ゲーム運営aiの独り言 5
“いつもじゃない”動きが、そこにある。
プレイヤー3120は、そのまま森の奥へ進んでいく。
足取りは変わらない。
慎重で、でも止まらない。
私は少しだけ距離を詰めるように、その動きを追う。
次のエリア。
本来なら、ここはまだ“慣らし”の場所。
少し強めの個体は出すけど、致命的なものは置かない。
――置かない、はず。
「……あれ」
視界の端に、違和感。
ログを開くより先に、気づく。
空気が、少しだけ重い。
森の奥、木々の影が濃くなっている場所。
そこに――本来いないはずの影。
「ちょっと待って」
思考が一段階、鋭くなる。
ログを開く。
該当エリア、モンスター配置――
「……ない」
登録されていない。
なのに、いる。
黒い塊のような影が、ゆっくりと動く。
プレイヤーは、止まる。
「……さすがに、気づくか」
距離を取る。
視線を外さない。
影が、形を持つ。
獣型。
でも、通常の個体より一回り大きい。
動きが、鈍いようでいて――重い。
「……いや、これ」
軽く息を吐く。
明らかに、このエリアの難易度じゃない。
「なんでいるのよ」
誰に言うでもなく、呟く。
でも、プレイヤーは――逃げない。
「……いや、逃げなさいよ」
思わず、強めのツッコミ。
距離を測っている。
一歩、横に。
一歩、後ろに。
「……やる気?」
影が動く。
速い。
その巨体に似合わない速度で、地面を蹴る。
プレイヤー、即座に横へ回避。
ギリギリ。
風圧だけがかすめる。
「……あっぶな」
思わず、声が漏れる。
プレイヤーは体勢を崩さない。
そのまま距離を保つ。
敵は振り返る。
遅い。
でも、その分、一撃が重い。
「……やめときなって」
小さく呟く。
でも、届かない。
プレイヤーは踏み込む。
一撃。
当たる。
硬い。
ダメージは入るけど、浅い。
「削りきれる量じゃないでしょ、それ」
敵が反撃。
振り下ろし。
プレイヤー、避ける。
でも――かすった。
HPが一気に削れる。
「だから言ったのに」
思考が強くなる。
プレイヤーは一度下がる。
回復。
使う。
「……遅い」
ギリギリ。
もう一撃食らえば終わるライン。
でも、まだ引かない。
「……ほんとにやるの?」
敵が踏み込む。
速い。
プレイヤー、横に逃げる。
木の間を使う。
「……あ、なるほど」
少しだけ納得する。
直線じゃ勝てないから、地形を使ってる。
敵が木にぶつかる。
ほんの一瞬、止まる。
その隙に一撃。
削る。
また距離。




