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無属性と判定された俺、実は世界の理から外れた【例外】でした。〜攻撃が当たらない上に魔法陣すら掴める俺が、聖騎士を圧倒する  作者: 真波 蓮


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第90話 純粋魔法の防衛線――例外の投擲


 地下牢獄の最下層。


 特務看守たちが手にする魔器が、カインの指鳴らしと共に一斉に沈黙した。


 内部の魔力を絶たれ、ただの重い鉄の塊と化したそれを前に、看守たちの足が一瞬止まる。


「今だ、抜け出そう」


 ルクスが先陣を切り、アルトがそれに続く。


 だが、国家の最重要機密を収容する牢獄の防衛機構は、それほど甘くはなかった。


 通路の奥から、空気を震わせるほどの重低音が響き渡る。


 魔力で構成された巨大な壁。いや、それは壁ではない。


 石畳を砕きながら姿を現したのは、天井に届くほどの巨躯を誇る巨大魔法ゴーレムだった。


 同時に、レインたちの足元の石盤に、無数の幾何学模様が浮かび上がる。純粋な魔力で編み込まれた即死級のトラップ魔法陣。


「対異能者用の防衛モードか」


 ルクスが苦々しく吐き捨てる。


 カインの力は異能と魔器を殺すが、純粋な魔法には干渉できない。


 魔器が通じない相手を確実に圧殺するための、極めて物理的かつ魔法的な防衛線。


 足元の魔法陣が臨界に達し、殺意を帯びた光が膨れ上がる。


 逃げ場はない。前方にはゴーレムの圧倒的な質量。


「クラウス!」


「言われなくても!」


 アルトの叫びに呼応し、クラウスが杖を地に突き立てる。


 展開したのは水属性の魔力による干渉術式。トラップの構造を瞬時に読み解き、その魔力回路に無理やり介入する。


「完全に止めるのは無理だ。だが、発動を三秒だけ遅らせる!」


 クラウスの額に滝のような汗が浮かぶ。


 その三秒。普通なら、足掻くことすらできない絶望の時間。


 だが、レインたちにとっては十分すぎる隙だった。


「上出来だ」


 レインが、殺意の光を放つ床の魔法陣に向かって右手を伸ばす。


 魔力を打ち消そうとはしない。ただ、床に描かれた術式の縁を、まるで円盤の端を持つように物理的に掴み上げた。


 本来、形を持たないはずの光の魔法陣が、床から根こそぎ剥がれ落ちる。


 看守たちだけでなく、味方であるカインでさえも、その光景に言葉を失った。


「邪魔なモンは、ぶつけ合わせるに限る」


 レインは掴み上げた魔法陣を、迫り来る巨大ゴーレムの顔面へ向かって無造作に投擲した。


 空気を切り裂いて飛翔した光の円盤が、ゴーレムの頭部に直撃する。


 ――遅延させられていた三秒が経過した。


 ゴーレムの顔面で、本来レインたちを焼き尽くすはずだった即死級の魔法陣が起爆する。


 鼓膜を破るような轟音。網膜を焼く閃光。


 巨大なゴーレムの頭部は跡形もなく吹き飛び、バランスを崩した巨体が地鳴りと共に崩れ落ちる。自らの放ったトラップによって、最強の防衛機構が粉砕されたのだ。


「信じられない。魔法陣を、物理的に引っこ抜いて投げただと」


 カインが呆然と呟く。常識も理屈も通用しない、世界の理から外れた例外の力。


 だが、感嘆に浸る暇はない。


 ゴーレムの崩壊で生じた土煙を裂き、数十名の特務看守たちが殺到してくる。


 魔器の能力を絶たれてなお、彼らは重い鉄の塊となった武器を振り被り、純粋な数の暴力と肉弾戦で一行を押し潰そうと動いたのだ。


「どけ。今の私を止めるには、お前たちでは力不足だ」


 ルクスが手に形成した光の刃を一閃させる。


 圧倒的な剣技から放たれた輝く軌跡が、看守たちの武器を軽々と両断し、先陣を崩す。


「俺たちも行くぞ!」


 アルトが雷光を纏った拳を突き出し、分厚い鎧ごと数人を壁まで吹き飛ばした。


 混戦の中、背後からレインの首を狙い、鋭い槍が突き出される。だが、レインは視線すら向けない。


 放たれた槍の軌道が空間の歪みに滑り込むようにズレ、隣で剣を振り下ろそうとしていた別の看守の腕に深々と突き刺さる。


 驚愕し、同士討ちに崩れ落ちる看守たちを尻目に、レインは気怠げに首を鳴らした。


「これで全部だろ。行くぞ」


 立ち塞がる障害のすべてを粉砕した反逆者たちは、中層へと通じる階段を一気に駆け上がっていった。

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