今日という日の幕引き
地響きがした。
バオバオバオーッ、ドス、ガコン、ガタガタガタ、ボスッ。
郵便屋が来たようだ。
僕はかじっていたチーズの切れ端をシャワーに献上して玄関に出た。
今日を家で過ごすための人生セットが届いていた。
しばらくはこれを続けるつもりだ。
外で過ごす人生セットはまだ怖くてカタログの写真も見れない。
厚みだけで頭痛がする。
説明書を読む。
布団とミシンを取り出した。
ジジジ、チチチチ、リリリ、ガガガッ、ガッ、──ボカンッ。
説明書に戻って、今度はソーイングセットを取り出す。
チクリ、ブスッ、チクリ、ブスッ、チクリ、ブスッ、ガキッ。
部品や折れ針や絆創膏のゴミが散らばった部屋に西陽がさしたころ、ソファーが登場した。
西陽を浴び、残りのセットを取り出して僕は読書した。
月明かりに変わって文字が本の中に引っ込むと、僕は本をシュレッダーにかけ微塵ぎりにする。
屋根をよじ登って、舞い落ちるようにセットする。
そのまま庭に滑り落ちて、ひらひらと千切れた物語を浴びながら夜空に手を組み合わせる。
「すべてはその日始まったのだ」
最後らしい一枚が遅れてひらひらと落下してくる。
「めでたしめでたし」
一日の物語を締めるのに、セリフだけでは物足りない気がしたのでホースを天に掲げて月に涙を流させた。
物語の弔いはこれで終いだった。
今日の人生の物語はこれで終いだった。
僕は満足してお風呂に入って、今日の日もおしまいだった。
明日また別の人生の一日が届くだろう。
パジャマに着替えて眠った。
夢を見た。
昔々の、大昔の夢。
翼を仕舞わずに昼寝をしていたら、翼は焼け落ちてしまった。
ちょうど夜が来たから、焼けたのは翼だけだった。
そろり──と。
僕は初めて足で立った、月の下で。




