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無属性と判定された俺、実は世界の理から外れた【例外】でした。〜攻撃が当たらない上に魔法陣すら掴める俺が、聖騎士を圧倒する  作者: 真波 蓮


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第91話 交差する正義――再戦の双璧


 地下牢獄の中層。上層へと続く巨大な鉄扉が、重々しい音を立てて開け放たれた。


 だが、そこから先へ踏み出そうとしたアルトの足が、本能的な危機感によって縫い止められる。


 視界の先、広い通路の奥。そこに広がる空気は、明らかに異常だった。


 右半分の空間は、陽炎が立つほどの凶悪な熱量に歪んでいる。対して左半分の空間は、肌に触れる水分すらも瞬時に凍りつくような、冷たく重い圧力に支配されていた。


 先回りしていた二つの影。


 ディオルを捕縛した七騎士の双璧、炎獄ヴァルガと水牢セリスが、完璧な陣形で待ち構えていた。


「どういう風の吹き回しだ」


 熱を帯びた空気を切り裂くように、ヴァルガの低い声が響く。


 その視線は、一行の先頭に立つルクスへ真っ直ぐに向けられていた。


「堅物でつまらねえ男だと思っていたが、まさか、正義を捨てて反逆者の犬に成り下がるとはな。どこまで堕ちた、ルクス」


 かつての同胞からの、嘲笑と軽蔑が混じる言葉。


 だが、ルクスの表情には微塵の揺らぎもなかった。静かに右手を伸ばし、圧倒的な純度の光を収束させて輝く刃を形作る。


「私が信じていた正義は、同胞の命をすり潰す血塗られた欺瞞に過ぎなかった。私は堕ちたのではない。今、初めて私自身の光を見出したのだ」


「御託はいい。まとめて灰にしてやる」


 ヴァルガの全身から、文字通り爆炎が噴き上がった。


 放たれたのは、通路のすべてを飲み込むような圧倒的火力の波。


 同時に、セリスが指先を滑らせる。炎の熱を避ける死角を縫うように、逃げ場を塞ぐ無数の水の鎖が、這うような軌道で迫ってきた。


 火と水。相反する属性でありながら、互いの死角を完全に補い合う致死の連携。


「右壁際、三歩前進! そのまま姿勢を低くして左へ跳んで!」


 炎の轟音を掻き消すように、最後尾からミレアの鋭い声が響く。


 彼女の探知が、膨大な熱量と水流の軌道を完全に捉えていた。一歩でも間違えれば致命傷となる空間の中に、一本の糸のような絶対安全圏を導き出し、瞬時に前衛へ伝達する。


 その観測を信じ抜き、ルクスとアルトが死線を掻いくぐる。


「二度も同じ相手に、好き勝手やらせるかよ……!」


 炎の壁を抜け、アルトが前衛に躍り出た。


 拳には、赤紫色の雷が激しく跳ね回っている。


 かつての敗北。守れなかったという不条理な記憶が、彼の心に重い火をつけていた。


 敵の攻撃を紙一重で回避する。


 迫り来る炎の波と水の鎖を避けるごとに、彼のオリジナル魔法『スパークコンプレッション』の威力が、限界を超えて蓄積されていく。避ければ避けるほどに増す、雷の圧力。


 ルクスが光の刃でヴァルガの牽制を引き受け、アルトが一撃必殺の隙を窺う。


 息を呑むような死闘が繰り広げられる、その後方。


 レインは特別な構えを取ることもなく、ただ気怠げに瞳を細めていた。


 そもそも、彼の手には最初から武器など握られていない。


 彼が見ているのは、魔法の威力でも、兵力差でもない。


 敵の絶対的な連携が織りなす、空間と軌道の関係性そのものだった。

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