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★私達の事情

 では、続きは私が……。

え?

どうやって、何故、りりんと文通を始めようと思ったのか?


……それは重要な事かね??

ただ単純に、その頃の私は外部との接触が絶たれていて、年に一度従姉弟達に会わせて貰える以外では、日に3回の食事時と勉強の時間に祖父と顔を合わせる以外に他者と接する事が出来なかったからだ。


……逃げ出さなかったのか?

部屋を出る事は出来たのだが、決まった範囲から外れると元の場所に戻ってしまうのだ。

何度も挑戦したが、結局諦めた。

……方向音痴?

真っ直ぐな道を30メートル進む程度で迷う人間がいるのかね?

そんな特異能力を私がもっていると??

……方向音痴じゃないのに、30メートル程度進んだだけで元の場所に戻ってしまうと言う原因を離すと、説明の順序がおかしくなるのだが……。

仕方ない。

私の祖父は創造主と猫神の従属神とでも言うべき代物で、人の理からは外れた存在だったのだ。

私が暮らしていた部屋の周辺は、彼の神力によって閉じられていた為、一定の範囲より外には出られない様になっていたと言う訳だ。


……君は、質問が随分と多いな。

話が全然進まないではないか。

君の様に質問の多い娘を覚えていないと言うのは、やはり納得が……。

視界に入らない様に隠れてた?

え??

私が怖い……???

失礼な。

さっきから瞬きもせずに凝視して来る君の方が、よっぽど怖いではないか。


……今は間抜けなお兄さんに見える?

りりん、私はもしかして喧嘩を売られているのかね?

君まで私の事を『残念』だなどと……。

ここは泣いても良いところなのではないかと思うのだが、輝殿は……。

ああ、ありがとう。

少し持ち直した気がする。

では、りりんが話した部分の後から始めさせて貰って良いかね?




 りりんが死んでしまったと言う所だったかな……。

地球と言う世界で彼女が命を落とした時は、丁度、兄上とリエラの結婚式の最後の宴が終った頃だった。

その時は何故かずっとそわそわして落ち着かない状態で、宴が終ると同時にりりんの様子を見る為に『異界の窓』のアル部屋へ向かったのだ。

無意識に許可を出してしまったらしく、何故か父や母と、兄上とリエラも一緒に居たのだが……。


……『異界の窓』と言うのは、リエラの案から生まれたものなのだが、地球に居るりりんの様子を見る事が出来る優れ物だった。

……へ、変質者?!

りりん本人にも使用許可を貰っているから、断じてそんなものではないと主張したい!

え?

りりん、何故諦め顔で首を振るのかね??

そこは是非擁護を……。

……そんな事より先を話せ?

そんな、ひどい……。


 兎に角、『異界の窓』でりりんの様子を見ると明らかに体調不良で、真っ直ぐ歩くのも困難な状態で、朝の内に見た時と明らかに違う様子に私は戸惑った。

そうして、ハラハラしながら見守る内にりりんは長いエスカレーター……動く階段から落ちて、命を散らしたのだ。

目の前が真っ暗になった。

錯乱状態の私は、りりんの心を示す光を必死で探しだし、それを手中に収めると、仮初の肉体を構築してその中に彼女の心を閉じ込めた。


……うむ。

今、目の前に居る彼女の身体がそれだ。

君は、コレが賢者の石で作られていると聞いて納得できるかね?

……ふむ。

迷宮が作れるなら、他の何が出来てもあまり不思議に感じない、か。


 なにはともあれ、そうやって私は彼女を手元に呼びよせる事が出来た訳なのだが、正直な話、これが間違いの始まりだったのだ。

りりんの心を捕まえたのは、彼女の生まれ育った世界ではなく、この世界での事で……。


……うむ。

察しが良いな。

君の言う通り、りりんはこの世界で転生を果たす予定だったらしい。

私はその魂が腹の赤子に宿ろうとしているところを、攫って来てしまったと言う訳だ。

……ああ、言いたい事は分かる。

私も他人がそれをしたのなら、同じ様な事を思うだろうから。


 更に、彼女の左の肘から先が無いのも私の仕業だ。

りりんの心を連れ去る時に引き千切って、彼女の母親になる予定の女性の元に置いてきてしまった。

その上、このままの状態で後半年もすると、りりんの存在自体が失われてしまうらしい。


「それじゃ、折角お友達になったのに、りりんちゃん居なくなっちゃうです?!」


 そこまで説明したところで、先読族の娘は悲鳴じみた声を上げる。

先程から、随分と人の言葉を遮るなと思いつつ頷く。


「ただ、りりんを今生での母の元へと連れていければ何とかなるかもしれないらしいのだ。」

「なら、すぐにでも連れていくですよ~!」


 輝殿は、そう叫ぶなり立ち上がった娘を宥めると、私に視線を向けて苦笑を浮かべる。


「それよりも、姫。一番聞きたかったはずの『先読族』についてのお話をまだ伺えてませんよ?」

「は?!」


 指摘されて、ハッとした表情になると彼女はまた立ちあがって、私をビッと風切り音を立てながら指差す。


「さては、話を逸らそうとしてるです~?!」

「いや、そこに辿り着いていないだけなのだが……。」

「なら、さっさと吐いてしまうのです! 吐いて、楽になってしまうです~!」


 彼女のツッコミに逐一答えていたのも、本題に辿り着かなかった原因の一つなのだが、それを指摘するとまた、話が長くなりそうなので私は一旦口を噤む。


「さ、姫。落ち着いて座って下さい。……はい、深呼吸して。」


 彼女は輝殿の言葉に従い腰かけなおすと、深呼吸を繰り返す。

少し落ち着いた様に見えたところで彼に続きを促され、改めて口を開く。


「では、この世界の管理者とその眷族。そして従属種族について少し話をしよう。」

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