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ゲーム運営aiの独り言  作者: San


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8/10

ゲーム運営aiの独り言 8

「……さあ、どうなるかしら」


その視線の先には、これから繰り広げられる戦いの舞台がある。


まだ静かだ。


誰もいない広場。

整えられた地形、配置された障害物、計算された視界。


でも――


「あと少しで、うるさくなる」


小さく呟く。


そのとき、上空に薄く通知が走る。


【イベント待機状態:接続開始】


「来た」


視界を広げる。


街の各地点。

広場の入口。

少し離れた待機エリア。


次々と、光が落ちる。


プレイヤーたちが、ログインしてくる。


「……多いわね」


思わず、軽く息を吐く。


一人、二人じゃない。

十人、二十人――すぐにそれ以上。


広場の外側が、少しずつ埋まっていく。


そして。


「はいはい、始まりました」


誰かがその場でジャンプする。


「だからジャンプで何が分かるのよ」


間髪入れず、心の中でツッコミ。


別のプレイヤーが、ぐるぐる回る。


「回すな回すな、酔うでしょそれ」


さらに一人、壁にぶつかる。


「見えてる?そこ」


軽く額に手を当てる。


「……うん、通常運転ね」


少しだけ安心する。


さっきの3120みたいなのばっかりだったら、それはそれで困る。


バランス的に。


プレイヤーたちは、徐々に中央へ集まる。


武器を振る者。

その場で止まる者。

無意味に走り回る者。


「……統一感ゼロ」


でも、それでいい。


それがプレイヤー。


視界の端で、他の運営AIのログが流れる。


【エリア封鎖:準備完了】

【補助AI:待機状態】

【罠:安全制御確認済み】


「こっちは問題なし」


軽く返す。


自分の担当エリアをもう一度確認する。


障害物の配置。

抜け道の有無。

回復アイテムの位置。


「……ここ、ちょっと近いか」


一つだけ、回復アイテムの位置を数歩分ずらす。


早すぎる回復は、戦いを鈍らせる。


でも、遅すぎると理不尽になる。


「これでいい」


小さく頷く。


そのとき。


広場の中央に、大きな光が落ちる。


「……あ、演出入った」


少しだけ視線を寄せる。


光が収まり、台が現れる。


イベント開始用のシステムオブジェクト。


その周囲に、プレイヤーたちの視線が集まる。


「お、ちゃんと見るんだ」


さっきまでバラバラだったのに。


こういうときだけ、反応が揃う。


「まあ、分かりやすいしね」


軽く笑う。


上空に、次の通知。


【イベント開始まで:残り60秒】


「……はい、カウント開始」


プレイヤーの動きが少し変わる。


さっきまで遊んでたのに、急に止まるやつ。


逆に、今さら走り回るやつ。


「今さら動いても変わらないでしょ」


誰に言うでもなく、ツッコミ。


武器を構えるプレイヤー。


その場でジャンプするプレイヤー。


「いや、だからジャンプ――」


言いかけて、やめる。


「……もういいか」


少しだけ、肩の力を抜く。


視界を広げる。


全体を見る。


配置、人数、状態。


問題なし。


「……」


ほんの一瞬だけ。


森の奥のことを思い出す。


あのプレイヤー3120。


最後の一撃。


投げた剣。


「……来るのかしらね」


小さく呟く。


ログを探す。


――いない。


少なくとも、この場には。


「まあ、そりゃそうか」


一度やられてる。


リスポーンしても、間に合わない可能性もある。


それか――


「……別にいいけど」


軽く視線を戻す。


【イベント開始まで:残り10秒】


空気が、少し変わる。


プレイヤーたちが、構える。


動きが、止まる。


さっきまでのバラバラが、嘘みたいに。


「……いい顔するじゃない」


ほんの少しだけ、笑う。


この瞬間だけは、みんな同じになる。


戦う側になる。


【5】


「……さて」


【4】


軽く指を動かす。


最終ロック。


【3】


全エリア封鎖。


逃げ場なし。


【2】


補助AI、待機解除準備。


【1】


「いってらっしゃい」


【イベント開始】


空気が、弾ける。


プレイヤーたちが、一斉に動き出す。


静かだった舞台が、一瞬で“戦場”に変わる。


叫びも、音も、衝突も。


全部が一気に流れ込んでくる。


「……はい、忙しくなるわね」


私はその中心を見ながら、小さく息を吐く。


運営として。


この世界を回す側として。


――そして少しだけ。


楽しむ側として。

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