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第32話 勇者って本当にいたんだな

遅れてしまい申し訳ありません。

既にストックが切れてしまっていまして、現在進行形でタイプ中でした。

そしてお知らせです。

新年になったので投稿ラッシュはこれから大幅に失速します。

予告にしても、大まかな時間帯でしかお知らせは出来ませんので、あしからずです。

予定では、正月休みまで別作品と含めて投稿は出来ないかもです。

それでは、本話をよろしくお願いいたします。

 




 新しい家を買って悠々自適に暮らしています、ハーフエルフでチートなユーリです。


 元貴族の別宅を格安で買った、借金をした貴族だったので即決で金貨が必要だったらしい、貴族も借金には勝てないのか。


 ちなみに値段は金貨600枚だった、中古ではこれ位が相場のようだ。


 部屋数が多いから、エルライドが何度かお忍びで泊まりに来ている、お泊り会っていうほどじゃないが、夕食と朝食を一緒にする事が多くなった。


 クリミナ達はエルミナ神樹国でのそば使えとしての癖が抜け切らないのか毎日俺の部屋に起こしに来て服を着替えさせようとするが、男に脱がされる趣味はないので来る前には起きて着替えていた。


 あと、最近はようやくクリミナ達の顔と名前が一致するようになった。


 一番の年長で特に綺麗な顔立ちをしているのがクリミナ、母さんの時と同じ筆頭側仕えだ。


 身長が高く非常時には母さんの護衛をしていた温和な顔のエルロイ。


 俺と一緒に料理していたフラム、余計な事を良く言うバカだ。


 クリュシナ、ゼハースは主に秘書をして母さんの神殿運営の補佐をしていた双子だ、見分けが付かない位似ているから右腕と左腕にそれぞれ腕輪をつけて貰っている。


 俺にはもったいないくらいの優秀な側仕えだ。


 そんな優秀な側仕えには正当な対価が必要だと思って金貨を渡そうと思ったんだが、頑として受け取ってくれなかった。


 説得してみたが納得してもらえなかったので、共同資金兼生活費の為に家に入れる事にした。


 現在金貨が97枚ほど貯まっている、金貨3枚しか使ってくれない。


 もっと使って欲しいんだが…節約上手な事で、困ってる。


 新しい服装とかを用意した時に投資と評して色々と金を使ったんだが、それ以来金貨を使う機会がない。


 盗賊狩りをしていたから資金はかなり貯まったんだから、もっと使って欲しいんだがな、金は天下の回り物って言うし。


 1週間後、順調な冒険者生活をしていた俺は護衛の日でも無いのにエルライドに呼び出された。


 いや、呼ばれもしないのにこっそり護衛はしていたりする。


 別に暇だからしていた訳じゃない、隻眼の奴がちゃんとエルライドを護衛しているか確かめに来ていただけで、他意はないんだ。


「―――勇者が来るんだって、会ってく?」


 …エルライド、ちゃんと一から話してくれるとありがたいんだがな。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




 アマリア教国から勇者ご一行様が来るらしい。


 しかも明日。


 エルミナ神樹国に用があるらしく、補給に立ち寄らせてもらうとのことだ。


 その際に各国の王に今代の『勇者アキラ』をお披露目するという。


 …アキラねぇ、前世の俺の友人もアキラって名前だったけど前世じゃよくある名前の一つだったし、俺のアオイっていう名前もそこそこ使われていた筈だ。


 ちなみに俺はアキラの事を『アッキー』と呼んでいた、嫌がっていたが。


 あだ名を呼ぶ事で親密度…いわゆる親友という存在になれないかと色々と試行錯誤していたが、そのお陰かどうかは知らないが、10年近くの交友関係を続ける事が出来た。


『俺ってお前の親友なのか』的な事は聞いていない、恥ずかしい以前に痛い奴と思われたくないからな。


 人間関係って難しいな、現在進行形で困ってるし。


「…んー、俺パス。

 王子様が会うって言うなら止めないけど陰で護衛しとくわ」


 面と向かって会わない限り暴走はしないだろうと俺はいつも通りエルライドの影から護衛をする事を伝えた。


 謁見の間で魔王と勇者が戦うって…ナニそのクライマックス、どっちか死んじゃうじゃないですかヤダー。


 ていうか、自惚れじゃないが油断しなかったら多分俺勇者殺せるぞ?


 だって殆どの魔法適性が100な上に使える魔法も50以上、しかも魔力は前の『覚醒』の所為か魔力の増加が著しく上昇中だ、プラズマとか10発は撃てるし生きた天災だなもう、笑えないぞ。


「そうかい、じゃあいつも通りという事にしよう。

 僕は別に勇者なんかに興味は無い…とも言えなくもないね。

 ユーリの対極にいる存在っていうだけでも十分興味の対象になりえるし、もしいつかこのソラージュ王国とアマリア教国が戦争になった時、確実に勇者が出張ってくるからね。

 戦闘能力をユーリには測ってもらわないとね」


「今から暗殺して来いっていうならしてくるぜ?

 不安分子は芽吹く前に潰しておいた方がいいんじゃねえの?」


「だから、殺さないって。

 そういうのは最後の最後、どうしても戦争が避けられなくなったら戦争が起きる前にユーリに暗殺してもらう事にするよ。

 勇者1人の犠牲で教国の救世主になってもらうからさ」


 もしもの時のシナリオは出来ているらしい、頼もしいなおい。


 まぁエルライドは大丈夫だろう、自信満々で可愛い顔しやがって、ほっぺ引っ張って遊びたいです。


「そういえばさ、あのアマリア教国ってどういう国なんだ?

 通貨の発行を一手に引き受けていて政治的、経済的にも大国並みの発言力と資金力とか、国土の大きさと考えてもありえなくないか?」


 アマリア教国の国土はソラージュ王国の3分の1も無い位に小さい国だ。


 前世でもそうだったが、何で宗教国家って国土が小さいんだ?


「あの国は聖地と定めている聖都パラディン以外土地も持たず、他の国を侵さないっていう教義があるからかな。

 国教という強みもあるし、正直国土は小さいけど世界最強の国家だよ。

 ユーリが戦ったっていう神殿騎士って言うのも強かったんだろうけど、あの国の『聖騎士』って言うのも相当強いよ。

 毎年ドラゴンを狩ってその素材を使った武具を持っているんだ。

 オリハルコン製とまではいかないけど、全ての聖騎士の装備は相当なものだね」


 ……各国の発言力があって経済面でも強くて何より強い軍隊がある。


 しかも他国を侵略した事なんて無いらしく、清廉潔白(一部を除く)な国家であるらしい、胡散臭い国もあったもんだ。


 国家元首は法王、そして聖女と呼ばれる存在の2人のトップからなる組織のようで、勇者は聖女の側にいるらしい。


 その聖女なんだが…今回の遠征でも勇者アキラと一緒に来ているらしい。


 …聖女ねぇ、どれ程の奴かしらないけど俺達の邪魔をしなければ別にいい。


 アマリア教国の連中にも興味はないし、ハーフという存在を否定するふざけた連中だが敵対するつもりはない。


 宗教アレルギーな俺はそういう連中と会いたくないんだよ、碌でもない事にしかならないからな。


「……ちなみに王子様、俺とその聖騎士が戦った場合、どっちが勝つと思う?」


「間違いなくユーリだろうね。

 けど、勇者という不確定要素がある以上、楽観視は出来ないかな」


「さいですか…まぁ、別にいいけどー」


 何だよ、俺は楽勝って思ってるのに、エルライドは俺が負けるなんて事考えているのかよ。


 俺だって本気になって真面目にやれば勇者程度さっくりざっくりばっちり殺せてみせるっつーの!!


「…何ユーリ拗ねてるの?」


「拗ねてねーし!!

 勇者とか聖女とか法王とか揃いも揃って俺の敵じゃないっての!!

 …なんだよ、笑うなよ、撫でるなって、髪が乱れるだろう!!」


 俺の事を懐かないペットと勘違いしてるんですか王子様、噛み付くぞコンニャロ。


「あはは、ユーリは可愛いねホント。

 そんな可愛げがあの無能な兄上にあれば少しは手心を加えても良かったんだけどなー」


 そんな風に笑うエルライドだが、どこか元気がないようだ。


 多分原因は第一王子であるアボリスだろう。


 下僕悪魔(アルベルト)からの情報だと最近あの無能王子は良からぬ事を計画しているらしい。


 何かは不明だ、まだ側近レベルになれていないあの下僕にはまだまだそれを知る術が無いという事らしい。


 正直闇魔法で根こそぎ記憶を奪って廃人にでもすれば一件落着…となれば話は楽に済むんだが、あの王子様には誘蛾灯(ゆうがとう)になってクズ貴族を集めてもらわないといけないからな。


 まだ時期じゃないし、泳がせるしかないらしい。


 邪魔をするしか現状対処の仕様がない。


「…なぁ王子様、そんなに溜め込むなよ?」


 俺はエルライドの頭を軽く撫でた。


 …フワフワな髪してるな、さすが俺のシャンプー&コンディショナーだ、フケも溜まっていないし良い香りがする。


 …そういえば、エルライドが使っているシャンプー諸々は俺も使ってるんだよな?


 ボディーシャンプーも同じなんだが…どうして俺とエルライドで差が出るんだ?


 …っと、まずった、おかしな方向に行ってる。


 ステータスは見えないが、こいつは男、男の子なんです。


 クリミナ達とはまた違った美形で、男ではあるが観賞用、目の保養なんです。


 俺はノーマル、ノットアブノーマルです。


「俺はかなり我が儘な奴だからそこまで国に対して大きな重責背負い込むとかしてないから理解してやれないけどさ、疲れた時は休憩したり気分転換したり、とにかく余裕を作ったりして溜め込まないようにしろよ?

 そうでないと、いつか心が病んじまうからな」


「………」


 1人で全部背負い込むのは辛いし疲れるしとにかく気分が沈むからな。


 前世の俺もそれが原因でウツになったし、しかもエルライドは時期国王、俺みたいな木っ端とは背負い込んでいるスケールが違うんだ。


 いくらたまに俺の家に来てお泊りしているからって、それだけでストレスが解消されている訳ないからな。


 きっと寝るのも辛いような事も、震えが止らなくなるような事もたくさん経験してきたんだと思う。


「俺ならいつでも呼んでも良いからな?

 あ、いや、出来れば仕事中以外で呼んでくれると助かる、時間外対応は一応だが受け付けるから」


「……ふふ、ははっ」


 エルライドが目を点にして俺のを見ていたが、何かおかしかったのか突然笑い出した。


 いや、楽しそうなんで別に構わないんだが、何か面白いことあったのか?


 むしろ可愛い笑顔が見れてこっちはありがとうございますと言いたいところなんだがな。


「いや…うん、そうだね、ユーリはそういう子だよね。

 ふふ、あは、あははははっ!!

 ホント、ユーリって優しいね、僕感動しちゃった」


 ……何でそうなった?


 今度は俺が頭を撫で回された、もう完全にペット扱いである、解せぬ。


 いや、元気になれたようで結構なんだが、何だ、こう…釈然としないんだが。


「いいんだよ、ユーリはそれで。

 あーもう、ユーリが可愛くて僕は今日も元気です」


「ちょっと待て、俺のどこが可愛いんだよ、むしろ自分を鏡で見てみろよ、可愛いお顔と対面出来るぜ?」


「はいはい、今はユーリが可愛いっていう話をしているんです。

 僕が可愛いとかいう話はしてませーん」


 一方的に撫でられている、別にくすぐったくないからいいんだが、何がツボに入ったのか、エルライドがずっと笑っている。


「失礼します、王子、そろそろファヴィー侯爵との会食で…何をやってるんだ?」


「さあ?」


 隻眼が戻ってきた、そういえばこいついなかったなそういえば。


 調整したオリハルコン製の武具を装備した隻眼は俺とエルライドの不思議空間に目が点になっていた、実際俺もよく分からんのだ。


 勇者が来るという日もそうだが、エルライドにはアボリスという政敵に備えなくちゃならん。


 それまで無病息災、健康第一の生活を送ってもらえるよう、俺も誠心誠意努力していこうと思う。





読んで頂き、ありがとうございました。

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