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むかしがたり 下

 12歳の時の話だから、今から16年前?

え?

ああ。

地球とは1年の日数が違うんだっけ。

あっちだと1年は365日だけど、こっちは336日だって言ってたもんね。

て事は、アルの感覚だと17年前なんだねぇ……。


……ああ。

そうなの。

わたし、最近になって事故で死んじゃって、こっちの世界に転生してきたんだよ。

だからまだ、こっちの事で良く分からなかったり、ピンと来なかったりする事が沢山あるの。

あはは。

そうだねぇ……。

創作物語みたいな話だけど、『事実は小説より奇なり』って言う言葉もあるからそういうもんなんじゃない?


 まぁ、その17年前にマイパソにネットを繋げて貰える事になったわたしは、メル友募集サイトにこんな記事を立ち上げた。

『メル友募集。 色んな事をお話しませんか?』

後になって知ったんだけど、コレ、性別『女』で入れちゃうとヘンな人からも沢山メールが来るらしい。

 あ、マイパソって言うのは自分専用の……魔導具? って言うのが近いのかな??

メル友って言うのは、その魔導具を通じての文通相手の事。

 初めてのお約束って感じで、しっかり性別を『女』って入れた挙句に実年齢まで入れちゃったから、真面目なのからヘンなのまで、たーくさんのメール……手紙が届いちゃった。

お断りする相手にも全部、同じ文面ではあるものの返事をするのはちょっと大変だった……。

何とか会話が成立しそうな人を10人まで絞って……その中にアルが居たんだ。

 その10人の人達とも、結局1年以上経っても遣り取りが続いたのは……、アルの他には2人くらいだったかなぁ?

それも、2年目に入ると段々と遣り取りが減って行って、最後にはアルしか残ってなかった。

まぁ、メル友って割とそう言うもんなんだろうと思ってたんだけど、どうなんだろう?


 何はともあれ、アルはなんだか最初から変わったメル友さんだったんだよね。

どこがかって?

まずは、最初の内はソレらしい単語を並べて来てたの。

『いっしょう だいじ する ください』

って言うのが最初のメール。


……ああ、やっぱり『友達になって下さい』のつもりだったのかぁ。

『一生涯の友達になって下さい』かな?って思ってたから、概ね正解?


 その、単語を並べてきているのが、もしかしたら母国語じゃないからかな?

そうあてこんで、最初の内はアルの書いてきた内容を自分なりにこう言ってるんじゃないかって思ったのを書いた上で、その下に自分の返事を書いてってのを繰り返して……。

そうしたら、1年もしないうちに、普通の文章の遣り取りが出来るようになった。

滅茶苦茶、頭がイイ子なんだと思ってビックリしたよ。


……そっか。

あれで役に立ったなら良かった~!

気を悪くされたらどうしようと思いながらやってたから……。


 普通に遣り取りが出来るようになっていくにつれて、彼が同い年の男の子だって事が分かって驚いた。

なににって、生活環境の劣悪さにだよ?


……そこは自分で話す?

オーケー。

わたしからだと、思い込みも入りそうだもんね。


 まぁ、何の気なしにアルの暮らしてる場所について聞いて見たら、あんまりにもヒドイ環境で育ってるらしい事が分かって滅茶苦茶驚いた。

最初にソレを知った時、夢見が悪くてさ。

自分がその環境に居る夢を見たの。

夜中に飛び起きて、お兄ちゃんのベッドに潜り込んじゃったよ……。

13にもなって、子供っぽいなとは思ったけど。

夢で見ちゃう位にショックだった。

食事を渡される時と、特別なお勉強の時以外に人と接する事が出来ないなんて、有り得ないと思ったよ。


……お兄ちゃんに?

話したけど……『マンガの読みすぎ。少しは勉強しろ。』って言われた。

ああ、漫画って言うのは……後でこんな感じっての描いてみせるよ。

下手っぴだけど、笑わないって約束してね?


 その後も、中々のペースでメールの遣り取りは続いてた。

少ない時で1日5通、多い時だと20通近く?


……ああ。

メールって言うのは、ほぼ即時で遣り取りできるんだ。

だから、多分もっと遣り取り多い人もいるんじゃないかな??

わたし達の遣り取りが少ないとは思わんけど。


 流石に、1通当たりの文章は短かったんだけど、このペースで遣り取りするんじゃやってられっかー!

って思って、お兄ちゃんにおねだりしたらネットゲームの月額使用料を出して貰える事になった。

ネットゲームは……取り敢えず、メールよりも手軽に文字の遣り取りが出来る道具だと思って貰えればいいかな……。

実際、そう言う使い方をしてたし。

 そのゲーム内でのアルが可愛くって、滅茶苦茶萌えた。

感情表現が割と大袈裟なゲームだったんだけど、嬉しいとすぐにフキダシにハートマークや音符が現れるし、悲しいと涙がぽろぽろ零れていったり、辺りに撒き散らされたり?

それまで、ただの文字だけだった遣り取りに感情が加わって……より、人と接している感じが強くなったんだよねぇ……。

そんな遣り取りを続けている内に、いつの間にか結婚適齢期とか言われる年齢に差し掛かってた。


……うん?

わたしの居た世界の結婚適齢期は……24~28くらい???

ああ、学生時代が長いんだよ。

義務教育って言うのが小学校・中学校とあって、ソレが終わった時点で15歳。

その後、殆どの人が行く高校で3年。

高校を卒業した後に学べる先が、短期大学・専門学校が2年位?

大学になると、更に4年。

だから大学まで行くと、それだけで22歳になっちゃう計算。

成人は20歳だよ?

だから良く分からんけど、そんな位じゃないかな?

でも、20代はやっと勉強から解放されたからとか、仕事が楽しいからってそっちに夢中になっていて、結婚するのは30代になってからって人も増えてたかも。

 わたし?

わたしは……。

アルが、地球に来る方法を何とか見付けるって言ってたから、待ってた。

だってね、地球には魔法なんて無かったし、魔法がないなりにこっちの世界に来る為の方法を考えようにも、わたしは頭もよろしくなかった。

いくら考えても、『そんな事は出来ないんじゃないか』って答えしか出なかったし。

だからねぇ……。

アルが来れたら彼と結婚しようとは思ってたけど、来れなかったなら一生独身で良いかなって思ってたんだよね。

 ……うん。

婚活しようかなって言ったねぇ。

あの時点では、『もう無理』なんだろうって思ってたから、アルにアレ以上の負担を掛けたくなくて、実らないに違いない努力するのを諦めて貰いたかったんだ。

もしかしたら、わたしよりもアルの事を思ってくれている女性が側にいるんじゃないかって思ってたし。


 話はちょっと逸れたけど、そんな中、4年位前にそのゲームの上位互換的なモノが開発されて、わたしはソレに飛びついた。

ソレは、現実と殆ど同じ感覚を有したアバター……仮初の肉体みたいなもの?

に、自分の意識を移して体験出来るって言う類のものだった。

あくまで疑似的なモノだから、現実のモノとはやっぱり違うんだけどね。

アルも大乗り気で、そのゲームを始めた。

 わたしはちょっぴり……嘘です。

10歳位サバを読んで、殆ど自分の姿に近いアバターを作った。

自分の姿そのものじゃないのは、こっちで言うネコ耳族の姿で作ったから。

髪の色は若草色で、瞳は……今の姿と同じにしてた。

本来の姿だと、ほぼ黒に近い焦げ茶の髪に、金茶の瞳だったんだけど、そこはまぁ……気にしないで?

 アルは、自分の姿そのもので登録したらしいんだけど、実際には美形度1割減位?

なんとなく、再現が追いつかなかったのかなぁと思うんだけど、先に始めていたわたしの目の前に現れて膝を付いて笑いかけてきた時には、正直心臓が止まるかと思った。

まさか? って思ったよ。

アルは自分の容姿の事は殆ど教えてくれてなかったから、他のゲームでも殆ど変わらないワンレンの髪を肩で切り揃えた黒髪エルフ姿でなかったら、『人違いです』って言ってたかも。


……ああ、こっちでいう『耳長族』的なのが『エルフ』って理解でお願いします。

顔?

付いてればいいって思ってた程度だから、美形すぎてビビったよ!

しかも、素か?!

って思ってた。

頑張って作りこめば、いくらでも美形に出来るゲームだったし。

アルが笑ったのが想像できない??

結構、アルって良く笑うよ?

え?

無表情系??

あー……、うん。

実は、お兄ちゃんが切れ長釣り目の無表情系美人でね、表情の変化には敏感なの。


 ソレは置いといて、そのゲームを始めてから、急速にわたし達の関係が進んで行った様な気がする。

元々、アルからのプッシュは激しかったんだけど、ソレが加速したと言うか……?

現実に近い接触が持てるようになって、より激しくなったっていうのかな?

でも、時を追うごとにアルがなんだか追い詰められていく感じがして、ソレが地球に来る方法が見付けだせないせいらしいって想像付いて、わたしも凄く苦しかった。

そのゲーム内でだけの関係でも良いんじゃないかって、そう思いたくなったりもしたし。

 その内、急に彼がリエラちゃんをそのゲームに連れてきたんだよね。

彼女と、カタコトの単語の羅列での遣り取りをしたのは、なんだか昔のアルとのメールを思い出して、ちょっと楽しかった。

彼女の事、アルは凄く信頼して頼りにしてるのが分かって、ちょっぴりヤキモチも焼いたなぁ。

だって羨ましいじゃない?

わたしじゃ、能力不足で補ってあげられない部分を卒なくこなしてるんだもん。


……え?

妬ましくは無かったよ。

自分に出来ない事はどうしようもないし、逆にわたしにしか出来ない事もあるでしょ?

彼女には、アルの躾・指導や助言はできるけど、アルを幸せにはしてあげられない。

多分……アスラーダさんが居なくても、アルと彼女がどうにかなるって事は無いんじゃないかなぁ……。

むしろ、あの人の動き次第で姫ちゃんも輝さんもこの世に居なかったくさいし。


 なにはともあれ、リエラちゃんと会った事によって、多分、色々な事が動き出したんじゃないかな?

彼女と出会ってから、わたしの世界で約半年。

アルがどうやっても抜ける事の出来なかった場所を通り抜けて、今ここにわたしが居るんだもの。

地球でのわたしが死んでしまって、こちらの世界で生まれ変わる為だったとしても。

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