閑話 側仕えがいつの間にか増えていました(何で?)
本作を読んで頂きありがとうゴザイマス。
HAPPY NEW YEAR!! です。
次は12時投稿となります。
「ユーリ様、もうすぐ王都に到着します」
ユーリ様、と呼ばれたが俺は返事をしない。
無視している。
無視というのはイジメの範疇に入ると思う、正直俺もしていていい気はしない。
後できちんとした対応はする気だが、今は俺だって落ち着きたいからあえてしているんだ、俺はイジメをして悦べる性質の人間…いや、ハーフエルフじゃないからな。
右目の調子がすこぶる悪いし背中や腹が痛いから頭の回点が良くないが、それが理由で無視している訳じゃないからな?
目を覚ましてから5日ほど経ったが、目の前にいる4人のエルフ―――御者をしているのを含め5人だ―――確か使者のクリミナ達だったか、俺の側仕えになると言ってきた時は意味が分からなかった。
だが、目を覚ました俺の近くに置いてあった手紙を読んだ時、俺の疑問は氷解した。
まさか、母さんが俺の身体を使って全部解決していてくれたとは、予想外だったが。
手紙の内容はどうやってあの神殿騎士たちを殲滅してどう解決したのか。
契約の魔法を使って、エルミナ神樹国と相互不干渉を取り決めた事により、俺はもうあの国に関わる事は出来なくなった。
何から何まで、最後は母さんにやってもらったのだが、なんというか、死んでも頭が上がらないな。
とはいえ、少々面倒事も回ってきたが。
エルフの5人…クリミナ、エルロイ、フラム、クリュシナ、ゼハース、母さんの元側仕えを今度は俺の側仕えにするように書かれていた。
…貴族じゃあるまいし、側仕えなんて置いて面倒に巻き込まれたらどうするんだよ、ただでさえ目立とうとせずにひっそりとエルライド達に協力すればよかったはずなのに、こんなことになって。
下僕悪魔は別に使い捨てにしてもいいけど…いや、あれも結構有用だ、情報はしっかりと送られてきているし、あのクソシャークスの顔じゃなかったらもうしばらくは置いてもいい。
が、こいつらとなると話は別だ。
元とはいえ、母さんの側仕え。
ということは、母さんがあの国を去るまでずっと側にいてくれた存在で、世話をしてきてくれた奴らだという事だ…その筈だ。
正直気に入らないが、恩人であるのは確かだ。
あの国にいくまでは正直面倒だったから鍛えただけだし、そこまで気に留めていた訳じゃないからな。
どうでもいい連中を側に置いておいても、メリットも無いから側使えなんていらないんだがなぁ。
「…ちょっと質問してもいいか?」
俺が無視し続けていたから馬車の中が暗かったというのもあってか、少し離れた場所で黙って座っているクリミナたちが一斉に俺の方に目を向けた。
俺の様子が変わった事に気付いたのか、クリミナが御者をしていたゼハースに一旦馬車を止めさせて5人揃ってから俺の前に跪いた。
「はいユーリ様、どんな質問でしょうか?
私共で答えられる質問だといいのですが」
数日振りにまともな会話をした成果、少しクリミナの表情が優れないが、俺の所為だろうな、正直悪い事をしたと思ってる。
「いや、難しい事を聞く訳じゃないから。
むしろ感情に任せて答えてくれた方がありがたいというか…」
いくら母さんの願いといっても、クリミナたちが嫌なら無理をしてまで俺の側にいる必要は無い。
もし俺に仕えるのが嫌なら母さんが世話になったという事だし、次の就職先を紹介するまでの事はしてやらないとな。
「俺みたいな危険人物に、本当に仕えたいのか?
俺の母さんの所為で国に居辛くなったっていうんなら、エルライド王子に頼んでどこか立派なお屋敷で誰かの側仕えでもすれば…」
「―――お断り申し上げます」
言い終えない内に、クリミナたちからはっきりとした拒絶が返ってきた。
「私共は自らの意思と感情でユーリ様にお仕えしたいと決めたのです。
感情的な答えとしては…ユーリ様が私共を受け入れて頂けるのかがむしろ不安なところでして。
お側に置いて頂けても、まるでいないように扱われるのは私共としましても心にくるものがあります」
側仕えにしたとしても、ここ数日のような無視し続けるとさすがにこいつらも凹むっていう訳か……なんか、すいません。
けど、側仕えにしても俺別に側仕えいらないし…ていうか、側仕えってどういう仕事をするんだ?
「もう一つ質問。
俺の側仕えっていうが、基本的にどういう事をするんだ?」
「日頃の生活のお世話をさせていただいています。
特にカリュラリシア様…いえ、カルラ様の頃は起床から服の着替え、湯浴み、就寝までの生活全てをお世話させて頂いていました。
他にも実務…ですね、カルラ様は神殿と呼ばれる施設の神殿長をしていて、その補佐もさせて頂いていました」
…まぁ、秘書と介護師が一緒になった仕事と考えればいいのか?
ていうか母さんって本当に何もしてこなかったんだな、箱入り娘とはまさに母さんの事を指して言うんだろう、裁縫の腕前が一向に上がらなかったのも普段から練習していなかったからか。
まぁ、俺は別に母さんの異次元級の腕前でも気にはしなかったがな、父さんも最終的には着ていたし。
とはいえ、介護的な仕事はいらないが秘書的な仕事なら使えるかもしれないな。
面倒な記録や日程の管理を一括してもらえば、少しは使えるかも?
あとは…まぁ、母さんの昔話とか聞いてみたいな、日記だけ読んでも面白くはあったが、生で見ていたクリミナ達からも話を聞いてみたい。
…となると、いつまでも宿暮らしはまずいということか。
家を買うか…まぁ、掃除はクリミナ達に任せればいいんだし、別に俺はこいつらの主…主になるんだし、給料も払わないといけないんだよな。
幾ら払えばいいんだろう?
前世だと介護師とか秘書は結構な給料出されていたし、日給金貨1枚くらい出せばいいか?
…知ってるとは思うが、経営者が最も負担しているコストって雇用関係の費用が一番なんだぜ?
食わせる為に俺が働かなくてはいけないとは…まぁ、今のところ金もあるし、エルライドからは定期的なお給料も貰えているからそこまで貧窮はしていないけどな。
……その内盗賊狩りでもして稼ぐかな、帰ったら冒険者ギルドにいって早速探してみよう。
ハロルドさんにもお土産あるし、エルライドと隻眼、それにアドルフにも色々渡さないとな。
…それにしても、魔法を切り裂いたり阻害したりするオリハルコン製の武具がどうやったら異次元バックに入るのか、未だに分からん。
母さんの…いや、初代魔王の作った成果の一つだし、きっと異次元バックに入れても大丈夫な方法があるんだろう。
殲滅した神殿騎士から大量に奪っているみたいだし、少し位減っても問題ないか。
戦利品だし、戦力強化に使わせてもらおう。
……とはいえ、俺が入れても多分異次元バックが壊れる可能性が高いから、オリハルコン製の武具は一度出したら戻す事は当分出来ないな。
早くその辺りの記憶も思い出せればいいんだが…まぁ、壊れた初代魔王の記憶を無理して思い出しても仕方ないし、気長に待つしかないか。
俺の怪我も、時間をかけて治療すれば見えるようになるし、こちらも気長にするしかない。
それに、ステータスもまた増えた、何だよこれ。
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名前:ユーリ
種族:ハーフエルフ
称号
受け継ぎし者
秘術継承者
灰銀の魔王
白金の魔王 *Lost
万象の賢者
性別:男
年齢:11
魔法適正値
火:100
地:100
水:100
風:100
無:100
樹:100
闇:100
光:80
空間:100
精霊:100
―――――――――――――――――――――
………俺はどこまで化け物になればいいんだろうな、称号増えるわ新しく魔法も使える様になるわ適正値わで、俺のチート振りがとどまる所を知らないんだが。
まぁ、ここまで強くなったのは母さんが原因、いや、手紙に書いてあった『覚醒』という俺の秘術が原因なんだろうな。
元々この秘術は『初代魔王』と呼ばれたバアルという研究者専用の秘術だったらしく、たとえ死んでもこの秘術継承者の中でも相性のいい、適正のある者の危機が訪れたら自動的に発動する時限爆弾のようなものだったらしい。
つまり、この『覚醒』が起きると、初代魔王が復活するという事だったんだが、どうもバアルにも誤算があったようだ。
バアルが死んでから、既に何千年も経っていて、バアルの自我、あるいは魂が中途半端な復活と暴走を重ねた所為で壊れてしまったらしい。
その隙間を縫って母さんが『覚醒』して解決したという事で、正直ほとほと頭が下がる思いだ。
結果的になんというか、CDを読み込もうとしたけど傷が入っていて読み込み出来ませんでした、という事らしい。
らしいというのは、母さんにもよく分かっていなかったからだ。
母さんが過去何度も思い出してきた記憶の中でもバアルの記憶はバラバラになってしまっていて、全ての真相を知る事はもはや不可能で、断片的な記憶しか思い出せないというのだ。
俺でさえいつの間にか思い出した程度なんだ、長年魔王をやってきた母さんでも無理なら、運に任せるしかないだろう。
にしても、『白金の魔王』ねぇ、母さんの持っていた称号だけど俺の持っていた『灰銀の魔王』とは名称が違うな、多分それぞれの魔王によって称号が少しずつ変わっているんだろう。
安直だけど母さんにはぴったりの称号だな。
…話が逸れたな、仕方ない、腹を括るか。
「…分かった、母さんの言う通りにする。
クリミナ、エルロイ、フラム、クリュシナ、ゼハース、お前達を俺の側仕えにする事を許す…ていうか、お願いする。
さっきもクリミナが言っていたけど、少し前みたいなお前達を無視するような事はもうしない、何かに没頭していたら自身はないけど…それ以外なら、話しかけるように努力する。
これでいいか?」
「はい、ありがとうございます。
誠心誠意お仕えさせて頂きますので、よろしくお願い致します」
クリミナが側仕えを代表してゆっくりと頭を下げ、残り4人の側仕え達も頭を下げた。
筆頭側仕えをするのはクリミナだろう、母さんの時もそうだったみたいだし。
「そうか、よろしく頼む。
あと何か言っておく事は……まぁ、追々かな。
じゃあ、あとの御者を…ゼハースだったな、よろしく」
全員美形で似たような顔にしか見えないが、確かクリミナがゼハースというエルフが御者をしていたと思う。
俺の側に置くといった以上、こいつらの顔も覚えないとな。
「分かりましたユーリ様、夜になるまでに到着してみせます」
「いざとなったら空間転移で距離を短縮するから、安全運転を心掛けてくれればいい。
警戒はしておくから、安心して飛ばせ」
「はい、お心遣いありがとうございます!!」
…あれだけ無視していて暗かったのに、今となっては満面の笑みを浮かべてるし、変な奴らだ。
仕える立場からすれば、主に無視されるのがどれだけ辛いのか分かった気がする、今後そういう事がないように意識しておこう。
揺れる馬車の中、どんな家を買おうかと悩みながら俺達は王都へと向かっていった。
読んで頂き、ありがとうございました。
感想など、お待ちしています。




