第48話 観測――上からの視線
大会が終わっても、ざわめきはしばらく消えなかった。
「見たか、最後のやつ」「いや、あれどうなってんだよ」
声が一段上がる。
「あの人、やばくなかったか」「水色の髪の」「七騎士だろ、あれ」「本物、初めて見たんだけど」
レインは壁にもたれながら、それを聞いていた。
「お前のとこ、優勝だろ」
「そうらしいな」
「軽いな……」
「一つ、いいか」
クラウスが隣に立っていた。
「最後のあれだ。魔法陣を投げたな」
「まあな」
「通常、魔法陣は固定構造だ。移動させる前提で作られていない。それを掴んで、投げた。成立している理由が分からない」
「俺も分かってない」
「……そうだろうな」
クラウスはそれ以上追わない。思考は続いているが言葉にはしない。
「でもさ」
壁際から声が落ちる。イリスだ。いつの間にかいた。
「別に変なことしてないよ。位置がズレてるだけでしょ」
短く言う。それだけ。
クラウスは何も返さない。レインも考えない。話はそこで途切れた。
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学園の上層。人の気配が薄い場所。
セリスは下を見ていた。人の流れ。その中の一点。
「……どうだった?」
「派手だったな」
すぐ後ろから返る。振り返るまでもない。
「風切りにしては、遅かったね」
「再現性は低い。安定してない」
「うん」
セリスは頷く。
「でも、成立してる」
静かな断定。
「……異能者、か」
「そうだね。でも、まだ浅い。使い方を分かってない」
「未完成だな」
「うん」
短い一致。風が抜ける。数秒、沈黙。
「触れてる」
セリスが小さく言う。
「関係ごと、ずらしてる」
言葉を選ぶように。でも完全ではない。
「どうする」
一拍。
「……続けろ」
どこからともなく。低い声。短く、それだけ。でも確かに、そこにいる。
風切りはただ小さく息を吐く。
「……承知した」
セリスは笑う。柔らかく。そして、もう一度下を見る。人の流れ。その中の一点。
「……次は、もう少し近くで見たいな」
小さく呟く。風に紛れて、消える。
確かに。見られている。
これにて大会編は終了です。
次話より、世界の理を揺るがす新章に突入します。
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