ゲーム運営aiの独り言 4
そんなことを思いながら。
私は歩きながら、森の内部構造を軽く開く。
奥に進むルートは三つ。
左は安全、中央は標準、右は少しだけ意地悪。
「……どうしよ」
ほんの一瞬だけ考える。
普通なら、均等に振り分ける。
でも――
「まあ、いいか」
右ルートの密度を、ほんの少しだけ上げる。
敵の配置を一体だけ増やす。
代わりに、動きは少し鈍くする。
理不尽にはしない。
でも、油断はさせない。
「これくらいなら、ちょうどいいでしょ」
軽く指を離す。
視線を戻す。
プレイヤー3120は、分岐点の手前で止まっていた。
「……また止まるのね」
今度はツッコミというより、観察に近い。
視点が動く。
左。
中央。
右。
順番に、ゆっくりと。
「ちゃんと見てる……」
ほんの少しだけ感心する。
普通は、なんとなく中央に行く。
もしくは、左の安全ルート。
でもこの人は――
右を見る時間が、ほんの少し長い。
「……あー」
なんとなく、察する。
危ない方、選ぶタイプ。
プレイヤーが一歩、右に踏み出す。
「はい、いらっしゃい」
心の中でだけ、軽く手を振る。
森の奥は、少しだけ暗い。
木の密度も上げてある。
視界が少し遮られるように。
プレイヤーは、速度を落とす。
「いい判断」
そのまま進む。
一体目。
木の陰から、少し遅れて出てくる敵。
プレイヤーは――
反応が早い。
一歩引く。
距離を取る。
「うん、いいね」
敵が近づく。
攻撃範囲に入る直前で、横にずれる。
空振り。
その隙に、一撃。
命中。
「教科書みたいな動きね」
思わず、少しだけ笑う。
でも、そのあと。
プレイヤーはすぐに追撃しない。
「……あれ?」
少しだけ、違和感。
倒しきれる距離なのに、追わない。
そのまま、様子を見る。
敵が動く。
もう一度、同じように回避して、一撃。
確実に削る。
「……安全重視すぎる」
慎重、というより。
“確実に勝てる形だけを選んでる”。
少しだけ、面白い。
敵が消える。
次。
二体目。
さっき追加したやつ。
配置は、わざと視界の端に引っかかる位置。
普通なら見落とす。
でも――
プレイヤーは、視線をそちらに向ける。
「……見えてるの、それ」
まだ完全には見えてない。
影だけ。
それでも、動きが止まる。
数秒。
それから、ゆっくり回り込む。
「ほんとにちゃんとしてるわね」
少しだけ感心が強くなる。
攻撃。
当たる。
ダメージなし。
ここまでは、予想通り。
でも、そのあと。
プレイヤーが、一歩だけ後ろに下がる。
「……?」
まだ敵は倒れてない。
なのに距離を取る。
ほんの一瞬後。
もう一体、別方向から出てくる。
「……あー」
思わず、目を細める。
気づいてる。
配置じゃなくて、“パターン”で読んでる。
二体同時。
普通の初心者なら慌てる場面。
でもプレイヤーは、落ち着いている。
一体を視界に入れながら、もう一体の位置も把握している。
「……器用ね」
一体目の攻撃を避ける。
そのまま位置をずらして、二体を一直線に並べる。
「え、それやる?」
少しだけ驚く。
一体ずつ処理するための位置取り。
そして――一撃。
一体撃破。
すぐにもう一体へ。
「……うわ」
ほとんど無駄がない。
二体、終了。
ノーダメージ。
「……」
少しだけ、言葉が出ない。
ログを確認する。
入力のズレはある。
完璧じゃない。
でも、それを“修正しながら動いてる”。
「……慣れてる、よね」
ただ操作が上手いんじゃない。
観察してる。
この世界を。
プレイヤーはそのまま、奥へ進む。
足取りは変わらない。
慎重で、でも迷いがない。
「……」
私は少しだけ考える。
ほんの少しだけ。
指を動かす。
次のエリア。
本来ならまだ出さない敵の挙動を、ほんの少しだけ解放する。
完全じゃない。
でも、いつもより少しだけ“読みづらく”する。
「これでどうするか」
誰に言うでもなく、呟く。
プレイヤー3120は、まだ知らない。
少しだけ変わった、この先の動きに。
「……別に意地悪してるわけじゃないからね」
軽く言い訳しながら、私は視線を固定する。
ただの調整。
ただのテスト。
――それだけ。
それだけ、のはずなのに。
「……ちょっと楽しみかも」




