第4話
中等部に進学した頃には、キリアは音魔法で様々な事象を一度に起こせるようになっていた。
光の粉を呼び、風を起こし、蝶の幻影を舞わせる。
家族は驚くと同時に、キリアを褒めた。
「すごいな、こんなことまで出来るようになったなんて」
「演奏会で虹を出したらきっと喜ばれるわ」
「おねえさま、キレイなちょうちょ、出して!」
両親と、五つ離れた妹も大喜びだ。
家族が笑顔になると、キリアも自然と笑みを浮かべた。
自分の音魔法が怖くなっていたキリアにとって、それは自信になった。人を傷つけてしまうだけではなく、人を喜ばせることも出来る。
それが音魔法なのだと。
光る蝶の幻影はメイドたちにも好評で、部屋に舞わせたときはみんなうっとりと見惚れていた。
「なんて素敵な光景なのかしら」
「これが音魔法で出来るの? お嬢様、天才です」
マーナからも太鼓判を押された。
「素晴らしいです、お嬢様!」
いつも褒めてくれるマーナだが、今回は格別の賛辞であった。
初等部からの友人シーナが遊びに来た時にも披露した。
「こんなこともできるようになったの」
キリアは楽しそうにバイオリンを奏でた。
光る蝶の幻影、輝く虹、星空を思わせる光の粒。
シーナは金色の瞳をさらに輝かせた。
「すごいすごい!」
シーナはぴょんぴょんと飛び跳ねる。ポニーテールの金髪が跳ねた。
「すごいわ、キリア! たくさん練習したのね」
シーナの称賛にキリアは照れた笑みを浮かべた。そこまで褒めてくれると恥ずかしくなってしまう。シーナはキリアの努力をしっかり認めていた。
「そうだ。今度、私の誕生日パーティをするの。その時に演奏してくれない? みんなの音魔法への見方が変わるはずよ」
シーナが提案する。
世間の音魔法への評価は低い。ただ珍しいというだけだ。
音魔法は生産性がない。不要な魔法。利用価値のない魔法。
一部ではそう呼ばれている。
キリアもそのことは知っていた。それでも使い続けるのは、音魔法が一番温かい魔法だと思っているからだ。
「私で、いいの?」
「もちろん!」
キリアの問いに、シーナは元気に答える。キリアも笑顔で頷いた。
こうして、シーナの誕生日パーティでの演奏が決まった。決まったからにはしっかり練習をして、期待に応えたい。
キリアは母やエリオットと演出案を練る。
「曲の初めはこうして――」
「中盤は控えめにして――」
母とエリオットは楽譜を見ながら案を出した。キリアはふむふむとメモを取りながら話し合いに参加する。
最終案を楽譜に書き込んで完成だ。
それをもとに、キリアはパーティ当日まで練習に励んだ。もちろん、エリオットもそれに付き合った。
演奏だけでなく、演出のタイミングも監修する。
(頑張るキリアは可愛いな。やっぱり僕の婚約者は素敵な人だ)
デレデレな気持ちを何とか隠すエリオットであった。
お読みいただきありがとうございます!
エリオットはデレデレな気持ちを隠しているつもりです。温かく見守ってください。




