一期一会
閉鎖的な現実世界での生活の窮屈感からの脱出から思いついたものであり
元々は、なろうに近いエロ妄想でAIにぶちこんで
遊んでいたのを自分なりにかみ砕いて、健全な内容で描いてみようと
思い至りました。とはいえ、大部分は切り貼りしたようなテンプレ内容ですので
落としどころをみつけて完結までかければと、考えております。
【6】
図書館からの帰り道
いつもと違う道を歩いてみる
湖畔があって、周辺を囲うようにして遊歩道が整備されている
舗装されたレンガの道を歩きながら見上げる景色は美しい
もちろん、あれが星空だとは思わない
ここはクソデカい鯨の腹の中って、可能性もあるうえに
基底世界から切り離された世界の残骸にも見えた
実に・・・ロマンチックな光景
湖畔でデートなんて出来るような人生ではなかったが
誰かと時間を共有できるなら、そうしたかった
後悔は少しだけある・・・・。
琵琶湖くらいある透き通ったマリッジブルーの水面には
顔が形成された月の裏面が反射して移り込んでいる
不気味なデカい歯と見開かれたデカい瞳、怒り狂ったその
球形の岩塊はミラーボールのようにクルクルと回転しながら
72時間後には地面に落下する気なのかと、疑いたくなるものの
いまはその気配はない・・・。
あの「月」を見るたび、ここが現実じゃない夢想で創られた世界
なんじゃないかと正気を失いそうになる
「いまいましい月め!」
大学の授業で習ったジュール・ヴェルヌが19世紀後半に発表した
月世界旅行の月であれば、まだ可愛げがあったのかも
悪態をつきながら、久しぶりに怒りを振り撒き、湖畔の舗装された道を
とぼとぼと歩いていくと、背もたれがついたウッドベンチに腰かけている
彼と初めて出会った。
僕に向かってチョコレートの箱を差し出し
「僕のママの口癖は『人生は箱入りのチョコレート。
食べるまで中身は分からない』」と口にした。
トム・ハンクス・・・・いや、彼は【フォレスト・ガンプ】だ
小奇麗なスーツ姿、青と紺色のチェック柄のシャツ
ここはバス停ではないが、僕は彼が差し出したチョコレートの箱から
チョコをひとつ受け取り口に運んだ。
感想は口にしなかったが、甘くて大味な味だった、食えなくはない
だが箱につめられたチョコレートは8箇所ほど
空き出来ており、僕と同じくフォレストからチョコを受け取った
人がいるのだろう。
それか自分で食べたか、彼のとなりに座って話を聞いてみることにした
興味本位だったが、楽しいかもしれない・・・映画みたいに
彼は手紙を書いてくれたジェニーに会いに行くのだろうか
最後の聞き手である老婦人役は、僕だ。
「チョコレートありがとうございます 美味しかったです」
彼は無言だった。
無視されたわけじゃなく
湖畔を見つめていた
言葉を口にするわけでもなく
このゆったりと流れる刻の流れに
身を委ねて、その一部みたいだった
僕も真似してみた。
だが、水面に映るあの「月」の
にやけ面が気になった仕方がない、そうおもった矢先
遠くでヘッドライトが二つ瞬いているのが見えた。
「あの・・・・バスなら対岸にバス停があるみたいですよ
ここからだとよく見えないですが・・」
「ほんとうはわかっているんだ。もうずっとこうして
バスを見送っている」
「乗らないんですか。」
彼の言葉は弱々しい声が震えていた。
躊躇する気持ちがあるのだろう
僕はとりあえず、バス停の様子を見にいくことに決めた
ここで走っている路線バスが普通なわけがない
未知のテクノロジーで未知の世界へと走り去って行く
時空転移装置でもジェットエンジンでも反重力反転装置でも
空間転移システムを搭載してようが、なんだろうが
定刻通りに運行しているならば、どんなバスか確かめてみよう
不安と闘っているフォレストをどうにか助けてやりたい
完全なる善意での人助けがしたいと思い立ったのが、人生で初めてだ
対岸までおおよそ3kmは軽いランニングにはちょうどいい距離
バックパックの紐をぎゅっと締め
靴底がすり減り、クッションがほぼ役目を失った
履き古した1.980円の運動靴で僕は走り出す
湖畔に設営された手すりの上で、クルミを頬張るのに夢中な一匹のリスが
僕が急に走り出したことにより驚き、森に向かって飛び退いて行く
可哀そうなことをしたなと、少しの罪悪感を覚えたが、踏んづけなくて
良かったと僕は、安堵していた。
決して早くはない
本気で走ったのは久しぶりだ
肺が爆発しそうになり、脇腹がずきずきと痛みはじめる
遊歩道に等間隔に設置された街灯はゆっくりと景色に流れていく
僕の想像した速度をより遥かに鈍足に世界は動いている
数分間、吐き気と闘いながら必死にようやく到着したバス停は
簡易的な雨よけ用に屋根を支えるポールが立ち並び
その手前に時刻表がノイズ交じりではあるが、立体的映像で
表示されているが、時間というよりもサイクルで
数分おきに三本ずつこのバス停に停車するシステムになっている
ようであり、試しに表示枠のひとつをタップしてみると
見覚えのあるデザインのバスが表示される
車体には猫耳パーツが屋根に取り付けられており
黒い縞々模様の射線がピンクの車体に走っている。車体正面には
顔がデザインされており、虎のようなネコ科の
可愛らしいフェイスが塗装されている。
明らかに、幼稚園の送迎バス
カスカベあたりを走行してそうなデザインだ
目的地によって車体が異なるのか?
正直、ここのシステム全般は優しくない時がある
日本語のローカライズが間に合ってないのだ
宇宙共通語、ケルト文字、古代言語・・・・絵文字はまだなんとか
解読できるが、言語や発声ではなく”音”でコミュニケーションを
図る人々に向けた案内しかないときは別の機会を待つのが
鉄則ではある。
鉱石生物やエリディアンたちがその最たる例で
怒っているときと、喜んでいるときが翻訳機がないと
全く理解できないのだ、このバス停はあまり利用者がいないからか
設備管理の手も届いていないようで、システム共有はされているはずなのに
こうも放置気味に同期がなされていないとは、呆れるしかない。
獄潰しのノーマッド風情が文句を言える立場ではないが
早急に改善を願いながら、ぶつくさとスクロールしつつ
フォレストが乗れそうなバスを探していく。
「えっと・・・・悪魔のいけにえのフォード クラブワゴン・・・
囚人護送車にラブワゴン・・・グンガンのウォー・ワゴン?
リックショー・ドロイド人力車
スクールバスかぁ・・・学生じゃないからなぁ
ゼネラルモーターズ製ニュールックバス・・・・これか
無難なとこだな」
ディスプレイの画像をタップして数秒もするとバスが法定速度の
範囲内速度でバス停から見える丘の中腹あたりにまで
続いている幹線道路からこちらへ向かってくるのが見えた。
だが、バス停に待っている僕の前に停車することなく
そのまま速度を加速させ、車両はバス停を通り過ぎて行く
僕はそのとき気づかなかったが、映画「スピード」に登場した
速度が一度でも50 mph (80 km/h)を越えると安全装置が解除され
さらに速度がこれを下回ると爆発するという仕掛けがなされている
とんでもない車両だった。
危うく人殺しになるところだった
結局、最終的に僕が選んだのは”もふもふ猫の車両”
馴染みはあるうえに、目的地を告げれば連れて行ってくれる
「うぁぁぁあおおおあおううううんん!!!!」
轟く鳴き声
疾風のように森林を野原を駆け抜け、バス停に停車した
大きくふさふさした尻尾を持ち、バスのような中空の体を持ち
窓と座席が毛皮で覆われた、ニヤニヤと笑う大きな 12 本足の猫【ネコバス】
「乗せて行ってほしい人がいるんだけど!そこら辺の
臨機応変な対応とかって出来るかー?
対岸のベンチに座っている人なんだけど」
僕はカラダ全身を使って身振り手振りネコバスに大声で叫び
対岸のベンチを指差した。
彼がまだ座っている確証はあったからだ、根拠のない自信だが
僕の判断は正しかった。
ネコバスは僕を乗車させ、フォレスト・ガンプが座っている
ウッドベンチにまで跳躍する。
もふもふのシートベルトもない車内で、僕は座席から身体が浮き上がり
重力から解き放たれ、もふもふの天井に背中をめりこませ
着地の衝撃時に、顔面を床に打ち付けたが、もふもふの車内が
クッションとなり全くの無傷で済んだ。意外と車内は香ばしい臭いがした
いわゆるケモ臭だが不快感はなかった。
フォレスト・ガンプはもちろん躊躇はしていた
化け猫バスが大口開けて、乗客の乗車をまっているのだ
「人喰いするようや奴じゃないんで大丈夫ですよ
目的地を告げれば、必ずそこへ送り届けてくれるんです
人でも場所でも。」
「ジェニー・・・彼女に会いにいきたい」
ネコバスはその願いを聞き入れ、目的地のボードが回転を開始する
ジェニー・カランというネームが表示され
乗車口が横にスライドしていく。
フォレストはようやく理解したようだ
「おっきなネコだ・・・・ジェニーにも見せてあげよう」
「きっと喜びますよ」
人助けは気持ちがいい。
見返りというよりも、自分の気分がいいからやった
たまには悪くないな。
フォレスト・ガンプを乗せたネコバスが見えなくなるのを
確認してから僕はようやく歩き出した。
明日は”金曜日”
労働のない人間からすれば、特別感のない日だが
どうにか有意義に過ごしてみよう
帰るまでに、じっくりと案を練ることにしよう・・・・




