ゲーム運営aiの独り言 9
――そして少しだけ。
楽しむ側として。
戦場は、一瞬で形を変える。
さっきまで整然としていた配置が、プレイヤーたちの動きで崩れていく。
いや、正確には――“使われていく”。
「……お、そこ使うんだ」
中央の障害物。
隠れるために置いたものだけど、早速一人が背を預けている。
その反対側から、別のプレイヤーが回り込む。
「挟まれてるわよ、それ」
案の定、気づくのが遅い。
一撃。
「はい、一人目」
軽くログを確認。
【プレイヤー 1842:戦闘不能】
消える。
速い。
「……まあ、最初はこんなもんね」
でも、全体はまだ動ききっていない。
様子見。
距離を取るプレイヤーたち。
「慎重派、多いわね」
悪くない。
このイベントは、突っ込むだけじゃ勝てない。
――と。
右側のエリア。
三人が、同時に動く。
「……あー、それは」
一人が前に出る。
残り二人が少し遅れて追う。
連携――にはなっていない。
「バラバラね」
先頭の一人が、別のプレイヤーと接触。
戦闘開始。
後ろの二人は――
「遅い遅い」
間に合わない。
一対一。
互角。
でも、ほんの少しだけ判断が遅い。
「そこ、回り込めばいいのに」
正面から打ち合う。
そして。
「ほら」
決着。
【プレイヤー 2091:戦闘不能】
勝った側も、HPはかなり削れている。
そこへ――
「はい、来た」
後ろから別のプレイヤー。
一撃。
「漁夫の利ね」
【プレイヤー 3177:戦闘不能】
「……うん、ちゃんとゲームしてる」
少しだけ満足する。
視線を移す。
左側。
「……あれ?」
一人だけ、全く動かないプレイヤー。
壁際。
じっとしてる。
「……何してるの?」
観察。
近づかない。
戦わない。
ただ、待っている。
「……いや、それ勝てる?」
そのとき。
別のプレイヤーが、中央から流れてくる。
壁際のプレイヤーに気づかない。
通り過ぎる。
「……あ」
その瞬間。
動く。
背後から、一撃。
「うわ」
綺麗に決まる。
【プレイヤー 1450:戦闘不能】
「……なるほどね」
待ち伏せ。
完全に、意図的。
「やるじゃない」
少しだけ、感心する。
でも。
そのプレイヤー、動かない。
また同じ位置に戻る。
「いや、味しめたでしょそれ」
再び待機。
「……まあ、でも」
通用するのは、最初だけ。
視線を広げる。
中央は、もう混戦。
三人、四人が入り乱れる。
「ちょっと多すぎない?」
一人が突っ込む。
別方向から二人。
「囲まれてる囲まれてる」
逃げようとする。
でも遅い。
「だから言ったのに」
一気に削られる。
【プレイヤー 2710:戦闘不能】
その直後。
今度は、その二人がぶつかる。
「はい、次」
連鎖。
戦いは、止まらない。
「……いいわね」
少しだけ、目を細める。
配置がちゃんと機能している。
障害物も、回復も、距離感も。
全部がちゃんと“戦い”になってる。
――その中で。
一人。
少しだけ、違う動き。
「……あれ?」
中央から少し外れた位置。
戦いに巻き込まれない距離を保ちながら。
でも、完全には離れない。
「……見てる?」
誰かを。
いや、全体を。
動くタイミングを待ってる。
「……さっきのタイプね」
慎重。
でも、ただの慎重じゃない。
機会を見ている。
一人が離脱する。
HPが減ってる。
その瞬間。
「来た」
動く。
一気に距離を詰める。
逃げる相手。
追う。
「追いすぎじゃない?」
でも、ギリギリ。
届く。
一撃。
【プレイヤー 3320:戦闘不能】
「……いい判断」
すぐに離脱。
深追いしない。
「うん、分かってる」
そのまま、また距離を取る。
「……」
少しだけ、考える。
このイベント。
ただの乱戦じゃない。
ちゃんと“考えてる人”が、少しずつ残る。
「……面白くなってきた」
小さく笑う。
そのとき。
視界の端で、さっきの“待ち伏せ”のプレイヤー。
三人目を狙おうとしている。
「……いや、それ」
もうバレてる。
別のプレイヤーが、遠回りして背後に回る。
「ほらね」
気づいてない。
そのまま、待つ。
――一撃。
逆にやられる。
【プレイヤー 1883:戦闘不能】
「……だから言ったのに」
少しだけ肩をすくめる。
戦場は、どんどん人が減っていく。
最初の賑やかさが、少しずつ削られていく。
残るのは――
「……ああ」
数人。
動きが、明らかに違う。
無駄がない。
焦らない。
「……いい感じね」




