第43話 偏差――定まらない終点
残ったのはレイン一人。対するは三人。アルト、水、風。
(……削れてる。呼吸も、視線も、動きも。無駄が落ちている。でも、まだ足りない)
「行くぞ」
水が前に出る。「『アクアランス』」一直線の突きに、風の「『エアスラッシュ』」が横から重なる。レインは最小限の動きで軌道を外し、通す。無駄はない。でも、それ以上でもない。
(ここまでは、いい。問題は、その先)
アルトが踏み込む。雷はすでに纏われている。
レインは視線を絞る。軌道ではない。その先、当たる"終点"。
(ずらす。意識が触れるのは距離でも位置でもない。"関係"。拳が届くはずの一点、その先をわずかに動かす)
振り抜かれた拳がレインの横を外れる。
だが。
(違う。触れかけるが滑る。支点が定まらない)
そのまま雷が弾ける。軽い放出。それでも衝撃が残り、空気が揺れてレインの身体を押し戻す。
「軌道が、揺れたか」
アルトの目が細くなる。
(軌道は変えられる。でも、その先――当てる場所が、まだ作れていない)
もう一度試す。だが今度は何も起きない。軌道はそのまま通り、雷が振り下ろされる。直撃寸前で身体を引く。かすめる衝撃が重い。地面が削れる。
(……再現できない。条件が揃っていない。軽い瞬間、位置、関係。全部が一致しないと成立しない)
水と風が間を詰める。圧が途切れない。それを捌きながら、ただ一つを見る。アルト。
(……ある。さっきの感覚は消えていない。全部じゃない。どこでもじゃない。でも触れる場所が、ある)
アルトが再び踏み込む。雷が重くなり、蓄積が乗る。
レインは動かない。避けるためではなく、見るために。呼吸を整え、視界を絞る。当たる線ではなく、その終点へ。
(……次は)
距離が詰まる。逃げ場が消える。それでも動かない。
ただ、選ぶ。
拳が振り下ろされた。




