第44話 分断――成立する一点
圧は、落ちない。一対三。削られているのはレインの方だった。
「バルト、ヴェイル。前に出ろ」
そう呼ばれた二人が同時に動く。「『アクアランス』」直線。「『エアスラッシュ』」横からの刃。逃げ場を削る噛み合った連携。
(……問題は、その先)
アルトが踏み込む。
(軌道ではない。終点。拳が届くはずの一点、その先をわずかに動かす)
振り抜かれた拳はレインの横を外れる。
雷が弾ける。軽い放出。衝撃が残り、空気が揺れてレインを押し戻す。
ヴェイルが距離を詰める。「『エアスラッシュ』」連続。速い。角度を変えながら逃げ場を潰す。
レインはそれを捌きながら前に出る。視線はアルト。その動きだけを見る。
(ある。放出の直後。蓄積が落ちた、一瞬。そこだけ、明確に"軽い")
アルトが踏み込む。まだ軽い。次に重くなる前の、その間。
(……今だ)
意識が触れる。軌道ではない。終点。拳が届く"先"。そこに固定する。
振り下ろされる拳。本来ならレインを捉えるはずの軌道。
だが。空間に、当たる。明確に。何もないはずの一点に、衝撃が収束する。
音が遅れて鳴る。雷が弾けるが、散らない。一点に押し留められたまま、解放される。圧が鋭く走る。
「っ……!」
レインの身体が弾かれ、地面に叩きつけられる。痛みが走る。浅くない。
それでも。
(できた。今のは違う。滑っていない。成立している)
起き上がる。ヴェイルが踏み込む。隙を突く動き。
(……いける)
ズラす。軌道を外す。そのまま終点に触れる。ほんのわずかに位置をずらす。
風刃が逸れる。その先、バルトへ。
「っ!?」
アクアランスを構えていたバルトの側面に直撃。体勢が崩れる。
レインが踏み込む。右手をかざす。何もない空間、その一点を掴むように指を閉じる。引き、押し返すように振り抜いた。
空気が歪む。バルトの身体が弾かれる。結界が反応。外へ。一人。
ヴェイルが後退する。遅い。レインが前に出る。
「『エアスラッシュ』」ヴェイルが刃を放つ。
ずらす。終点を捉える。風刃がヴェイルの足元へ。体勢が崩れる。
レインが踏み込む。空間を掴み、引き、叩きつける。衝撃が走る。ヴェイルが弾かれる。外へ。三人目。
残るは。アルトと、レイン。
静寂が落ちる。周囲の音が遠のく。
(触れてる。確実に。さっきまでとは違う)
アルトが一歩前に出る。雷が静かに纏われている。
「……なるほど」
短い言葉。理解。そして、次へ進む意思。
レインはゆっくりと息を吐く。痛みは残っている。制御も甘い。
だが。
(……まだやれる)
決着の時は近い。




