第61話 託された背中――粉砕される理
閃光が収束し、地下空間に静寂が戻った。
壁には深く叩きつけられたガルグの巨体があった。白煙を上げ、ピクリとも動かない。その右腕から、半透明の結晶が不気味に覗いている。
周囲を囲んでいた防衛ゴーレムたちも、雷撃の余波によって魔力回路を焼き切られ、赤い眼光を次々と失って崩れ落ちていた。
アルトはその場に力なく座り込んだ。激痛を訴える右腕。限界を超えた魔力消費。だがその顔には、清々しい笑みが浮かんでいた。
(あとは頼んだぞ、レイン)
静かに目を閉じ、冷たい石の壁に背中を預けた。
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地下のさらに奥深く。
背後から響いた轟音に、走っていたユークが僅かに歩を緩めた。
「今の魔力……アルトか」
「ああ。あいつは勝った。急ぐぞ」
クラウスの言葉に、ユークとラグが頷く。
レインは振り返らない。走る速度を一切緩めず、ただ最短距離で闇の底を目指していた。
やがて一行の前に、巨大な扉が立ち塞がった。分厚い鋼鉄。周囲の壁には幾重にも重なる封印の魔法陣が刻まれ、青白い光を放っている。
「レイン、待て。その扉は魔法陣を解除しな――」
クラウスの制止。
レインは止まらない。駆け抜ける勢いを一切殺さず、右の拳を硬く握り込む。
狙うのは扉ではない。扉の手前の空間。
レインは空を殴りつけた。
大気が軋む。空間そのものに干渉し、強制的に生み出された衝撃波が扉へと直撃する。
重厚な鋼鉄の扉が、真ん中から拉げ、内側へと吹き飛んだ。封印の魔法陣ごと、物理的な力で粉砕する。
土煙が舞う中、レインは歩みを止めずに室内へ踏み込んだ。
無機質な光に照らされた処置室。部屋の中央には、魔力封印の台に拘束されたミレアの姿があった。意識を失っている。封印の処置はまだ終わっていない。
その傍らに、一人の男が立っていた。腰に装着された携帯型魔器から、無数の魔力の針が空中に展開されている。
「ノックの作法も知らないのか、欠陥品」
土煙を払いながら、男が不快そうに目を細めた。
レインは答えない。ただ、静かな瞳で男を射抜いていた。




