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月の裏側のような物語のわだかまりについて
しんしんと雪が降っている。
僕はかすかに目を開いて、雪の音としづしづとした部屋を歩く衣擦れを聞いていた。
美しく深い夜に現れるのは、たおやかな女性と決まっている。
夏場の夜を思い出す。
ブナの化身の夏の光線を縫った煌びやかなドレスには少々怖じ気づいたのだが。
どこか遠くで寝ぼけたのか冬の獣が鳴き声を発している。
夜は何もかもが少し背伸びしたように感じる。
天井も家具も、空気も。
ぷくぷくと時計の泡が夜に気づかれないよう深海に沈んでいく。
衣擦れはさらさらと音を立てて僕の寝室に入り込んでくる。
冷たい感触を首に感じて起き上がった。
首もとに突きつけられた黒い鎌と、黒い顔の花嫁。
彼女は自分の物語を僕に知られたことを悲しいと思っていた。
朝になると、勇敢な乙女の物語は溶けて氷になっていた。
冬の教訓を含んだ物語だったのだろう。




