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無属性と判定された俺、実は世界の理から外れた【例外】でした。〜攻撃が当たらない上に魔法陣すら掴める俺が、聖騎士を圧倒する  作者: 真波 蓮


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第82話 超加速の正義


 魔器による重圧が消え去った中枢車両で、アルトは静かに腰を落とし、右拳を腰だめに構えていた。


 その拳の表面で、赤紫色の雷光が複雑に絡み合い、爆発的なエネルギーを内包して明滅している。


 スパークコンプレッション。


 かつては攻撃の衝撃を蓄積させる必要があったその技は、リュシアたちとの特訓を経て進化を遂げていた。今は立ち止まったまま、己の魔力を極限まで圧縮し、一点に留め続けることが可能となっている。だが、七騎士の強靭な肉体を打ち破るほどの最大火力に到達するには、僅かながら時間を要した。


「時間を稼ぐ。アルト、合わせろ」


 レインの指示を受け、ユークとイリスが即座に前線へと飛び出した。


 盾と装甲を失ったガドラムの拳が、岩山が崩れ落ちるような質量を伴って迫る。ユークが床から分厚い岩の防壁を次々と隆起させ、その軌道を僅かに逸らす。防壁は一撃で粉砕されるが、生じた僅かな隙間を縫うように、イリスが鋭い刺突を放ち、巨漢の視線を強制的に自分へと釘付けにした。


 後衛からは、ラグが絶え間なく圧縮された風の刃を送り込む。不可視の刃がガドラムの足元を削り、その前進を徹底的に阻害する。


 苛立ったガドラムが、床を踏み砕きながら広範囲の土の魔法を放とうとする。だが、その事象が形を成すよりも早く、レインが視線を向けた。虚空を滑らせるように手を払うと、ガドラムの魔法は不自然に軌道を曲げられ、誰もいない壁面へと虚しく吸い込まれていく。


 完璧な連携が、圧倒的な個の暴力を封じ込める。


 そして、アルトの拳を包む雷光が、視認できないほどの高密度な光の塊へと変貌した。


「準備完了だ!」


 アルトの叫びが車両に響く。


 その瞬間、レインは両手を前に突き出し、ガドラムの周囲の空間そのものを目に見えない巨大な布のように掴み取った。そして、弓の弦を引き絞るように、その空間を強引に手元へと引き寄せ、一気に放つ。


 見えざる張力の解放。空間そのものが弾け飛ぶような衝撃が直撃し、ガドラムの巨体が大きくたたらを踏んだ。いかなる剛腕でも耐えられない、理を無視した姿勢の崩壊。


「リュシア!」


「はい!」


 リュシアの紡いだ最上位の強化魔法が、眩い光となってアルトの全身を包み込む。


 同時に、クラウスが杖を振り下ろした。ひしゃげた車両の床に、一条の青白い光の道が敷かれる。加速の魔法陣を直線状に連結させた、特攻のための滑走路。


 アルトがその光の道へと力強く踏み込んだ。


 一歩ごとに魔法陣が弾け、彼の速度は爆発的に倍増していく。二歩目で空気を引き裂き、三歩目には雷光を纏った一本の矢と化した。


 超加速を伴った、全力の一撃。


 アルトの右拳は、レインによって装甲を剥がされ、無防備に晒されたガドラムの胸元へと寸分の狂いなく吸い込まれた。


 爆発的な衝撃が、装甲列車の中枢を貫き抜ける。


 ガドラムの強靭な肉体を極限まで圧縮された雷光が打ち据え、その背後へと紫電の柱となって突き抜けていく。


 不動と呼ばれた七騎士の巨体が初めて宙を舞い、車両の最後尾にある分厚い鋼鉄の壁へと深くめり込んだ。


 静寂が降りる。


 土煙と紫電の残滓が晴れた先には、壁に埋まったまま完全に意識を失い、力なく首を垂れるガドラムの姿があった。


 国家の最強の盾を打ち破り、反逆者たちはついに人工神の心臓たる巨大な結晶の前へと辿り着いた。

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