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無属性と判定された俺、実は世界の理から外れた【例外】でした。〜攻撃が当たらない上に魔法陣すら掴める俺が、聖騎士を圧倒する  作者: 真波 蓮


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第74話 正義の折れる音


 すべてを消滅させるはずの光の奔流が、レインを包み込んだまま完全に停止していた。


 彼には傷一つなく、背後にいる仲間たちへは熱すら届いていない。


「あり得ない。光そのものを、完全に防いでいるというのか」


 ルクスが驚愕に目を見開く。


 だが、それは防いでいるという生易しい現象ではなかった。


 レインが静かに右手を伸ばし、自らを包み込む極光へと直接その指先を触れる。


 空間にひびが入るような、鋭く硬質な音が地下施設に響き渡った。


 次の瞬間。ルクスが放った絶対的な破壊力を持つ光の刃が、物理的なガラスが砕けるかのように空間ごと粉々に砕け散ったのだ。


 行き場を失った莫大なエネルギーは、無害な光の粒子となって空気中へと霧散していく。


「光を、砕いた」


 理解を超越した現象を前に、ルクスの動きが完全に止まった。


 その硬直の隙を、レインは見逃さなかった。


 光の粒子をかき消しながら、無防備な姿のまま一歩踏み出し、ルクスの懐へと肉薄する。


 ハッとしたルクスが、咄嗟に手元の長剣を盾として構えた。


 魔器の核である結晶が埋め込まれ、王国の特殊な鍛造技術で打たれた、絶対に砕けないはずの白銀の剣身。


 だが、レインはためらうことなく、その切っ先を素手で真正面から掴み取った。


「消えろ」


 極限まで昂った感情が、レインの指先から剣身へと伝播する。


 理不尽への絶対的な拒絶。


 鼓膜を劈くような激しい破壊音と共に、ルクスの手の中で白銀の長剣が半ばからへし折れた。柄に埋め込まれていた透明な結晶もまた、内側から弾け飛ぶように粉砕される。


 魔器が破壊されたことによる魔力の逆流と、自らの誇りである剣を真正面からへし折られた精神的衝撃。


 その二つを同時に受けたルクスは、たまらずその場に片膝をついた。


 カラン、と。


 折れた剣の先端が、冷たい鉄の床に転がる。


 完全なる決着だった。


 膝をついたまま、ルクスは信じられないというように、自らの手にある折れた柄と、床に転がる剣先を交互に見つめた。


「なぜだ」


 ルクスの口から、絞り出すような声が漏れる。


「少数を切り捨て、多数を救う。それがこの国を維持するための、唯一にして絶対の正義のはずだ。それがなぜ、こんな……」


 国を背負う大義が、一個人の力に敗北した。その事実が、ルクスの信念を根底から揺さぶっていた。


 そんな騎士の姿を冷たい瞳で見下ろしたまま、レインが平坦な声で告げる。


「数なんて関係ない」


 国家の大義を真っ向から否定する、極めて個人的で強烈なエゴだった。


「お前の正義がどれだけ正しかろうと、知ったことか。俺の身内に手を出したなら、お前の正義ごと叩き潰す」


 静かだが、有無を言わさぬ重い響き。


 ルクスは、何も言い返すことができなかった。自らの正義を口にするには、今の自分はあまりにも無力だった。


「終わったか、レイン」


 背後から、クラウスの声が響く。


 レインが短く息を吐き出すと、彼を包んでいた泥のように重く冷たい気配がふっと霧散した。いつもの抑揚のない、平坦な瞳に戻っている。


「ああ。そっちは」


「データの抽出はすべて完了した。ここを出るぞ」


 ユークとアルトが警戒を解き、ミレアとリュシアがレインの元へと駆け寄る。


 彼らは、真実に打ちひしがれ、剣を失って膝をつくルクスにトドメを刺そうとはしなかった。これ以上の無用な血を流すことは、彼らの目的ではない。


 一行はルクスに背を向け、地上へと続く螺旋階段を目指して歩き出す。


 薄暗いカプセルの部屋には、濁った液体に浮かぶ結晶化させられた若者たちと、己の正義をへし折られた王国の騎士だけが、静かな絶望と共に取り残されていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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