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第05話 ストレス発散は物足りず、むしろますます…?

第5話です、久々の戦闘シーンです。

戦闘シーンです、戦闘シーンなんです、異議は認めます。


 



 ソラージュ王国の王都南部は進んでいくと少しばかり狭い街道に出る。


 鬱蒼としていて周りを見渡す事も出来ないほどの景観だ、間伐して少し見通しをよくした方がいい気がする。


 今後こういった連中がまた現れないとも限らないからな、目は光らせてはいるが、それでも絶対はない。


「環境破壊しないようにと…これも仕事の内だと思おう」


 俺は影を展開させて雑草、材木と出来る限り根まで取り除いてい空間に放り込んでいく。


 こと材木に関しては将来植物紙を作るにあたって材料になるかもしれないからな、ある程度確保しておかないと。


 ちなみに、植物たちにはきちんと了承はもらっている、主に伐っているのは古木中心だ。


 どうしても道の邪魔になりそうな若木があったりする時は渋々切っているが、それでも植物たちは悪く言ってこない。


 基本トレントみたいな魔獣…魔木を除いて、植物たちって温和というか…悪感情を持っていないんだよな、尊敬するわ。


 にしても浄化の魔道具か…アドルフは今大規模な計画の責任者しているからギルド行っても中々会えそうにないんだよなぁ。


 冒険者ギルドのギルドマスターは何度か会った事はあるけど、いつの間にかいなくなってるし…そういえばもう半年近く会っていない気がする、死んではいないと思うけどどこで何してるんだろうあの人。


 影を触手の様にウネウネと忙しなく働かせながら考えるが、いかんせんあのギルドマスターは掴み所がまったく分からないからな、考えても無駄だし諦めよう。


「……空間感知を広げても人型の反応がゴブリンやオークとかばっかりだな。

 ギルドの…ハロルドさんからもらった資料の情報だとつい最近だから、まだ潜伏していてもおかしくないんだけど…どうなってるんだ?」


 始めたばかりだし、すぐには見つからないかと思うことにした。


 別に今日は完全にオフだし、時間もまだじっくりある。


 そう思えば少しばかり魔力を減らした程度だし、問題ないだろ。


 周囲を見回してみても人っ子一人いない、となると俺の空間感知から離れているか、それとも感知し辛いような密度のある場所に潜伏しているのか、どちらかになるのかと思う。


「…となると、洞窟とかに潜伏しているのか?

 ここら周辺は山も近いし、飲み水の確保も出来そうな小川もある。

 …その気になればサバイバル出来るなこれ、ちょっと昔が懐かしいぞ」


 昔は俺も辺境の山で母さんと2人で暮らしていたなぁ…植物たちの監視がすごかったけど。


 まぁ()心の知れた連中だし、楽しい連中ではあったな。


 「…なぁ、ここらでガラの悪い連中とかが人を襲っているのを見たことないか?」


 仕方ないのでここは植物たちに聞くことにした。


 正直気は進まないが、今日中に終わらせないといけないからな。


『ガラの悪い?

 いたかしら?』


『人は大体似たようなものだからのぉ』


『騒がしい人ならこの道なりのちょっと奥を走っていった気がするね』


『そういえば最近私の窪みにサルの魔獣が果物詰め込んでくるのよ、どうにかしてくれないかしら?

 私の肌が爪の所為で荒れて困っちゃってるのよ』


『あら、それきっと果実酒でも作ろうとしているのよ。

 いい匂いがするし、ちょっとくらい傷ついてもいいじゃない』


『よくないわよ、治るのにどれだけ時間がかかると思うのよ!?』


 ……これである。


 悪感情はないが、こいつらは一度話しかけると珍しい話し相手が出来たと喜んで最初こそ話を聞いてくれるが、いつの間にか脱線するのだ。


 エルフの連中はこうした植物たちにどう対処しているのかというと、『なるべく失礼がないように聞きに徹する』とか『逆に一方的にこちらが要求して、必要な情報が得られたらお礼をしてすぐに立ち去る』の二択らしい。


 ちなみに俺は前者である……ていうか、いつもタイミングを逃して一方的にいつの間にか植物たちの『お願い』をされてしまうのだ。


 で、俺はというとそうしたお願いは基本叶えてやっている事にしている。


 昔辺境で植物たちの世話になったというのもあるが、基本こいつらのお願いなんて人の欲望に比べて遥かに可愛いもんだ。


 樹の幹が傷ついているのなら魔法で治してやり、最近元気がないというのなら土の状態を良くしてやる。


 果物を放り込まれて困っているというのなら原因のサルの魔獣を討伐して討伐証明以外を肥料にしてやり、最後に果物も報酬とばかりに回収すれば完了だ、殆ど腐っていたが。


『ありがとう小さな紳士さん、助かったわ』


『坊やは小さいのに強いのね、すごいわ』


『元気にしてくれてありがとう、助かったよ』


 と素直に感謝の言葉を返してくれるのだ、見返りが欲しかった訳じゃないがこうした言葉をくれただけで十分嬉しくなる。


 …やっぱ俺、誰かに使われてる方が気が楽だなぁ。


 などと考えていた俺は植物たちの情報を頼りに目的の場所へと向かった。


 日が傾きかけてきたが、まだ大丈夫だろう。





 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




「とか思っていた時間もありましたねぇっ!!」


 と日が落ちて視界も悪くなり始めた時間帯になっても標的である盗賊たちがいない事に苛立っているユーリである。


 植物たちが示した方向の周辺を空間感知の魔法をかけ続け、ようやくそれらしい場所を見つけたのである。


 かれこれ1時間以上歩いての到着である、植物たちの感覚が人間の感覚とまるで違うということを改めて知ったユーリなのであった。


「なにが『ちょっと奥』だ、めっちゃ遠いじゃん、あいつら…帰りに臭い肥料まいてやる!!」


 どこか違う報復を考えついたユーリだが、植物にとっての感覚を本当に知ったのか疑問が浮かぶような事を考えている。


 しかし、その歩みはなるべく茂みを避けて音を立てず、直進を続けていた。


「……あれか、見張りが…4人か、意外と多いな」


 罠も探してみるが空間感知でいくつかトラバサミと落とし穴が見つかりその場所を避けていく。


 茂みを挟んでもうすぐ目の前だというのに、見張りの4人はユーリに気付いていないようだった。


「…気配も読めないのか、こりゃ頭を除いて警戒する必要はなさそうだな」


 ユーリは捕縛対象の練度の無さに呆れ警戒すべきは盗賊たちの頭、元ランク4の冒険者1人だと推測した。


 目標を決めると、ユーリはすぐに臨戦態勢をとる。


 空間魔法、風魔法、そして闇魔法で全身を要塞以上の防御を固め、見張りの4人をまず狙いを定める。


「影よ、その身を縛り上げる荒縄となれ」


 手持ちに(ロープ)など準備せず身一つで来ていた為、万能な影を使って代用したユーリは詠唱と同時に4人の盗賊たちを捕縛した。


「な、なんだこりゃっ!?」


「く、黒いヒモっ!?」


 む、2人ほど声を上げたか、ちょっと目算を見誤ったな。


 視界が暗い為か目算が合い難くく、魔法で明かりを出す訳にもいかず2人ほど声を上げてしまったが、即座に塞いだユーリはほっと胸を撫で下ろした。


「さてと、ちょっと覗かせてもらうぜ?」


 ユーリは努めて明るく盗賊たちに声をかけ、闇魔法を使って4人からこの先にいるだろう盗賊たちの構成人数や実力、捕まっているはずの女性冒険者たちがどこに監禁されているのか、そして洞窟の内部構造を探った。


 4人分の記憶を読み取り正確に把握していく工程は間違い探しのようなもので、ユーリと同じく闇魔法で相手の記憶を弄らない限りまず間違い様が無く、作業は5分とかからずに終わった。


「……ふーん、こんなものか。

 人数はちょっと増えて26人、捕まえてエロエロな事をする為の女が…6人か、ああ、奴隷商人も襲ったのか、なるほどねー。

 意外と入り組んでるなこの洞窟、影狼使って足止めさせておくか。

 …なにお前、パーティー(・・・・)混ぜてもらえなかったんだ?

 てことは今頃酒盛りしながら乱交中とか?

 …さいっあく」


 視線を向けるのも嫌なのか、天を仰いだユーリははぁと溜息をつくと、苛立ちの原因である盗賊を一度だけ睨みつけた。


 盗賊というのは止むに止まれぬ事情があって堕ちてしまうというケースが少なからずある。


 一例をあげると、農作物が育たず食うに止まれずやってしまう元農民というものが最も多いケースではある。


 しかし、少なくともこの4人に関しては楽をして金を稼ぎたい、好き勝手に生きたいという欲求の趣くままに行動した結果がこれなのである。


 彼らは冒険者でいうところの落ちこぼれ(ドロップアウト)組、見習い期間であるランク0から上がる事も出来なかった冒険者未満のゴロツキだったのだ。


 戦闘能力はいうに及ばず、数の暴力でこれまで成功させた彼らに、個人の能力が高い訳も無く一瞬で拘束されてしまった。


「別に不殺を志している訳じゃないから、本当は殺してもいいんだけど…ここで殺したら犯罪奴隷になってからの苦行を味わえないというのも被害者に悪いしな。

 よし、俺のこのイライラはこいつらの二度と使わないブツ(・・)の去勢で落ち着かせるか」


「「「「―――っ!?」」」」


 生々しい肉が潰れる音が4人からして、鼻息を荒く白目を向いて気絶してしまっていたが、もはやユーリは見向きもしない。


 口を塞いでいる以上悲鳴を上げる事も出来なかった盗賊たちは仲間たちを呼ぶ事も出来ずに意識を落としたのだ。


 ひとまず4人ほど潰してはいるが、次の対象を探さなければならないのだから。


「まぁ、監禁場所…牢屋みたいなところもあるだろうし、そっちを先に探すか。

 影狼、出ろ」


 媒介物が大量にある以上ユーリの魔法は即座に発動し、自らの主の意思に沿った行動を始める。


 狼を形どった影が薄暗い洞窟へと一斉に突撃していった。


 10秒とかからずに、遠くから怒声と悲鳴が洞窟の奥から聞こえてきたが、ユーリとしては端正で可愛らしい表情に眉間の皺が寄ってしまっている。


「…ちっ、不快なコーラスあげやがる、影狼に盗賊たちの喉笛に噛み付けって言えばよかった。

 …いや、そんなことしたら犯罪奴隷が減って報酬が減っちまうな、となると我慢しないといけないのか…さいっあくだな、選ぶ依頼間違えたかも」


 歩を進めていくユーリの足取りは洞窟の奥へと行くほど、疲れてもいないのにどこか重々しくなっていったのだった。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




「いてえよぉ…」


「くそがぁっ、何なんだあの黒い犬はよぉっ!?」


「あし、俺のあしがぁ…」


 転がっている盗賊たちの泣き言を聞いて気分が良くなる俺って酷い奴なのだろうか、いや違う。


 反語法使ってまで否定してみたが、別に良かったな、どうでもいいや。


 どうせロクでもない盗賊相手だし。


 影狼には女以外を目標に両足と片手を噛み砕くように命じていた。


 利き手はさすがに判断がつかないだろうから、基本右手である。


 両足は人数がそこそこいるから逃亡防止のためだ、うっかり噛み千切っている奴が何人かいるが、まぁ一応俺水魔法で回復できるし全部終わったら応急処置まではしておこう。


 完全に治したら目つけられそうだしな、特にあのクソ教会関係者とか。


 さてと、通路を一箇所ずつ潰しながら進んでいて、ここは二箇所目だ。


 さっきの通路は盗賊たちの寝泊りしている場所だった、不潔でカビの臭いがきつくて吐き気がしたな、運動部の部室より不潔だぞきっと。


 空間魔法で内部構造を把握出来た、この先は少し広い場所があるようだ。


 通路には何人かが気絶して転がっていて、ずいぶんとここへ逃げ込んできている。


 人もそれなりにいるな…12人か、ここで盗賊の連中がはっちゃけているのか?


「―――っ!!

 ――――――っ!!」


「―――ろっ!!

 死にてぇのか!?」


 …どうやら違うらしいな。


 そういえばこの先にも影狼が向かっているからな、一致団結して逃げようとしているところを抜け駆けするバカでもいて、仲間割れでもしているのかもしれない、重畳である。


 薄暗く狭い通路から、だんだんと明るく広い空間について俺が見たのは―――、


「くそっ、おいっ、この牢屋に入れやがれ!!

 あの化け物に食い殺されちまうじゃねえかっ!!」


「はんっ、あんたみたいなクズを誰が助けるってんだいっ、寝言は寝ていいなっ!!

 どうやらその化け物はあたいらを襲ってこないみたいだし、ここで粘ればあんた達を挽き肉(・・・)にするまで持たせりゃこっちのもんだっ!!

 エイーラ、気張りなっ!!」


「うんっ、エイーダお姉ちゃんっ!!」


 牢屋と向かい合ってお互いを罵倒しあう盗賊たち、そして牢屋の中で傷だらけで必死に扉を開けさせまいとする、獣人の姉妹だった。


 牢屋の奥を見て見るとぐったりとしたヒューマンとエルフの女たちが座り込んでいる、おそらくあっちは奴隷のほうだろうな。


 どうやら牢屋へと逃げ込んで影狼からの襲撃を(しの)ごうとしたみたいだが、獣人の姉妹が牢屋の扉に入ろうとすると鋭い爪の一撃をお見舞いしようと待ち構えていた。


 傍から見るとちょっと滑稽、お互い命懸けだから笑っちゃ拙いんだが。


「…ずいぶんと元気だな。

 こりゃ助けなくても…いや、まぁいいか別に」


 重要なのは盗賊たち全員の確保であって、最優先(・・・)って訳じゃないからな。


 一応体面としては人質を助けなきゃならんだけで、生死は別に気にしても無かったし。


 まぁ、生きていてくれて良かった、この後の面倒が減ったはずである、たぶん。


「だ、だれだてめぇっ!!

 ここが誰の根城かわかってんのか、ああっ!?」


「状況判断の出来ない残念な思考、本当に元ランク4の冒険者かよこれ。

 ギルドの評価基準甘すぎ、せいぜいランク2だな」


「んだとぉこのガキっ!?」


 バカにすると即座に反応するあたり、どうやら頭に血が上りやすいタイプらしい、本当に残念な奴だ。


 こいつがたぶん盗賊たちの頭か…そこそこ良い装備はしてるが整備がなってないな、減点。


 加えて顔立ちも悪い、いかにも悪いことしてますよみたいなブサイク顔しやがって、これも減点だ。


 まぁ相手は俺の影狼の攻撃を必死で避けてるから加えて頭も巡らせるのは大変なんだろう、知ったことじゃないが、元ランク4の冒険者ならこれくらいやってくれないと張り合いが無い、減点だ。


 以上三点で赤点決定、落第…じゃなくて、捕縛だ。


「あ、あんた、その格好、まさか…」


 俺の仕事着、黒子の衣装に見覚えがあるのか、獣人姉妹の片方(おそらく姉)が反応した。


「ふふん、この俺の衣装を知っているということは、事情は大体把握したか?」


 ちなみにこの衣装、つい最近材質をアラクネとかいうクモの魔獣の糸を使ったのに一新した。


 以前と変わらず防水性の評価も高い上に物理的な防御力も高い。


 そして若干だが魔法防御もある、繊維を黒く染めれば俺の新たな仕事着(コスチューム)となったのだ。


「あ、ああっ、ありがたいねこれはっ!!


 エイーラ、絶対にここは死守するんだよ、もう安心だからねっ!!」


「えっ、う、うん、わかったっ!!」


 妹らしき獣人はイマイチ分かっていない様だが、姉らしき獣人の反応を見るからに大丈夫だろう。


「んじゃとりあえず投降でも呼びかけるか。

 手間が省けれりゃめっけもんってことで。

 ―――ごきげんようクズども、俺の名前はユーリ。

 巷じゃ『黒き狂戦士(ミニマムバーサーカー)』なんて物騒な名前で呼ばれてる、眉目秀麗、才色兼備、一騎当千な冒険者様だ。

 命だけは助けてやるから、投降しろ。

 さもなきゃそこらへんに転がってるゴミクズどもよりも酷い目に遭わせてやる。

 10秒やる、さっさと決めろ」


 こうした連中の場合、投降する奴と反撃するバカの二種類の人間が出てくる。


 弱い奴はまあすぐに投降するが、なまじ相手の力量を理解出来ないバカは―――、


「はっ、お前があのユーリだとっ!?

 まだガキじゃねえかっ、こんなヒョロイ奴が俺よりも上なもんかよ、ブッ殺してやる!!」


 影狼の包囲を無理やり突破して、男が一直線に俺へと向かってくる。


 残念極まる元冒険者のこいつは俺を倒して活路を見出したかったんだろうが、自分から火中に飛び込んでくるとは。


「―――ホンと、さいっあくだな」


 俺は無詠唱で影を洞窟の周りにあったトラバサミと同じような罠を作り、男の進路上に配置した。


 一定の明るさを保っているが、蝋燭は揺らめいていて影を作っている、実に好都合だ。


 そしてトラバサミの構造上、踏み抜いてしまえば―――、


「―――ぎゃああああっ!?」


「お、おかしらっ!?」


 まぁ、『パックンチョ(・・・・・・)』と足を食い千切る寸前まで相手を追い詰めるのだ、実に凶悪、スバラシイ、パーフェクトだな。


 さらに言えば俺の魔法で作った影だ、名刀並みの切れ味である。


 無様に転んだ男の後方には、長年一緒に歩いてきた片方(・・)が置いてあった。


 しまった、あれじゃ出血多量で死んじまうじゃねえかよ、面倒くさいなぁ。


 …面倒だし、あとでいいか。


「ったく弱いな、これで元ランク4かよ。

 弱すぎる、減点だな。

 ……にしても、歩き回るわ植物たちのパシリになるわ助けに来た人質は何故か元気だわ、極めつけは敵が弱すぎるだとっ!?

 なんだこれはっ、舐めてんのか、ああっ!?

 せっかく日頃の鬱憤を晴らそうと依頼受けてみてこれとか、今日の運勢さいっあくだよちくしょうっ!!

 俺の休日返しやがれ!!」


 本当にありえない、なんだこの煮え切らないオチは。


 こんなことならゴブリンの巣を殲滅するとかの方がまだ気分が爽快になったはずだ。


 低ランクの冒険者には悪いが、今日だけゴブリンの巣殲滅の依頼を代わってほしい位イラつくぞ。


 …が、溜まっていた苛立ちを吐き出して見ると少し気分が良くなった気がする、たぶん。


 仕方ない、人質にも俺の魔力で編み出した威圧を長時間浴びせると精神的に悪いからな。


「……溜飲も少し下がったし、もう投降の呼びかけとか面倒だし止めだ止め。

 影狼、やれ」


「なっ、そんなっ!?」


「俺たち、抵抗なんてするきっ!?」


「ぎゃああああっ!!」


 俺の命令と同時に、影狼が残りの盗賊に襲いかかる。


 バカが、投降の呼びかけとか俺の気分一つで変わるに決まってるだろうが。


 俺はさっさと帰りたいんだよ、投降の呼びかけとかいう面倒な手間なんて止めだ。


 悪党はことごとく潰す、生きていれば泣き言と負け惜しみと恨み言を聞いてやればいい、聞いてやるかどうかはやはり俺の気分次第だがな。


「……さてと、片付いたか。

 他のフロアも終わったみたいだし、全員ひっ捕らえるとするか。

 …そうだ」


 俺は牢屋へと近付くと、鍵を盗賊の汚い懐から取り出すのも面倒なので扉ごと破壊した。


 身体強化で強引に引き千切ったから実に楽なもんだ、物を壊すとストレス発散になるというのはやはり一種の真理だな、また少し気分が楽になった気がするぞ?


「ほら、扉は開けてやったから奥の女たちを連れて洞窟から出てろ。

 俺はこのゴミどもを全員日捕らえてから出る」


「なっ、あんた、こいつらを生かしておくつもりかいっ!?」


 獣人の姉…もうこいつが姉だろう、エイーダとかいうネコ耳の獣人は酷く憤っていた、いや、憤っている。


 まぁ、気持ちはなんとなく察せ無くは無い、自分たちを慰み物にした…しようとした相手を生かしておきたくないのだろう。


「ああ、こいつらは犯罪奴隷にして然るべき場所に売り飛ばして金にする。

 俺の今回の収入は盗賊団の討伐とこいつらを売り飛ばした分だけだ。

 こいつらが略奪した物資に関してはなるべく持ち主に返還する予定だが、もし見つからなかったら国庫に収める予定だな」


 人気取りとはいえそこそこ稼いでいそうな盗賊団の略奪品を回収出来ないのは少々割に合わない気もするが、これも将来エルライドの治世の役に立つ、と思えば不満も押さえつけられる。


「…本当だったんだね、あの噂は。

 黒き狂戦士(ミニマムバーサーカー)が盗賊から奪った物資を持ち主に返してるってのは」


 どうやらエイーダは俺のやっている事を知っているようだ、俺とエルライドの地道な宣伝は効を奏しているようだな。


「まぁ、お前らがこのゴミクズどもに報復したいというのなら止めないがな。

 その代わり殺すな、去勢するとかそこそこ削るとかにしてくれ。

 犯罪奴隷とはいえ、四肢欠損だと買取の値が下がる」


「…まぁ、今回の依頼はあたいらの落ち度で、あんたがいなかったらどうする事も出来なかっただろうしね。

 命があっただけで良かったとするよ」


「あ、あのっ、助けてくれてありがとうございましたっ!!」


 姉のエイーダは渋々納得して、妹の…エイーラからの感謝の言葉を受け、俺は盗賊団―――ゴミクズどもの回収を始めた。


 にしても…、


「―――ああ、くそっ。

 しまったな、この人数だと馬車が必要だったか。

 ……仕方ない、引き摺って帰るしかないな」


 手ぶらで来るのは失敗だったな、どこまでも締まらないオチである。


 こうして、俺の久々の冒険者業は一旦幕を閉じた。





読んで頂き、ありがとうございました。

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