だ、何度かやったバカがいるから耳がタコになるくらい言っている。


 どうなるかって?


 そりゃあもちろん、社会的に酷い事になるのさ、当然だろ?


 そして最後に女奴隷たちの件だ、これは少し面倒なことになった。


「…なに、こいつらの持ち主って死んでるのかよ?」


「はっはい、その通りですミツミネ卿!!

 どうやら彼女たちの権利を有していた奴隷商人はあまり経営が芳しくなかったようでして…盗賊団が襲った際、会頭を初め主だった者たちは皆殺しに遭った次第です。

 持ち主である会頭には縁戚もおらず、現在彼女たちの権利は宙に浮いた状態でして…」


 若い門番、ステータスによると俺より2歳年上のヒューマンが困ったような顔をする。


 面倒な話が回ってきたな、そしてこの後の展開はなんとなくだが読めた。


 こいつ、俺にあの奴隷を引き取らせようとしてやがる。


 問題は生じない、うん、法律上あの女奴隷たちは『道具』である。


 前世と今世の感性から総合して、俺は奴隷を買いたくないし、所有したくない、何より関わりたくない。


 俺は物語の主人公じゃない、優しい言葉を掛ける優しさも持ち合わせていなければ、奴隷たちを手厚く保護して人並みの生活を与えて惚れた腫れたの関係になるのなんて期待していない。


 そういうのはそういうのが似合う奴がすればいい事だ、人が人を従えるのは間違っているとか、そういう正義感を持ち合わせた奴がすればいい。


 だが、俺はそんな優しさは持っていない。


 親が奴隷だった場合と違法奴隷を除いて、現在奴隷となっている者の殆どはちゃんとした理由があって奴隷になったのだ。


 借金や犯罪、そして戦争で捕まって落とされたなど大きく分けて3つある。


 最初俺はこの奴隷制度というものをどうにかして解消することが出来ないかと考えた事があった。


 が、調べていく内にその気は次第に失せていった。


 結局俺が出した結論はこうだった。


『この時代の人間に、奴隷という『資源』を失う事は社会規模の崩壊を意味している』というものだ。


 社会の一部として奴隷制度という存在が不可欠になったこの社会で、奴隷という存在を解消してしまえば、その後に起こるだろう混乱は世界規模に及ぶことが試算出来た。


 試算しただけで国が形を無くす、衛星都市が乱立し前世でいう所の『戦国時代』が到来するだろう。


 そこまで気付いた時、俺はこの奴隷制度について考えるのを止めた。


 俺には『現実』しか見えてこなかった。


 理想は素晴らしい、いつか誰かがその理想を体現し、奴隷のない社会を作り出せることを俺は断言できる。


 前世の世界でも裏社会は知らないが、表社会では奴隷という存在はなく、忌避されていた。


 だが、その精神が育まれるにはこの時代の人間では不可能だ。


 もっと先の、ずっと先の未来の誰かに丸投げすることに決めた。


 責任放棄じゃない、いくら俺に力があっても、出来ることと出来ない事の区別はついている。


 奴隷制度(これ)は力で解決することの出来ない問題だ。


 だから俺は今の社会を容認した。


 そしてなるべく健全で未来に良い形で残していける社会にしていく為に尽力しようと決めたのだ。


 だから俺は奴隷制度を認めはしたが、自らがそれを利用したいとは思わない。


 俺の主人でもあるエルライドもこの意見には頷くしかなかった。


 一部の人間が満足するだけで、結局のところ解決しないのだ。


 人を人で無くす『奴隷』という不健全でありながらそれがなくては生きていけない社会。


 だから俺は、俺たちは、奴隷という存在を持たなくてもやっていけるんだという『証明』が必要なのだ。


 だからこそ、俺は奴隷を持つことは出来ない。


 持ち主である奴隷商人が死んだ今、盗賊団から奪い返したあの女奴隷たちは俺の『戦利品』扱いなのだ。


 つまり、あの女奴隷たちを所有する権利が俺の目の前には提示されている。


 ようやく別れて家に…孤児院に帰って日誌を書いて夜食を軽くとって寝ようと思っていたのに、俺がこいつらを引き取ればそれはもう騒ぐ、騒ぎ出すに違いない。


 賭けてもいい、こいつらは俺が10歩圏内に入れば間違いなく悲鳴を上げる。


 俺がどれだけ女顔で見るものを魅了してやまない美少女顔でも、それはもう『嘆きの妖精(バンシー)』の如く騒がしくなるだろう。


 奴隷になった上盗賊団に酷い仕打ちを受けたのは同情する、運がなさ過ぎるなとも思う。


 が、俺にとってのメリットがまるで見当たらない。


 確かに人材不足で困っているが、奴隷を引き取っても孤児院のスタッフにするまでどれだけの費用と時間を掛けなければならない?


 先行投資をてもいいが、分が悪過ぎる賭けだ、ぶっちゃけ損しかしないと思う。


 俺は門番君(仮名)に先手を打って伝えることにした。


『奴隷はそちらで適切に処理してほしい、こちらは一切の権利を放棄する』と。


 門番や獣人姉妹は俺が引き取ると思っていたのか、俺の発言に驚いていた。


「あ、あんた、だったらこの子たちはどうするんだいっ!?

 あんたが引き取らなかったら、この子たちは生きていくことも出来ないんだよっ!?」


「み、ミツミネ様、この人たちを助けてあげないんですか?

 ミツミネ様なら、この人たちを養ってあげる事も出来るはずです。

 こ、孤児院の職員として迎え入れたら、お仕事がやりやすくなると、思うですけど…その、ダメなんでしょうか?」


 もっともらしい意見だ、普通の人間だったらこの獣人姉妹の言葉の方が正しいと思うだろう。


 権利が宙に浮いた奴隷は生きていけない、その通りだ。


 持ち主がいないということは、本来主人から施される食事といった生命活動に必要なものを手に入れることが出来ないし、奴隷だけで宿屋に泊まることも出来ない。


 つまり最終的にあの女奴隷たちは近い将来死ぬことになる。


 職員に、スタッフに迎え入れる件に関しては計画の支障に関わる、よって却下だ。


 それに人材の方に関しては既にアリカという悪魔がいる、能力の高さから見て優秀な逸材だ、人材については課題は解決している。


「ああそうだ、俺はあいつらを必要としていない。

 それに、奴隷を置いて孤児院のガキどもの教育上すこぶる悪い。

 置いておくだけでも面倒の種にしかならない。

 よってお前らの意見は却下だ、取り入れる要素が見当たらないな」


「だ、だったら、あんたはこの子たちが死んでもいいっていうのかいっ!?

 こんなに苦労してきたのに、助けた挙げ句いらないから捨てるだなんて、あんたそれでも―――っ!?」


「…そんなに言うのなら、お前が引き取ってくれよ」


「「はぁっ!?」」


 獣人という種族はとかく『情』に厚い、義理人情に溢れた種族だ。


 好ましくはあるが、この場合非常に面倒でしかない。


 言葉をいくら並べ立てても、こいつらは『感情』で判断する。


 どれだけ高尚な理屈でも、獣人たちにとって情があるかないか、それで決まってしまうのだ。


「…妥協案だ、一時的に俺がこの女奴隷たちの権利を有する。

 だが、その後すぐに転売する。

 転売先はお前達だ、1人銅貨1枚で売ってやる。

 その後そいつらを使用人みたいに扱うなり、解放するなりすればいい。

 こいつらはどうやら犯罪奴隷じゃなくて借金奴隷だったみたいだからな。

 だが俺がこいつらに金を貸したわけじゃない、だから別にタダでくれてやってもいいが、契約上タダは無理だ。

 ちょうどいい事に奴隷商人もいる、立会いは掛け合えば可能だろう。

 これでどうだ?」


 冒険者が奴隷を持つのは別におかしくない、むしろ常識的なものだ。


 女奴隷たちはエルフとヒューマンが2人ずつ、利用方法は身の回りの世話から冒険者の補助的な仕事など多岐に渡る。


 法の目を潜らない限りは、奴隷たちが悲惨な目に遭うことはない。


 加えて将来の持ち主は情に厚い獣人である、心配する事はないだろう。


 もう眠くてたまらない、奴隷の扱いでここまで事態がこんがらがるとは思ってもいなかった。


 さっさと片付けて孤児院に帰りたい。


 迷惑料だと思ってこの4人の奴隷を受け取ってくれれば話は終わると思うんだが、何故か獣人姉妹は首を縦に振らない。


「あんたが助けたんだから、最後まで面倒見るのが人情ってもんだろうっ!?」


「俺が欲してもいないのに、どうしてそんな事をしなきゃなねえんだよ、面倒くさい。

 第一こいつら俺のこと嫌ってるんだぞ、それだけでも面倒見るのも嫌だってのに…」


 人情だの言うのなら、お前らが引き取って世話すればいいのに。


 俺のことを何でも屋とでも勘違いしてるのか?


「……分かった、その話に乗るよ」


 エイーダは俺が一向に女奴隷たちを引き取らないのを諦めたのか、この話に乗ってきた。


 もう少しごねると思っていたんだが、意外だな。


「だけど、これはあたいらだけで済ませられる問題じゃない。

『力の盾』全員の問題になってくるからね」


「…それはそうだな、他の連中と話し合う必要はある訳か。

 が、そんなに長くは待たないぞ、1日しか待たないからな?」


 冒険者パーティー『力の盾』の問題というのは奴隷たち4人の値段ではなく、その後の処遇をどうするかというものだろう。


 さっき俺が言ったような使用人のように扱うか、それとも冒険者の仲間として扱うのか。


 それか、解放して自由にするのか、どれかだろう。


 俺は奴隷商人に4人を預けた、獣人姉妹と4人は嫌がったが、こいつの権利を今保有しているのは俺だ、扱いは俺が勝手にさせてもらう。


 第一今連れ帰ったとしても、間違いなく孤児院が騒がしくなる、ガキどもが起きちまうじゃねえかよ。


 奴隷商人には4人を金貨10枚で女のスタッフに担当させ丁重に扱わせることを約束し、獣人姉妹には後日俺のいる孤児院に来るように話をつけた。


 そしてようやく孤児院に帰ってこれた俺は起きていたクリミナに夜食は自分で作るからといって適当な野菜と肉を炒めてパンに載せて食べた。


 香辛料とソースを利かせた濃い味付けになっている、空調も換気しているから匂いに引き寄せられるガキもいない。


 事情を明日アッキーと側仕えに説明しなければと思い、ようやく俺はベットに潜り込んだ。


 依頼を完了したことをギルドに報告し忘れていたのに気付いたは次の日の朝のことだった。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




 短い睡眠時間だった所為か、若干の頭痛はあるものの起床した俺は朝一で会議を開いた。


 用件はもちろん昨日の依頼で起きた後処理の件だ。


 奴隷を一時的に4人保有することになってしまったと説明すると、案の定全員から鋭い視線を喰らった、まぁ言わんとすることは分かる。


 が、事情を説明すると分かってくれた、クリミナあたりは『依頼に関してはこちらで選んだものを受けた方がよいのでは』と過保護な意見が飛び出してきたが、遠慮した。


 こいつのことだ、ハロルドさんあたりと結託して面倒だけど後腐れのない依頼をマッチングしてくるだろう。


 ありがたいが自分の依頼くらい自分で決めたい、ていうか今回の面倒で盗賊討伐系に関しては事前の調査がはっきりしたものを選ぶことにした。


 ハロルドさんからもらった資料、奴隷の持ち主が死んでる事書いてなかったし、あれ書いた奴絶対許さん。


「ところでユーリ、もうすぐエルライド王子の誕生会があるが準備(・・)の方は出来てるのか?」


 エルライドの誕生会でする『出し物』の事か、出来てはいるな、一応だが。


 とはいえ、相手(・・)次第だからどうしようもない。


 アルベルトの情報によれば準備は順調との事だが、本当にうまくいくのかは不明だ。


 さてはて、第一王子様はどう張り切ってくれるのやら。


「…何か下が騒がしくないか?」


 外の気配、玄関あたりがどうも騒がしい気がするんだが、何かあったのだろうか?


『すいません院長、今よろしいですか?』


 するとちょうどよく会議室の扉がノックされた、ナイスタイミングである。


 会議中だが一段落している、問題はないだろう。


「いいぞ、入ってくれ」


 入ってきたのは年長組の纏め役のシドだった。


 何気にこいつの仕事量は多い、今度仕事の内訳を変えていかないとな。


 最近こいつは晴れてランク1の冒険者になったことだし、何かの祝いもしないといけないと思っていたところだし、ちょうどいいか。


「…で、どうしたシド、下で何があった?」


「……それが、知らない冒険者の女と、たぶん…奴隷、なのか、あと奴隷商人が来ていて…。

 院長に会わせろって来てるんです」


 要領を得ない報告に思わず俺を含めた全員が固まっていた。


 いや、単語をよく聞けば分からなくはないが、何故今なのかが分からなかった。


 奴隷の権利譲渡は予定だと明日の予定だった筈だ、どうして今奴隷商人たちがやってくる。


「ナニそれ、どういうことだ?」


「ユーリ、それよりも客を待たせるのはまずい。

 それと冒険者の女というのは俺たちも知らないぞ、何があった?」


 アッキーやクリミナも尋ねてくるが、俺が聞きたい。


 俺に()の冒険者の知り合いなんて片手の数もいない、加えていうとそいつらは現在この王都にはいない筈である。


 悲しい事に、俺には男の知人友人は増えても女の知人友人がこれでもかという位にいないのだ。


「分からん、今期の戦闘訓練の希望者に女はいるが今日は訓練の日じゃない。

 が、シドも訓練を受けているからその女の冒険者を知らないっていう事は、孤児院に用があってきたって事…のはずだ。

 とにかく会うしかないな、面倒だが」


 この会議が終わったらギルドに行こうと思っていたのに、何だってこう次から次へと。


 俺は会議室から出て玄関へと向かっていった。




読んで頂き、ありがとうございました。

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