11 ユリウス、女生徒から告白を受ける
お待たせしました
とりあえずまとめてアップします!
私とセドリック殿下、そしてユリウスは十三歳になり、王立学園の中等部に入学した。
この学園は中等部と高等部に分かれていて、中等部には貴族クラス・騎士クラス・魔術師クラスの三つがある。
どのクラスも一般教養を習うけど、騎士クラスと魔術師クラスは専門分野の授業の割合が高かった。
そして三つは校舎が別々だった。
「じゃあね、ユリウス。私のクラスはあちらだから」
当然といえば当然ながら、私とユリウスは一緒に登校している。
コンテルノ公爵家の屋敷から学園までは馬車で十分ほどの距離があったので、二人で一緒に乗って通学していたのだ。
私とセドリック殿下は貴族クラス、そしてユリウスは騎士クラスを選んだので、正門からしばらく歩いた辺りでユリウスとはいつも別れることになる――のだけど。
「姉上が校舎に入るまでお供します」
「すぐそこだからいいわよ」
「いいえ、お送りします。俺は姉上の護衛ですので。父上からも姉上を守るように仰せつかっています」
たいてい彼はこう言って、騎士クラスからは離れた位置にある貴族クラスまで私を送ろうとするのだった。
ユリウスはすっかり背が伸びて、私と並ぶと頭が半分ほど突き出ている。
声変わりもして、彼はいつの間にか自分を「俺」と呼ぶようになってしまった。
(「僕」と言っていた頃は可愛かったのに……。なんだか寂しいわ)
可愛がっていた子犬が実は大型犬だったような、そんな侘しさが胸に吹き抜ける。
でもユリウスの騎士っぷりは健全だった。
とにかくどこへ行こうとしても、「護衛です」と言ってついてくるのだ。
(また女生徒に見られているわ。成長したらさぞかしモテるでしょうね、とは思っていたけれど……。まさかここまでとはね)
私がユリウスと並んで歩いていると、そこかしこから女生徒たちの熱い視線を感じる。
年下が好みなのか、高等部の女生徒までユリウスを見て頬を赤らめたりする。
(社交界に出たら変な噂を流されるのではないかと心配していたけど……杞憂だったわね。今のユリウスはどこから見ても、騎士を目指す見目麗しい少年だもの)
お父様とユリウスは義理の親子だけど、その影響は今のところまったく感じられなかった。
王立学園は社交界の縮図だ。
ここでの評価がそのまま卒業後の未来に繋がる。
だから心配していたんだけど、この様子ならユリウスは着実にコンテルノ公爵への道を歩んでいくだろう。
(だとしたら、次の問題は伴侶探しよね。ほとんどの生徒は在学中に婚約を決めるから)
王侯貴族の結婚は政略的な意味合いが強いものの、最近では気が合う相手を学園で見つけてほしいと望む親も多いらしい。
我が家は公爵だから相手を自由に選ぶのはかなり難しいだろうけど、伯爵以上の地位であればお父様はまず反対しないだろう。
ちなみに私は正式にセドリック殿下の婚約者になったので、私に秋波を送ってくる男子は皆無だ。
(伯爵家か侯爵家の令嬢……この学園には十人以上いたはずよ。頑張って彼女たちと仲良くなりなさいね)
願いを込めてユリウスをちらりと見やれば、私と目が合った彼は嬉しそうに破顔した。
(違うのよ。私ではなくて、あなたを見ている令嬢たちにその笑顔を向けてほしいのよ!)
私は彼女たちに遠慮してそそくさと速足で歩き、なるべく迅速にユリウスを自由にしようと努力した。
貴族クラスの校舎が見えてきて、私は斜め後ろを歩くユリウスに言った。
「もういいわ、ご苦労さま。また夕方に会いましょうね」
「昼食を一緒に取りましょう。いつものように、食堂でお待ちしています」
「……分かったわ」
食堂は一つしかなかった。
それに全クラス合同で、全員が入室可能なほどの面積をほこる大空間だ。
ユリウスの願いを却下できるような事情はない。
(冷たく突き放すべきなのかしら。私はユリウスに甘いのかもしれないわ……)
溜め息をつきつつユリウスの様子を窺うと、彼はなんと女生徒から手紙を受け取るところだった。
手紙の内容なんて想像するまでもない。
これはつまり告白シーンだ。
(あのご令嬢……伯爵家の方よね)
頬をほんのり染めた女生徒が必死に手紙を渡そうとする様子は、思わず応援したくなるものがあった。
頑張って……! と手を握りしめながら見守っていると、ユリウスは何か少し話しただけで、彼女を無視してすたすたと歩いて行ってしまった。
手紙も受け取っておらず、取り残されて泣き始めた令嬢を友人たちが慰めている。
私は怒りのあまり手の平に爪を食い込ませた。
(何をしているのかしら、ユリウスは! 女性を泣かせるなんて……! それでも騎士なの!?)
これは何か言ってやらないと気が済まない。
私は体内にふつふつと怒りをため込みながら午前中の授業を受けた。




