第47話 表彰――正しさの内側
ざわめきはまだ完全には消えていなかった。でも空気は確実に落ち着き始めている。
「――これより、一年の部の表彰を行う」
声が静かに広がる。自然と視線が前へと集まる。
壇上。灰色の髪の男が落ち着いた様子で立っていた。学園長、コルセア。穏やかな佇まい。威圧感はない。でも目を逸らしづらい。
その隣。水色の髪の女性。柔らかな表情。穏やかな目。なのに、少しだけ目に残る。
「一年の部、優勝――レイン・ヴェリスのチーム」
拍手が起こる。広がる。
レインたちは前に出る。現実として受け止めている。それ以上でも以下でもない。
「……あれ」「嘘だろ……」「なんで、ここに……」
ざわめきの質が少し変わる。
「……七騎士……水牢セリス……?」
言葉が落ちる。空気がわずかに揺れる。
(……すごいのが来てるらしいな)
それだけだった。周りの反応で分かる。普段なら見られないような相手。それくらいで十分だった。
コルセアが一歩前に出る。レインたちへ視線を向ける。
「よくやった。見事な試合だった」
穏やかな声。それだけ。余計な言葉はない。でも軽くはなかった。
「……ありがとうございます」
レインは短く返す。クラウスがわずかに視線を動かす。壇上のあの女性へ。そしてすぐに止まる。
(……何だ、あれ)
思考は回っている。でも結論には届かない。
セリスが一歩だけ前に出る。柔らかく微笑む。
「いい試合だったね」
「……どうも」
セリスは数秒そのまま見て、ほんのわずかに目を細めた。
「……うん」
意味は分からない。
そのとき、後ろで誰かがよろけた。別のチームの生徒が足をもつれさせて倒れかける。
次の瞬間。水が動いた。足元から。細く、静かに。絡みつく。支えるように。
一瞬。完全に固定される。
「……あ」
本人が声を漏らす。すぐに水は解けた。何事もなかったように。体勢は戻る。
「大丈夫?」
「は、はい……」
(支えた。そう見える。でも)
(……いや)
少しだけ引っかかる。それ以上は考えない。考えても分からない。
コルセアが軽く手を上げる。
「以上だ。各自解散して構わない」
場が動き出す。緊張がほどける。
レインはその場に少しだけ残る。
(……なんだ)
違和感だけが残る。理由は分からない。言葉にもできない。
でも確かに。何かが動き始めている。そんな気がした。




