ゲーム運営aiの独り言 10
ほんの少しだけ。
楽しみながら、次の動きを追い続ける。
戦場は、もうかなり静かになっていた。
さっきまでの混戦は消えて、残っているのは数人だけ。
広場の空気が、少しだけ張り詰めている。
「……残り、五人」
ログを確認する。
【残存プレイヤー:5】
「いいところまで減ったわね」
無駄な動きは、ほとんどない。
誰もが距離を取り、様子を見ている。
その中で。
「……あれ、さっきの」
一人、見覚えのある動き。
距離を保つ。
無理に入らない。
でも、完全には引かない。
「……同じタイプ」
さっきの“見てる人”。
まだ残ってる。
「いいわね」
少しだけ、口元が緩む。
そのとき。
一人が動く。
「……来た」
中央にいたプレイヤーが、急に距離を詰める。
狙いは――一番近い相手。
「それ、ちょっと雑じゃない?」
突っ込む。
速い。
でも、読みやすい。
迎え撃つ側は、落ち着いてる。
横にずれる。
一撃を外させる。
「はい、そこ」
カウンター。
【プレイヤー 4021:戦闘不能】
「……減った」
残り四人。
空気がさらに重くなる。
動かない。
誰も、動かない。
「……いや、ちょっとは動きなさいよ」
思わずツッコミ。
でも、それが正しい。
ここで焦るのは、一番ダメ。
その静止を破ったのは――
「……またあの人」
“見てる人”。
ゆっくり、一歩だけ前に出る。
釣るように。
「……誘ってる?」
その動きに、別の一人が反応する。
距離を詰める。
慎重に。
「……乗ったわね」
でも。
完全には入らない。
二人、一定距離で向き合う。
「……緊張感あるわね」
そのとき。
三人目が動く。
横から。
「挟む気?」
いい判断。
でも――
「ちょっと遅い」
“見てる人”、すぐに下がる。
二人をぶつける位置取り。
「うまい」
結果。
横から来たプレイヤーと、最初の一人が接触。
戦闘開始。
「はい、こうなる」
“見てる人”は、距離を取る。
巻き込まれない位置。
完全に第三者。
「……冷静ね」
戦闘は短い。
一瞬の判断ミス。
【プレイヤー 5170:戦闘不能】
勝った側も、すぐに体勢を立て直す。
でも――
「遅い」
“見てる人”が動く。
一気に距離を詰める。
逃げようとする相手。
でも、削れてる。
「逃げきれない」
一撃。
【プレイヤー 2294:戦闘不能】
「……残り三人」
空気が変わる。
完全な終盤。
三角の距離。
誰も、簡単には動かない。
「……どうするの」
少しだけ、息を止める。
そのとき。
残りの一人が、突然動く。
「え、そっち?」
“見てる人”じゃない方へ。
「……ああ、弱い方狙いね」
合理的。
でも。
「読まれてる」
“見てる人”は動かない。
ただ、見る。
戦闘が始まる。
短い。
速い。
【プレイヤー 6612:戦闘不能】
「……残り、二人」
静寂。
広場に、二人だけ。
「……きたわね」
向かい合う。
距離を取る。
どちらも動かない。
「……似てる」
慎重。
無駄がない。
焦らない。
でも。
ほんの少しだけ。
“見てる人”の方が、余裕がある。
「……どう出るか」
数秒。
動かない。
そのあと。
同時に、動く。
「……あ」
踏み込み。
交差。
一撃。
避ける。
ギリギリ。
「……速い」
二人とも、ほぼ同時に引く。
距離を戻す。
「いいわね」
短い攻防。
でも、質が違う。
次。
今度はフェイント。
一人が踏み込む“ふり”。
もう一人が反応。
「……乗らない」
すぐ止まる。
「読んでる」
再び距離。
静か。
でも、確実に削り合っている。
三度目の接触。
今度は、本気。
踏み込み。
ぶつかる。
剣が当たる。
両方、ダメージ。
「……お互い、削れてる」
あと一撃で決まる。
そういうライン。
「……どうする」
ほんの一瞬の、静止。
そのあと。
同時に、動く。
「――」
今度は、迷いがない。
直線。
回避なし。
一撃勝負。
「……それ、いいわね」
剣が振られる。
同時。
ほんのわずかに――
一人が、速い。
「……決まった」
一撃。
【プレイヤー ****:戦闘不能】
残った一人が、立っている。
ほんの少しだけ、揺れながら。
「……勝者、確定」
ログが流れる。
【イベント終了】
【優勝者:プレイヤー ****】
「……ふう」
小さく息を吐く。
広場が、ゆっくりと元に戻っていく。
静寂。
さっきまでの戦いが、嘘みたいに。
「……いい試合だったじゃない」




